七里川渓谷と追原を詠む
追原を歩く会事務局長 北澤真理子
紅葉の七里川渓谷
新日本歌人協会・千葉歌会のみなさんが、1998年11月22日、23日の2日間、紅葉美しい七里川渓谷と追原を訪れました。
22日、茂原駅前に集合した一行11人は、菊まつりで渋滞の養老渓谷を抜け、追原への道をたどりました。
楢くぬぎ楓ようやく色づきて 上総丘陵に冬陽くまなし 上杉章子 渡る人のきまってしばし足止める 吊橋の上流も下流も紅葉 上杉章子七里川にかかる東大演習林の吊り橋を渡れば、追原はもうすぐです。暗い杉の林を抜けると、農具小屋と炭焼き窯の跡があります。
未だ若き杉の木林畑跡 農具残して追原去りし 佐藤里水 山砂利に炭の欠片の混ざりあう 道は炭焼き窯の跡へと続く 北澤真理子そして追原の石垣は、みんなの想像をかきたてました。
石垣を積みたる屋敷の跡のあり 逃れ住みしかこの「追原」に 渡辺千代子 落人の住処の跡か石垣の 崩るるままに厚き苔むす 葉山悠水石垣の奥の大楓は、ひっそりとしかししっかりと立っていました。七百年の時を過ごしてきた生命の風格は、人々を圧倒しました。
羊歯、南天、もみじ宿らせ岩ほどの 根瘤もちし巨き樹の立つ 長田裕子 追原に古き館を訪ぬれば 自然守れと大樹居座る 岩淵正義日はあっという間に暮れかけて、屋敷跡を見守るようにある小さい墓地もいよいよ暗くなりました。
文政の年号きざみし墓群に 日はささずして遠き祖のこえ 行木幹雄 何者に追われしならむ一族の 墓処(はかど)に深き追原の闇 関口 勲闇に包まれた追原は、もう人の世界ではなくなっていました。私たちは門限に遅れた子供のように、心を残しつつも急いで山道を下りました。
昼は暗き杉の林に白き靄(もや) 湧きだしてきて追原暮れる 北澤真理子 追原は人とけものの入り会い地 猪の掘りし土あと新た 上杉章子美術家の佐藤さんは、追原がすっかり気に入って、翌朝早くスケッチに訪れました。
猫じゃらしの髭の一本一本に 朝露をため光る川岸 佐藤 寛翌日も、ぬけるような青空が広がり、七里川渓谷は一年で一番きれいな姿を私たちに見せてくれました。
山帰来 猿捕り茨と知りてより まなこに痛し赤き実の色 上杉章子そして追原ダム計画に反対する運動をしている私たちに、こんなフェイントつきの応援の歌もできました。
年経れば世に粋狂な人ら出で この荒れ野原のこせと騒ぐ 近藤信之七里川そして追原の一帯が、ダムに沈むことを憂える人の輪が、また一段と広がった吟行会でした。もっともっと多くの人に追原を知らせたいと思いました。 新日本歌人協会・千葉歌会のみなさんが、1998n11月22日、23日の2日間、紅葉美しい七里川渓谷と追原を訪れました。 22日、茂原駅前に集合した一行11人は、菊まつりで渋滞の養老渓谷を抜け、追原への道をたどりました。
楢くぬぎ楓ようやく色づきて 上総丘陵に冬陽くまなし 上杉章子 渡る人のきまってしばし足止める 吊橋の上流も下流も紅葉 上杉章子七里川にかかる東大演習林の吊り橋を渡れば、追原はもうすぐです。暗い杉の林を抜けると、農具小屋と炭焼き窯の跡があります。
未だ若き杉の木林畑跡 農具残して追原去りし 佐藤里水 山砂利に炭の欠片の混ざりあう 道は炭焼き窯の跡へと続く 北澤真理子そして追原の石垣は、みんなの想像をかきたてました。
石垣を積みたる屋敷の跡のあり 逃れ住みしかこの「追原」に 渡辺千代子 落人の住処の跡か石垣の 崩るるままに厚き苔むす 葉山悠水石垣の奥の大楓は、ひっそりとしかししっかりと立っていました。七百年の時を過ごしてきた生命の風格は、人々を圧倒しました。
羊歯、南天、もみじ宿らせ岩ほどの 根瘤もちし巨き樹の立つ 長田裕子 追原に古き館を訪ぬれば 自然守れと大樹居座る 岩淵正義日はあっという間に暮れかけて、屋敷跡を見守るようにある小さい墓地もいよいよ暗くなりました。
文政の年号きざみし墓群に 日はささずして遠き祖のこえ 行木幹雄 何者に追われしならむ一族の 墓処(はかど)に深き追原の闇 関口 勲闇に包まれた追原は、もう人の世界ではなくなっていました。私たちは門限に遅れた子供のように、心を残しつつも急いで山道を下りました。
昼は暗き杉の林に白き靄(もや) 湧きだしてきて追原暮れる 北澤真理子 追原は人とけものの入り会い地 猪の掘りし土あと新た 上杉章子美術家の佐藤さんは、追原がすっかり気に入って、翌朝早くスケッチに訪れました。
猫じゃらしの髭の一本一本に 朝露をため光る川岸 佐藤 寛翌日も、ぬけるような青空が広がり、七里川渓谷は一年で一番きれいな姿を私たちに見せてくれました。
山帰来 猿捕り茨と知りてより まなこに痛し赤き実の色 上杉章子そして追原ダム計画に反対する運動をしている私たちに、こんなフェイントつきの応援の歌もできました。
年経れば世に粋狂な人ら出で この荒れ野原のこせと騒ぐ 近藤信之七里川そして追原の一帯が、ダムに沈むことを憂える人の輪が、また一段と広がった吟行会でした。もっともっと多くの人に追原を知らせたいと思いました。
(1998年12月)
★関連ページ
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