千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会などが

「千葉の環境行政を検証する」市原集会 を開催

〜海底のダイオキシン汚染、残土・産廃、鉛汚染などを問う〜




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 「千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会」と「環境問題市原連絡会」は2001年7月8日、「千葉の環境行政を検証する!」と題した市原集会を同市の五井会館で開きました。参加者は50人でした。
 市原では、海底のダイオキシン汚染、臨海工場の地下水汚染、残土・産廃投棄、廃材置き場火災、野焼き、鉛汚染などがつぎつぎと問題化し、住民の命と健康をおびやかす環境破壊が深刻な状態になっています。
 この6月、県と市が合同調査をおこなった結果、海底土砂から1グラムあたり1万2000ピコグラムという高濃度のダイオキシン類が検出されました。これは全国最悪の汚染です。また、臨海部に立地する「旭硝子」千葉工場と、隣接する関連会社「旭ペンケミカル」千葉工場の地下水から、環境基準の13万倍に当たる1、2ジクロロエタンなど発がん性の疑いがある高濃度の揮発性有機化合物が検出されました。
 さらに、市原・千葉両市民の飲料用ダム(高滝ダム)の300メートル上流に、県環境部自然保護課が設置した県射撃場がありますが、この周辺に20年間も放置された鉛散弾が600〜700トンもたまり、そこから溶け出した高濃度の鉛汚染水が飲料用ダムに流れ込んでいることが、県職員の内部告発で明るみになりました。
 他方で、産廃・残土の不法投棄や野焼きもあいかわらず激しいものがあります。
 こうしたなかで、住民の命と健康がおびやかされている実態を出しあいながら、千葉の環境行政を検証しようと、この集会は開かれました。

 最初に、「千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会」の川本幸立事務局長が、「千葉の環境行政を検証する」というテーマで、千葉県の環境問題や環境行政の現状・問題点・課題などを報告しました。川本氏はまず、たいへん豊かだった千葉県の自然が開発によってつぎつぎと破壊されていったことを述べました。浦安から富津までの76キロにおよぶ美しい遠浅の海岸は埋め立てによって大部分が消滅させられたこと、そして、日本の原風景を形づくっていた里山や谷津田も、ゴルフ場、工業団地、住宅団地などの造成や産廃・残土投棄などによってかなりの部分が破壊されたこと、などです。大気汚染や地下水汚染なども各地で深刻になっていることを述べ、今後の環境保全策として、(1)産業振興策を外来誘致開発型から内発的発展型へ転換すること、(2)生物多様性の尊重を基本とした自然環境の保全、(3)多数決型から対話型へ転換し、民主主義を徹底すること──の3つが千葉県の環境行政の課題になっていることを語りました。
 そして、県射撃場周辺の鉛汚染で浮き彫りになったこととして、(1)県職員の内部告発によって汚染の事実がはじめて明らかになった。(2)県職員の意図的なデータ隠しや虚偽の報告がされていた。(3)調査によって汚染の事実が判明した後も、長期にわたって汚染の進行を放置していた。(4)堂本知事は「環境の視点ですべての政策を見直していく」とし、県射撃場を7月15日から一時使用中止することを表明したが、関係県民との対話は避けている。──の4点を述べました。そのうえで、危機管理体制や情報共有制度の確立、職員の責任と倫理の確立、県民との対話性の確保、膨大な撤去費用の負担など、行政の体質改善をはかることが課題となっていることを話しました。
 最後に、環境行政の今後の課題として、(1)県民との対話を積極的にすすめること。(2)過去の産業振興策を批判的に総括すること。(3)生物多様性の保全など科学的判断を優先させる、の3点を強調するとともに、“堂本知事を批判的に励ます”ことが必要、と述べました。

 つづいて、環境問題市原連絡会の片田勇代表が「市原市の環境問題」というテーマで報告。片田氏はまず、「市原市では過去の“負の遺産”がふきだしている。どうすればいいのかをみなさんといっしょに考え行動していきたい」と述べました。そして、「旭硝子」千葉工場などの地下水から高濃度の揮発性有機化合物が検出された問題では、「企業関係者はそれを知っていたが、長年にわたって放置していた」と批判。海底土砂から全国最悪のダイオキシンが検出された問題では、「状況から判断すると、周辺の工場群が発生源とみるのが妥当。原因解明を徹底的に追及し、原因者負担で除去対策を講じべき」などとのべました。
 そして、「高濃度のダイオキシン汚染や、ムチャクチャな産廃・残土投棄、飲み水の鉛汚染など、住民の生命を危険にさらす恐るべき事態が進行している」「市民や工場で働いている労働者がもっとこういう問題に関心をもち、怒りをもって動かなければいけない」「いっしょにがんばりましょう」などと訴えました。

 2人の報告のあとは、市原市内のさまざまな現地から環境汚染の実態や住民運動などのとりくみが報告されました。
 こうした報告をうけて、今後のとりくみについて活発に意見が交わされたあと、知事あての要望書を満場一致で採択しました。







