■ちばぎん総研報告書の問題点(3)
千葉経済センターの波及効果予測も大ハズレ
〜幕張メッセとつくばエクスプレス〜
中山敏則
「ちばぎん総研報告書の問題点(2) バラ色の効果予測はすべて“大ボラ”」でこう書きました。
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《千葉銀行が設立した2つの調査研究機関(ちばぎん総研と千葉経済センター)がこれまで算定した経済波及効果は当たったことがありません。すべて大ハズレです。ですから、県庁内では、両調査研究機関が手がけた波及効果予測はバカにされているようです。》
超バラ色の予測
〜幕張メッセの経済波及効果〜
千葉経済センターは1986年、「幕張メッセの経済効果測定調査結果」を発表しました。それによると、幕張メッセの年間の平均稼働率(利用率)は85%、来場者数1400万人(2期計画では2300万人)、県内宿泊者190万人(2期440万人)、そしてメッセが県内にもたらす経済波及効果(生産誘発額)は3000億円(2期6500億円)としています。これは、当時、日本最大の展示場であった東京・晴海会場の実績(平均稼働率45%、来場者600万人以下)をはるかにしのぐ膨大な数字です。
私はこれをきびしく批判しました。たとえば、同年発行の『ちば・地域とくらし』第4号(1986年8月、千葉県自治体問題研究所)でこう書きました。
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《昨年(1985年)7月、稼働率65%、来場者600万人、経済波及効果1800億円という予測結果を県が発表し、各方面から『根拠のないバラ色の予測』という批判をあびたが、それをさらに上回る“超バラ色の予測”でもある。これにはさすがの県当局もノー・コメントであって、まったく気が狂っているとしかいいようがない。》
実際は惨たんたる状況
〜稼働率は40%以下、毎年20億円の税金をつぎ込む〜
結果は、まさにそのとおりとなりました。
幕張メッセは、バブル最盛期の1989年10月に開業しました。はじめの90、91年度は稼働率が60%を超えました。
しかし、その後は稼働率が低迷です。92年度は48.6%に、そして97年度は過去最低の47.1%に落ち込みました。それ以降は、稼働率の数字そのものが公表されなくなっています。
メッセは、稼働率75%以上で採算がとれる収支計算になっています。ですから、大赤字です。開業年(1989年)から1998年までの10年間で、県と千葉市から157億円もの税金がつぎこまれました。県はその後も毎年、20億円前後の税金をつぎこんでいます。たとえば、2001年度21億円、02年度20億円、03年度18億円という具合です。
来場者数も激減です。新聞はこう記しています。
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《メッセの2008年度の展示会数は179件でこの5年間で最多だったが、来場者数は448万人と最少。景気悪化によるイベントの規模縮小が響いた。開業以来最多は1999年度の780万人となっている。首都圏にはメッセができた89年以降、90年代にパシフィコ横浜や東京ビッグサイトといったライバル施設が次々と誕生。ビッグサイトは展示場面積でメッセを上回り、08年度の展示会数(331件)、来場者(1268万人)ともに水をあけられている。》(『千葉日報』2009年10月6日)
《1997年10月にオープンした北ホールもTMS(東京モーターショー)のために建設したといっていい。南側の展示場だけでは手狭だ、と自動車工業振興会(当時)が増設を要望したからだ。東京ビッグサイトがオープンを控えていた時期だった。看板イベントとなっていたTMSを手放したくない県は展示場増設に踏み切った。総額約220億円。148億円を起債した。しかし、今回は出展企業が半減したため、北ホールでの展示はない。借金を背負って造った施設の扉は閉じたままで、全長100メートルで約6億円がかかった近代的なデザインの橋を使っている人は、ほとんどいない。》(『朝日新聞』2009年10月25日)
