豊かな自然と良質の温泉を堪能

〜「新緑の吾妻渓谷と川原湯温泉」エコツアー〜




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 千葉県自然保護連合、日本消費者連盟、自然と文化研究会などは2004年5月22、23日、バス1台で「新緑の吾妻渓谷と川原湯温泉」のエコツアーを実施しました。
 ご存じのように、ここは八ッ場(やんば)ダムの予定地です。1日目の22日は、“関東の耶馬渓”とよばれる吾妻渓谷を歩きました。断崖に刻まれたすばらしい渓谷美を眺めながら、そして、千葉県野鳥の会の田久保晴孝さんの案内で、野鳥のさえずりを聞きながら、新緑につつまれた遊歩道を歩きました。


●自然林につつまれた良質の温泉を堪能

 宿泊は、ケヤキ、ブナ、ミズナラなどの自然林につつまれた川原湯温泉の山木館です。宿の露天風呂や共同浴場「王湯」、「聖天様の露天風呂」などに入り、こんこんと湧き出る良質の温泉を堪能しました。
 夕食後は、近くの「敬業館みよしや」で開かれた「山西哲郎トーク」と「笠木透ミニコンサート」に参加しました。これは、「みんなで八ツ場を歌って歩こう会実行委員会」が主催したものです。笠木透さんは、おなじみの「私の子どもたちへ」や「あなたが夜明けをつげる子どもたち」「海に向かって」などとともに、“脱ダム”の唄「長良川」もうたってくれました。
 山木館では、深夜、餌付け場所にムササビがやって来ました。おかげで、夢中でエサを食べるムササビのかわいい姿をたっぷり見ることができました。


●すさまじいばかりの自然破壊とムダづかい

 2日目の23日は、八ッ場ダムの関連工事現場や関連施設の見学です。『週刊金曜日』などに現地の状況をレポートしている鈴木郁子さん(ルポライター)の案内で、国道・県道の付け替え工事や移転後の長野原第一小学校などを見ました。現地では、すさまじいばかりの自然破壊やムダづかいがおこなわれています。「インクライン」と称するダンプのエスカレーターが山につくられ、国道のトンネル工事が進んでいます。工費は莫大です。
 道路工事などで森がズタズタにされています。あちこちの沢がつぶされて砂防ダムがどんどんつくられています。その一方で、小枝が積まれて「小動物のビオトープ」なるものがつくられたりしています。ホタルの里をつぶし、人工水路へのホタルの移植も進められようとしています。
 移転後の長野原第一小学校は10億円をかけ、人里からかなり離れた、高い山の中につくられています。それも、崖崩れがおきそうな危ないところにつくられています。
 ダムの本体工事は未着工ですが、関連工事はどんどん進められています。そのムダづかいぶりは相当なものです。東京都や千葉県、埼玉県など1都5県がいくらでも負担金を支出してくれるので、金は湯水のように投入されています。


●年間10億円かけて川に石灰投入

 つぎは、草津中和工場と品木ダムです。中和工場では、毎日60トンもの石灰水が「湯川」という名の川に投入されています。その投入費用は年間10億円です。
 品木ダムはその石灰中和物を沈殿させるためにつくられたダムです。ダム湖の水は不気味な色をしています。
 この中和工場と品木ダムは、八ッ場ダムのためにつくられたものです。「湯川」は八ッ場ダムがつくられる予定の吾妻川につながっています。草津温泉から流れ出る「湯川」の水は酸性が非常に強いため、そのままでは八ッ場ダムのコンクリートが溶けてしまいます。そこで、石灰を投入し中和するというものです。
 八ッ場ダムをつくらなければ、こんな人為的中和はまったく必要ありません。自然の力で、吾妻川の下流部にたどりつく間に酸性でない水になってしまうからです。


●「札束をあちこちに貼ってあるという感じ」

 参加者からは、こんな声がだされました。
     「大量の石灰投入や品木ダムなどをみて、消費者はバカにされていると思った。私たち消費者は、こんな水を飲まされている。また、そこに莫大な税金がつかわれている。このことを思うと、怒りがわいてきた。しかし怒ってばかりでは仕方がない。政治や知事をかえなければならない。私は千葉県民なので、八ッ場ダムに賛成している堂本知事をひきずりおろしたい」

