小櫃川源流域の貴重な自然を次世代に

文・写真 御簾納照雄(小櫃川の水を守る会)


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 地球的規模で自然破壊が進行していますが、千葉県も例外ではなく、ここ30年ほど、山砂採取場・ゴルフ場・産業廃棄物最終処分場などが次々と建設されてきました。さらに、東京湾アクアラインの開通により、その経済効果が発現する一方で、先人達が守り育ててきた貴重な自然が失われようとしています。





七里川渓谷のつり橋。この付近の新緑・紅葉はすばらしい






●七里川渓谷にダム計画
 
 県内随一の豊かな自然環境や渓谷美を形成している小櫃川の源流域にダムの建設計画(仮称:追原ダム)があることが明らかとなりました。この付近の、黄和田畑から四方木地区にかけては、東京大学演習林なども広がり、貴重な動植物の宝庫となっています。氷河期の名残とされるヒメコマツ、モミ、ツガなどの自然林や原生林、また、フサザクラ、ケヤキ、クマシデなど、野鳥ではヤマセミ、オオルリ、ヤブサメ、センダイムシクイ、ハイタカ、オオタカ、水生動物ではウズムシ、カゲロウ、カワゲラ、トビゲラ、ヘビトンボ、ギバチ、カジカガエル、サワガニ、蝶類ではオオムラサキ、ミドリシジミなど、枚挙に暇がありません。
 また、ダム建設により、小櫃川の下流域、木更津市で汲み上げられ供給される木更津、君津、袖ケ浦、富津、市原、千葉市民の水道水としての水質の低下も心配されます。
 さらに、建設費が260億円と試算されていることから、水道料金の値上げなどの跳ね返りも懸念されるところです。
 県は、ダム建設の目的を水需要の増加と治水のためと説明していますが、周辺人口はむしろ減少傾向にあり、各市は将来人口予測の下方修正をしているところです。また昭和45年以来、めだった洪水・渇水は発生しておりません。そのようなことから、これは全国的に発生している無駄な公共工事との声があがっています。
 

七里川渓谷は河床が広く、ゆったりしている
 
                    


●条例制定後も安心できない産廃処理場計画
 
 私たち「小櫃川の水を守る会」の活動は、10年前、5市35万人の水道水の水源地に安定型産業廃棄物最終処分場の建設工事が始まったことによります。そして3年前には、住民運動によって、小櫃川流域3市(君津・木更津・袖ケ浦)で、県内で初めての水道水源保護条例が制定されました。
 しかし、条例制定以前の申請や、また、流域外の住民の地下水源近くへの計画などが4カ所もあり、まだまだ安心できない状況にあります。地域住民が結束し、自治会組織を基盤とした反対運動を展開し、市長・議会、県環境部、厚生省への要請までも実施しています。そのなかには、訴訟も念頭においた活動もいくつかみられます。私自身、自宅近くの民間の産業廃棄物中間処理(焼却)施設を相手に昨年まで約2年、6自治会の組織で仮処分裁判を経験しました。違反を重ねていた業者は、裁判という重みに耐え切れず倒産し、実質勝利しました。このことは、地域の人々にとって大変意義深い学習の場となったものと思います。自治会を越えた組織は貴重で、現在も学習会を継続しています。何か事があればすぐ立ち上がることができるようになっています。
 
 


●「小櫃川の水を守る会」の今後の活動
 
 現在の「水を守る会」の活動は、設立後数年間ほどの目まぐるしい活動とは変化してきています。少しばかりの市民運動の手法を体で会得したとでも表現できましょうか、そのように感じています。地域で起こっているさまざまな市民運動にも影響を与えています。
 中央レベルの厚生省との交渉なども必要ですが、同時に、地域に根ざした活動、自治会や市町村レベルの活動が、いま一番必要なのではないかと思います。特に、環境問題は地域の特性があり、地域住民が中心となって解決しなければならないことが多いのですが、それをいかに広く連帯するかが鍵となります。
 より広い連帯で次世代に水や大気についての負荷を残さないとりくみを続けたいと考えています。
(1998年10月)




追原を歩く会主催の七里川クリーン活動




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