集会の概要



  「千葉の環境行政を検証する」市原集会
   〜海底のダイオキシン汚染、残土・産廃、鉛汚染などを問う〜


●日 時:2001年7月8日(日)14時〜16時30分
●会 場:市原市五井会館
●プログラム:
  (1)報 告
    ・千葉の環境行政を検証する
           千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会 川本幸立
    ・市原市の環境問題
           環境問題市原連絡会           片田 勇
  (2)現地からの報告
    ・市原市古敷谷の産廃投棄問題
    ・市原市上高根平成町会の残土処分場設置反対運動
  (3)特別報告
    ・盤洲干潟を新たな開発から守る運動
           小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会    小関公平
    ・三番瀬埋め立て反対のとりくみ
           三番瀬を守る署名ネットワーク     牛野くみ子
    ・「廃棄物処分場問題全国交流集会 in 千葉」のとりくみ
           残土・産廃問題ネットワーク・ちば    井村弘子
  (4)討論

●主 催:千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会、環境問題市原連絡会
●後 援:千葉県自然保護連合、残土・産廃問題ネットワーク・ちば










集会には50人が参加。環境問題や環境行政について活発に意見がだされた。








産廃処分場での火災が相次いでおり、今年度の発生件数はすでに8件。周辺住民への被害が懸念されている。写真は、この4月、10日間にわたって燃え続けた市原市内の廃材火災。(写真提供・片田勇)








廃材火災現場で懸命の消火作業を行う市原消防隊員。(写真提供・片田勇)












集会で採択された県知事あての要望書




 堂本 暁子 千葉県知事あて


千葉の環境行政の抜本的改革を求める要望書

 市原市古敷谷の県射撃場周辺鉛汚染問題について、知事は撤去作業のため7月15日をもって同射撃場の使用を一時中止することを県議会で表明されました。高濃度の鉛が検出されたのが1999年11月ですが、県職員の勇気ある内部告発により県民に知らされたのが今年4月20日です。1年半近くにわたり隠蔽、放置してきた沼田前県政時代の「負の遺産」の一つにようやく他県並みの対応がなされはじめたことを私たちは評価いたします。
 さて、6月に入り、市原港の海底がダイオキシンにより全国最悪の汚染レベルにあることや、県職員がその守秘義務に違反し苦情を通報した住民の名前を産業廃棄物業者に知らせていたという驚くべき事実が判明しました。こうした汚染や腐敗の実態は氷山の一角と言われています。県の主要幹部には沼田前知事時代の側近が多数登用されているという旧態依然ともいうべき体質の中で、知事が宣言されておられる環境の視点ですべての政策を見直し、徹底した情報公開と対話による県民参加の県政を実現するためには、県執行部をはじめとする職員の体質や議会多数派との関係、情報の伝達・共有や県民との対話制度などについての抜本的な改革が不可欠です。
 私たち「千葉の環境行政を検証する!」市原集会参加者一同は、5期20年間の沼田前県政下の「負の遺産」を精算し、県民の生命や健康を第一義的に考える県政を実現するため、以下のことを知事あて要望いたします。
 ご多忙中とは存じますが、これらの内容をご検討下さり、8月2日までに文書にてご回答くださるようお願い申し上げます。


要望内容

  1. 県射撃場問題について以下のことを要望します。

       莫大な撤去費用の負担の問題(汚染者負担の原則の適用など)、撤去対象区域、回収した鉛の処理方法など、今後検討すべき多くの課題がある。こうした課題については、不透明な部分をなくし、県民との対話を基本にすすめることが求められる。そこで、今後の対策は県猟友会とだけでなく、地元住民、自治体、水道水利用者、専門家も含めた公開の場で話し合うこと。


  2. ダイオキシン対策などについて、以下のことを要望します。
    • 臨海部などに立地する工場の用地や周辺地域におけるダイオキシンや有機化合物等の調査を企業まかせにせず、県において大規模に実施し、その結果を県民に公開すること。
    • すでに汚染されていることが判明した場所については早急に汚染原因を解明するとともに、原因者の負担で除去などの対策を講じること。
    • 野焼き及び産業廃棄物や汚染残土による土壌や地下水の汚染が深刻化していることから、調査の実施とその結果の公表、汚染除去の抜本的対策を国の援助も引き出して行うこと。


  3. 県職員による情報の隠蔽、放置、守秘義務違反などを二度と繰り返さないため、以下のことを要望します。
    • 県射撃場鉛汚染問題について、当時の環境部、自然保護課関係者などの責任を明らかにし、厳正な処分を行うこと。
    • 産業廃棄物業者に住民名を通報した県職員およびその監督者について、県民との信頼関係を損ない人権を侵害した責任を明確にするとともに、厳正な処分を行うこと。
    • 職員の「倫理規定」などを整備すること。


  4. 県執行部と議会多数派との正常な関係を保つ観点から以下のことを要望します。

       沼田前県政下では県議会多数派の質問原稿のほとんどを県職員が作成していたといわれる。すなわち、県の執行部が質問原稿と回答原稿の両方をつくっていたことになる。同じことが6月県議会でも行われたという告発がインターネット掲示板でされている。このことは議会多数派と県執行部の癒着と腐敗の関係を示すだけでなく、職員倫理、議員倫理に反するものでもある。
       そこで、こうした事実関係について庁内から広く情報の提供を求めるなど厳正な調査を行い、必要な措置をとること。

以上
 2001年7月8日

「千葉の環境行政を検証する!」市原集会参加者一同

主催者 千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会
代表 植田和雄
環境問題市原連絡会 代表 片田 勇






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