     「今回のツアーでは、すばらしい温泉を堪能することができた。同時に、八ッ場ダムの実態や問題点もよくわかった。国土交通省が、地権者や住民に強圧的な対応をしていることも知ることができた」

     「たとえば、長野原第一小学校裏手の崖崩れ防止に使われているアンカーにはピアノ線が使われている。そのピアノ線は大手製鉄会社の特注品だ。その値段はあってないようなもので、会社のいいなりの値になっている。おそらく3割以上は高くなっているはずだ。渓谷に架かる橋(滝見橋)も、地元の木を使わないで外国からの輸入材が使われている。このように、八ッ場ダムの関連工事では、金がふんだんに使われ、たいへん立派なものがどんどんつくられている。まさに札束をあちこちに貼ってあるという感じだ」(公共工事にくわしい人)

     「たとえば、長崎県の諫早干拓は、99%の人がムダだと思っているが、農林水産省のメンツだけで工事が進んでいる。八ッ場ダムもこれとまったく同じ感じがする。ダムの概要や現地の状況をよく知れば、圧倒的多数の人がこのダムは必要ないと思うはずだ。こんなムダな事業は止めさせたい」


●28種類の野鳥を確認

 最後に、草津温泉の「西の河原露天風呂」に入り、強酸性を体感しました。
 なお、2日間のツアーで見たり、鳴き声を聞くことのできた野鳥やケモノは次のとおりです。

 (1)数多く確認された野鳥
    キジ、キジバト、ツバメ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ヤマガラ、カワラヒワ、スズメ、ハシブトガラス
 (2)少ししか確認できなかった野鳥
    コジュケイ、アオゲラ、アカゲラ、コゲラ、イワツバメ、キセキレイ、ヤブサメ、オオルリ、サンショウクイ、エナガ、ヒガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、イカル、ムクドリ、カケス、ハシホソガラス
 (3)ケモノ
    カモシカ、ムササビ




断崖に刻まれた渓谷美を誇る吾妻渓谷。ダムがつくられると渓谷のかなりの部分が水没する。





白糸の滝。ダムがつくられるとここは水没する。





三ッ堂の石仏群。江戸期を中心につくられた約70体の石仏たちが今でも残されている。ここも水没する。





自然林に包まれた川原湯温泉。源頼朝が発見したといわれる素朴なこの温泉は、自然につつまれた静かな温泉として昔から親しまれている。しかし、八ッ場ダムができるとすべて水没する。





旅館「柏屋」の壁に表示された八ッ場ダム完成時の水没線。「柏屋」は川原湯温泉街の最も高い所にある。





山木館の露天風呂





ムササビ





笠木透さんのミニコンサート。笠木さんは、山登りや焼き物、川下りなど、自然とふれあいながらの活動のなかで、海、山、川の歌、鳥や野の花の歌を力強く唄いつづけている。





中央が笠木透さん。右側の女性は「ユキとミキ」。





莫大な金を投じ、山の急斜面につくられた「インクライン」。これは、ダンプを運ぶエスカレーターである。トンネルを掘って国道の付け替え工事が進められている。





人里からかなり離れた、高い山の中に移転した長野原第一小学校。小学校のすぐ裏手は崖と急傾斜の沢である。アンカーが設置されたり砂防ダムがつくられているが、大地震や豪雨が襲えば、アンカーもろとも柔らかい土砂が崩れ落ち、校舎を直撃しそうな光景である。





品木ダムの説明看板





品木ダムのダム湖(上州湯の湖)。汚れがひどく、不気味な色をしている。八ッ場ダムのダム湖もこのようになると予想されている。





品木ダムのすぐ下流の湯川。ひどく汚れており、異様な色をしている。八ッ場ダムができると、ダム下流の吾妻渓谷の水はこのようになるといわれている。





湯川への石灰水投入現場。草津温泉の一角で行われている。石灰の使用量は1日60トン、年間経費は10億円である。これを見て、みんな驚いていた。





草津温泉の湯畑にて。





草津温泉の「西の河原露天風呂」に入り、草津温泉の強酸性を体感。






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