★七里川渓谷と追原ダム計画


 
追原ダムの本格着工休止に思う


追原を歩く会事務局長 北澤真理子



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●追原ダムの本格着工は当分中止!

 (1999年)8月4日、国庫補助を受けて進めている県の土木部、都市部の公共事業の有効性について見直す「県事業評価監視委員会」が開かれ、君津市で計画中の追原ダムについて、今後2年間、本格的な事業着手に入ることを当分中止するよう求める意見で一致しました。県土木部は、この意見を受け入れ、2年後に再び、ダム計画の全面中止を視野に入れながら必要性を再検討することにしました。
 追原ダム問題が表面化してきた一昨年冬、「追原を歩く会」を結成し、追原をたくさんの人に知ってもらう運動をしてきた私たちは、この発表を、一抹の不安を持ちながらも、大きな期待をもって受け止めています。



●七里川渓谷は自然豊かな“秘境”

 追原ダムは、房総半島のほぼ中央を東京湾にむかって流れる小櫃川の源流域、七里川渓谷を塞き止めて造られる計画になっています。七里川渓谷は広大な東京大学千葉演習林に守られ、雨が降っても濁らない清流で、あちこちに鉱泉が湧き出し、ヤマベやアユ、トウキョウサンショウウオ、モリアオガエル、イトトンボなどが多数生息しています。夏は緑のトンネル、秋は本州最後といわれる紅葉の美しさに、訪れる人も多い秘境です。この渓谷にはカワセミ、ヤマセミ、サシバなどの多くの野鳥が棲み、また、その複雑な地形から、冷温帯性のヒメコマツ、カツラ、フサザクラなどが残っているなど、貴重な植生が見られます。フサザクラは川添いに群落をつくり、春先に灯をともしたような赤い花を咲かせます。
 また、川の流れを変えて新田開発をした川まわしのあとや、飛鳥は上総にあったのではないかと思われるほどの歴史を感じさせる山の暮らしの跡もあり、廃村追原の屋敷あとには樹齢数百年の岩のような大楓が自然石の小さなお墓を守っています。



●七里川渓谷と追原を守るために活動

 私たちは、心のふるさとのような風景に惹かれ、幾度も追原を訪れました。そこにダムができると聞き、この素晴らしい自然を水底に沈めるのはあまりにも惜しいと「追原を歩く会」をつくり、本当にダムが必要なのか専門家の意見を聞きました。
 治水、利水の多目的ダムという名目だが、その両方ともが本当に必要とは思えない。また、ダム工事による七里川への影響は計りしれず、軟らかい川底はすぐに埋まって、ダムは巨大ゴミになるおそれがある。加えて、逼迫(ひっぱく)した県財政から260億円もの税金を投入することの無謀さ。そして、小櫃川への影響は、何千キロもの旅をしてやってくるシギやチドリの大切な命の鎖の一つ、下流の盤洲干潟へおよぶことなどを知りました。
 さまざまなことを学んだ私たちは、開発をのがれてやってきた鳥や小さな生きものたちの代弁者となってこの追原を守ろうと考えました。
 1998年3月29日に「追原宣言」を採択し、署名活動と自治体や団体へのはたらきかけをはじめました。観察会や歩く会を何度か催し、11月8日、「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」の設立に参加、運動を広げてきました。



●首都圏の貴重な自然を守り育み、次の世代に

 このたびの発表は、水需要の伸びが鈍っているため、本格的な事業着手を当分中止するというもので、ダム計画の見直しは、千葉県では初めてという快挙です。しかし、今回の追原ダムの見直しの主な要因を単に水需要の鈍化とすると、景気の回復により自然破壊は再び進んでいくことが懸念されます。
 自然を切り売りして金もうけをすることが当たり前のように行われてきて久しいこの千葉県で、ゴルフ場造成や産業廃棄物処分場増設などによる環境破壊によって県民のくらしが目に見えておびやかされるようになった今、残された首都圏の貴重な自然を守り育み、次の世代に引き継ぐことをしていただきたいと、県の担当の方に願うばかりです。

(1999年9月)








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