水と伝説の鬼泪山
北澤真理子
私は、千葉県富津市の出身です。開発という名目のもとに、故郷の山が削り取られて消えて行くのを、無念の思いで見て来ました。千葉の自然を守る活動をしている「小櫃川の水を守る会」の皆さんから、鬼泪山(きなだやま)の山砂採取の話を聞き、ぜひ現地に行ってみたいと思い、ふわくハイキングサークルの例会に参加しました。
鬼泪山は鹿野山神野寺の近くにあり、千葉らしいおだやかな山の形をしています。珍しいいろいろな山野草が生い茂り、イノシシの真新しい足跡などを見ながら登って行くと、こんもりと木の茂った山頂には、水の神様の石碑が祀られていました。
この沢山の生命が息づく山が貯えた水は湧水として流れ出し、用水となって下流の町を潤し、飲料水や農業用水として使われてきたのです。
人々にこんな鬼泪山のことを知ってもらおうと、一緒に参加した友達の章子さんが、「水と伝説の鬼泪山」というキャッチフレーズを考えました。
ここには、かつてこの地を守り、日本武尊の東征によって虐殺された、阿久留王の伝説があります。初めて訪れた阿久留王の墓は、鹿野山の中腹に神野寺によって大切に祀られています。そして、神野寺のご本尊は、名前を変えた阿久留王だというのです。
その日、地元で鬼泪山を守ろうとしている人たちと交流し、説明を聞きました。無くなれば大きな自然破壊となる鬼泪山の大切さも分かりました。地元の皆さんが元気に反対運動を展開している様子に、逆に励まされ、こういう短歌を作りました。
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*鬼泪山より湧き出る水はふるさとの町を潤し夏も冷たし
*大和朝廷より征服されし阿久留王伝説の中に今も生き継ぐ
(2009年5月)
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