《メッセ東側にある豊砂交差点。今夏、右左折車線に車止めが、路面に特殊塗装が施された。ドリフト族対策だ。ここで9月、道路交通法違反容疑で6人が逮捕された。4輪を滑らせて走るドリフトを競う走り屋たちは、同交差点を「聖地」と呼ぶ。ドリフト族の一人に聞くと、「道幅が広くて、夜に人や車の通行がない。格好のステージじゃないですか」 メッセ周辺が走り屋のステージになったのは今に始まったことではない。20年前もメッセ南側の道路に車の発進加速を競うゼロヨン族が集結していた。この道路が不自然に車線がなくなったり、直線道路なのにガードレールでカーブをつけたりしているのはゼロヨン行為を防ぐためだ。TMSの開催中も、夜のメッセ周辺は人通りも車の通行もほとんどない。メッセ東側には、駐車場と、開発されずに残った広大な空き地が広がっている。》(『朝日新聞』2009年10月25日)
期待はずれの波及効果
1995年11月4日付け『千葉日報』は、「期待はずれの波及効果」との見出しをつけてこう記しました。
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《幕張メッセで催しを開いても、消費支出の3分の2は主に東京へ流出しており、「千葉県の顔」として建設された主要施設のはずが地元経済への貢献度は低いという実態が浮き彫りになった。コンベンション関連産業でも実態は変わらない。県内企業の受注例は少なく、大部分は東京の業者が請け負っているものと推測される。》
メッセ需要をあてこんだ周辺ホテルも大苦戦
千葉経済センターは、メッセがもたらす県内宿泊者は440万人と予測しました。しかし、これはまったくのデタラメ予測でした。
こうした予測をあてにして、メッセ周辺にホテルがいくつも建てられました。しかし、メッセによる宿泊需要はたいしたことがなく、どのホテルも大苦戦をしいられています。
新聞もこんなふうに報じています。
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《(幕張新都心への)企業進出の不調は、メッセの稼働率低下と相まって、幕張地区全体の街づくりに暗い影を落としている。飲食店の営業不振はもちろん、地元資本のホテルの中には経営権を別の企業に譲渡したところもある。》(『読売新聞』1998年9月24日)
《(ホテルニューオータニ幕張は)幕張メッセを訪れる来賓向けの宿泊施設として計画されたホテルだが、バブル崩壊とともに『当初描いていた構想は変更を余儀なくされた』(根田修総支配人)》(『日本経済新聞』1999年3月13日)
《昨年9月のリーマン・ショック以降、幕張メッセ近隣に立ち並ぶ大型6ホテルの宿泊客数は軒並み低迷。消費不振に加え、集客効果の高いメッセのイベント「東京モーターショー」などでは今年、出展企業数が減少。宿泊キャンセルの急増に頭を抱えるホテルもある。各ホテルは独自の飲食、宿泊プランを打ち出すなど集客対策にあの手この手。》(『千葉日報』2009年10月10日)
TX沿線開発でも過大予測
つぎは、「つくばエクスプレス(TX)」に関する波及効果予測です。
千葉経済センターは2005年8月19日、こんな試算を発表しました。
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《千葉銀行系の研究機関「千葉経済センター」は19日、24日に開業するつくばエクスプレス(TX)沿線開発による経済波及効果について発表した。2020年度までの経済波及効果は計1兆4231億円、誘発される雇用者数は8万8531人、地方税の税収効果は1086億円としている。
直接的な経済効果として今後の区画整理事業で約3080億円、住宅建設で5205億円、学校などの公共投資に588億円など計9495億円と、波及効果として4377億円、消費にかかる効果が359億円を見込んでいる。この経済効果は現在、6か所で行われている沿線区画整理事業が予定通りに2016年度までに終了することが前提になっている。
同センターでは「TXは近年、県内で開業した路線より運賃を抑えており、住宅業者などの反響も大きい」としている。》(『読売新聞』2005年8月20日)
新聞報道はこうです。
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《県のまとめによると、県内TX沿線にある区画整理地区6か所(計約1081ヘクタール)のうち、整備済み面積は8.8%の94.9ヘクタール(3月末現在)で、埼玉、茨城両県より整備面積、整備率とも遅れている。
計約3834億円の事業費の原資となる保留地も、売却されたのはまだ5.3ヘクタールほど。南流山駅近くの西平井・鰭ヶ崎地区(08年度終了予定、52ヘクタール)や柏の葉キャンパス駅周辺の柏北部中央地区(10年度終了予定、273ヘクタール)、流山セントラルパーク駅周辺の運動公園周辺地区(同、232ヘクタール)は事業期間が延長される見込みだ。
