最近の山砂採取事情

小櫃川の水を守る会 小関公平



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 木更津・君津地域に小櫃川と小糸川、富津地域には湊川が流れている。
 その上流部、特に中流域には小高い里山が幾重にも重なり、太古からの自然環境が保たれてきた。ところが、昭和40年頃からコンクリート用の砂を主としていたが、東京湾岸地帯の工場、住宅用地造成用の土砂として山砂の需要が高まり、この里山は年々、山砂業者の手によって採取の規模が拡大した。
 現在では、小櫃川系、小糸川系それぞれが350ヘクタールにもなり、運搬するダンプカーも20トン、30トンの超大型車が混じって行列して走って行く様はまさにダンプ街道である。


●山砂の搬出ルート

 山砂は何箇所もある採取現場からダンプカーで積出港である木更津港又は袖ケ浦港に運びそこから土砂運搬船に載せて首都圏の岸壁に向かうのである。
 しかし、地場産業ともいうべき山砂採掘は、後述するような公害を発生させている。山砂を荷おろした船は空船で帰ってくることはまずない。得体の知れない残土を載せて地元の港に帰り、仮置場に山積みされてから、ダンプによって逆ルートで山砂採取現場に持ち込まれているのが現状である。このような構図は以前から成り立っていたようである。


●今どんな問題が起きているのか

1.交通問題
 羽田空港拡張に伴って山砂運搬が加速され、君津4市を1日約4000台近くのダンプカーが縦横に走っている。規定された道路が渋滞と見ると住宅街の裏路に抜けるので、ドライバーとしては思わぬところでヒヤッとさせられることがある。
 ダンプカーの登録ナンバーを見ると、沖縄、九州、岡山、神戸、名古屋、水戸、福島、岩手、秋田、青森、函館、その他の県も見られ、日本全国から集まって来ていることが分かる。
 砂山にもどる車なのか、60キロ、70キロを超えるスピードは普通であり、車列の中にはさまったモミジマークの私は恐ろしい思いで運転することがある。

2.周辺地域の水枯れ
 小糸川温泉から鴨川街道に出た交差点そばに大きな水車が目立つ売店は、上総の銘水と看板をかけ、その下に水道蛇口3本を立て、立寄り者に水を採らせていたが、最近通って気づいた。看板も蛇口もそっくり取りはずされていた。
 これは、この地点から1キロ先の久留里方面に抜ける山道の右側に大きな砂取りの場があるので、その影響かなと直感した。また、この周辺は上総掘り井戸の自噴水があちこちで見られる地域であるが、年々自噴水量が減ってきていると云われている。

3.砂取り跡地の植樹はどうなったか
 去る9月13日、市民ネットのスタッフによる現地調査に同行する機会を得た。場所は鹿野山から北東1キロ離れた市宿地区にある砂採取場跡である。50センチほどの桧・杉苗が植えてあるものの、80%くらいは枯れていた。
 枯れた理由は何かと尋ねたら、植樹したと言う業者は水はけが悪かったと、どうも解せない返事であった。今月11月16日、再度現場を見に行ったところ、ほとんど枯れ野原状態になっていた。
 9月の調査では、小櫃地区の砂取り現場も見たが、ここでは10%程度の枯れで、90%は活着していた。そこでは、砂地の上に開発時に山の表層土を別置きにしておいて植樹時に一定の厚さで覆土し、樹の種類は広葉樹苗を植えていると云う。当日は県の職員も同行していた。跡地の植樹に関して県は多くのノウハウを公開し、山砂採取業者に1本たりとも枯れない対策を指導すべきであると思う。


《図書紹介》
 ・佐久間充著『山が消えた─残土・産廃戦争』岩波新書(本体700円+税)

(2007年11月)








次々と削り取られる南房総の山。
グランドキャニオンのようだ。(小関撮影)





砂採取場跡には植樹が義務づけられている。
しかし、桧・杉苗が植えてあるものの、
80%くらいは枯れていた。(小関撮影)





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