■千葉県自然保護連合が創立50周年

追 原(おっぱら)


追原を歩く会 北澤真理子



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 久しぶりに小櫃川源流の七里川渓谷に行ってきました。初夏、さまざまな生き物たちの命があふれ、守られた渓谷はあの頃と変わらず私たちを迎えてくれました。

 房総半島の中央を横切る小櫃川の源流域。広大な東大演習林を控えて、雨が降っても濁らない川は素晴らしい景観を見せ、多様な生き物の宝庫です。20年以上前、ここにダムを造り、渓谷と隠れ里“追原”を水底に沈めようという計画が持ち上がりました。

 私たちはここに棲(す)む言葉を持たない多くの生き物たちの代弁者になって、人々に知らせようと動き始めました。ダム計画をやめさせ、次の世代に古里の自然をそのまま手渡したい、と思ったのです。

 1998年3月29日、私たちの呼びかけに応じて、追原を守ろうと集まってくれたたくさんの人たち。鵜沢喜久雄さん渾身(こんしん)の名文「追原宣言」を採択、追原を知らせる運動は「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」に発展しました。

 追原を知らせる歌や詩を作り自然観察会や写真展を開きながらの多くの出会いは「ダムは無駄な公共事業」との確信につながり、県との交渉を重ねながら思いを伝えることもできました。そして公共事業見直し、脱ダムという流れの中、追原ダム計画は白紙撤回されたのです。
(2021年6月)


 追原と七里川を詠む            上杉章子

  ・ふさ桜七里川に沿うて芽吹きおりやがて紅色ともす山峡
  ・追原とう村訪ねゆく棲む人の絶えて久しい山深き村
  ・日溜まりにりんどうの葉も紅葉して追原にまた吊り橋渡る
                           (1998年)

  ・うぐいすとかじかの声に迎えられ初夏の気みなぎる渓谷歩む
  ・踏みあとの土新しきけもの道演習林より川へとつづく
  ・この谷の清き流れを守らんと集いし日々よひと昔過ぎ
  ・追原の石積み残る屋敷跡淡き花咲く桐の木ありき
  ・吊り橋は固く閉ざされ追原は生き物たちの領域となり
                             (2021年)

 同じ思いの仲間が増えて       小関公平

  ・川の面に立ちて羽搏く鴨一羽次々羽搏き四、五羽となりぬ
                              (1998年)









新緑の七里川渓谷。千葉県はここに追原ダムを建設する予定だった。さまざまな団体が参加する運動によって
ダム計画は中止になり、渓谷は守られた=2021年5月18日、中山敏則撮影



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