区画整理のうち3か所を担当する県は今年度、前年度比53%増の約89億円の事業費を計上したが、それでも計2003億円の事業費(県分)の5%に満たない。県都市整備課は「県の財政難も事業の足かせになっている」と認める。》(『読売新聞』2006年8月24日)
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《つくばエクスプレスで──私は柏なもんですから、この状況を最初からずっと見てまして、施行面積がつくばエクスプレス沿線だけで1081ヘクタール。その中で県施行が約半分の573ヘクタール。こういう大規模なものを柏市と流山市の中でやってるわけですね。そして、人口が10万4900人張りつくと。県施行の中でも5万4200人張りつくんだというような形でやってますが、現実的には区画整理の施行期間が当初の──例えば柏北部中央地区などは平成12年から22年、それを12年から34年と、こういうふうな形で延ばさざるを得ない。12年間ですね。それから、流山の運動公園のほうも10年から22年に終わる予定が10年から34年。実際の事業費はその柏市と流山市内だけで3817億円と。総事業費がですよ。それで、県施行のところだけでも2300億円と。こういう大変途方もない区画整理事業が鉄道と一体型で行われてるわけですね。
現在、じゃ、どういうふうな状況になってるかというと、保留地が──先ほども流山の運動公園などは19万5000円を17万1000円ぐらいに下げなきゃいかんと、そして、柏北部中央地区は17万8100円だというような形で保留地処分を考えて、その保留地の処分金で事業費を出していこうということで、全部で、保留地処分金で2435億円。県の施行のところだけで1,242億円の土地を売って事業をやっていこうということなんですけども、つくばエクスプレスの沿線に係る物価の動向──これは国土交通省ですね──これがことしの1月1日の調査ですと、公示価格が流山などでは13万5000円から、あの辺が13万9000円とか、また、柏の葉キャンパスでも、区画が273ヘクタールも──広いもんですから、ちょっと離れたところになると10万2,000円ですよね、平米当たり。それを保留地で17万8100円とか、そういうふうな形で売れなければ、さっき丸山さんも指摘しておりましたけども、これは結局、県費を入れるか、あるいは減歩率を高めるか、何らかの形にやらざるを得なくなってくるわけですよ。そして、現在、土地使用可能面積というのはどうかと見ると、施行面積が全部で1081ヘクタールの中、158ヘクタールしか、まだ整備ができてない──土地使用面積で言うと100ヘクタール切ってる。96.9ヘクタールと。
こういうふうな中で果たしてね、この区画整理事業は当初から──特に柏北部、若柴のほうの人たちもみんな反対してたんですよ、こんな4割減歩なんてね──全員とは言いませんけどね。そもそも7、8割の同意というものをやってきたということですけど、逆なんです。7、8割が本当は反対してたんです、最初。それをこういうふうな形になってきちゃって……。》 (吉川洋議員。2008年10月27日開催の平成20年決算審査特別委員会にて)
《つくばエクスプレス沿線開発でも、今回、計画期間を12年も延長する見直しを行いましたが、人口フレームの達成時期さえ、見通しを持てなくなっています。これはだれが見ても、破綻の先送りであり、今後、県民への新たな負の遺産となって重くのしかかってくるのは明らかです。》(丸山慎一議員。2008年12月定例県議会にて)
《過大、ずさんな見積もりでスタートし行き詰まっているもう1つが、つくばエクスプレス沿線開発です。こちらも計画期間を延長しましたが、保留地処分も計画どおりに進む見通しはなく、大赤字は必至であり、県財政の大きな足かせにならざるを得ません。これもさきの議会で指摘したことですが、開発人口、保留地単価、移転費用等々、総事業費2000億円の計画の根幹にかかわる点について、県は何一つ根拠を示せず、地元地権者初め大きな期待があるというだけでした。こんな無責任があるでしょうか。知事、あなたの言うとおり、無駄な公共事業は思い切って見直すべきです。見直すつもりがないというなら、計画の妥当性を示す根拠を明確にお示しいただきたい。》(小松実議員。2009年6月定例県議会にて)
(2010年1月)
★関連ページ
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