追原ダム建設反対運動を
七里川クリーン作戦からみる
う沢喜久雄
(追原を歩く会代表、千葉県勤労者山岳連盟自然保護委員長、
小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会幹事)
●参加者が増えたクリーンハイキング
1999年6月6日(環境月間の第1日曜日)、およそ160名が小櫃川上流の七里川渓谷を歩き、2時間をかけて450キロのゴミを集めて君津市に引き渡した。昨年の6月には、120名の参加者で820キロの収穫物があった。
このクリーン(清掃)ハイキングでひろい集めたゴミの量は減ったが、参加者は確実に増え、この運動の広がりが感じられるものだった。参加人数の増加もさることながら、この主旨に賛同し参加してくれた各種団体と個人の広がりは確かなものだった。
昨年春先、ふわくハイキングサークル内の「追原を歩く会」が千葉県勤労者山岳連盟(労山)に提起し、県連の行事として位置づけされ、小櫃川の水を守る会有志や千葉県自然保護連合からの参加で120名が歩いた。今年(第2回目)は、これに加えて市原市の里山を守る会や小櫃川河口の干潟を守る運動体からの参加も加わった。茂原市や佐倉市からの個人参加もあり、外房の和田浦で旅館「都亭」を経営する方からは激励文つきのカンパが送られてもきた。
この七里川追原クリーン作戦のたしかな広がりをみた要因は、この運動を推進する組織が立ち上げられたことと、機関決定したことが大きいと思う。一つは、昨年11月に木更津市で結成された「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」(佐野今朝雄代表)ができたこと。もう一つは、千葉県勤労者山岳連盟の第33期定期総会(本年2月)で「追原ダム建設反対」が特別決議され、県連全体でこの運動を進めることが確認されたことである。
さらに、運動を進める一つの刺激となったのが、労山全国連盟の自然保護委員長、江川節夫氏のクリーンハイクへの参加である。このことは、クリーンハイクの参加者を増やすことにもなったが、河原での昼食時を利用しての、同氏のあいさつの中での指導発言も、今後の運動を大きくするものだった。
君津市の対応にも2年目の実績が感じられた。ゴミ処理場の所長は、この運動を説明しなくても覚えていてくれた。そして、「昨年のゴミの多さが記録に残っています。今年もよろしくお願いします」と言っていた。
●地元民の反応が変わった
こうして2年目をむかえた七里川追原クリーン作戦をふりかえってみよう。まず、実際の渓谷の中のゴミは確実に減っていた。1年目のような流水の底に沈んでいる自動車部品や農機具類、ストーブなどの家具類はほとんどなかった。これは、昨年ひろい上げて片付けた後に“不法投棄”がなかったことを意味する。しかし、河原で遊んだ後のゴミ類は、逆に増えていた。これは七里川・追原を訪れるアウトドアマンの増加とこの人たちのモラルに問題があると思われる。
次に目についたのが、県道天津−黄和田畑線の沿道からの不法投棄だ。私たちは、道路両側の藪の中にあるビンやカン類を、山ビルに喰いつかれながら拾った。しかし、トラックで運び捨てられたと思われる建築廃材などは、昨年よりも増えている。この類のゴミは大型でもあり、私たちには手がつけられなくて、参加者一同が一様にくやしい思いをしたものだった。
さらに2年目の重みを感じたのが、地元民の反応だった。河原におりてゴミを拾う姿を眺めて「ありがたいことだよ」「市がやらないといけない仕事を、あんたらがやってくれて」という声がかえってきた。黄和田畑三又路に建つ物産小屋では、「ゴミはひろってくれるし、私たちの農産物は買ってくれるし、あんたらの動きはありがたいと思っているよ」「でも、ダム反対は歓迎できないな」ともつけ加えてくれたが、私たちのクリーン作戦は、地元民にも意識され始めている。
●追原ダムの本格着工は2年間休止に
こうして七里川・追原にくりひろげられた2年におよぶクリーン作戦は、各方面にそれなりの“重み”を与えつつある。そして、本年8月4日に開かれた第4回千葉県土木部・都市部所管国庫補助事業評価監視委員会は、次のような意見を提出した。
「(河川総合開発事業のうち追原ダムについては)小櫃川の治水対策および君津広域水道企業団の水源として位置づけられているが、水需要の伸びが鈍化していることから、現在実施中である県全体の水需給計画調査の結果を踏まえて、追原ダムの水源としての必要性が判断されるので、この間(2ヶ年程度)は、流量観測などの必要最小限の調査にとどめるべきである」このことを報道した8月5日付けの読売新聞の記事は、「追原ダムは県内最後のダム計画で、環境保護団体などから計画中止を求める声が強まっていた。ダム計画の見直しは県内初」とコメントしており、七里川・追原をめぐる私たちの運動の積み重ねをみせている。
私たちは9月8日に、追原宣言賛同署名約1300人分を持ち、要請書を県知事あてに提出した。この要請は、私たちの2年にわたる諸運動を集約した内容のものである。今後は、地元市である君津市や木更津警察署へ個々の要請行動を行うことが必要で、七里川・追原の自然を守り育む成果を一つひとつかちとっていきたいと思う。
(1999年9月)
★関連ページ
- 小櫃川(七里川渓谷)の追原ダム建設計画に反対(鈴木藤藏)
- 追原ダムの本格着工休止に思う(北澤真理子)
- 七里川のヒル(俵 正章)
- 七里川渓谷を水没から守りましょう(岩田好宏)
- 七里川渓谷の豊かな自然に感動(北澤真理子)
- 七里川渓谷と追原を詠む(北澤真理子)
- 自然環境保全と住民のくらし(う沢喜久雄)
- 追 原(北澤真理子)
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