地域の環境保護運動で高校教師たちが大奮闘


小櫃川の水を守る会 事務局長
佐々木悠二さんに聞く



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 千葉県の君津地域で環境保護運動を活発に繰り広げている団体がある。「小櫃川の水を守る会」だ。代表は関巌さん、事務局長は佐々木悠二さんである。佐々木さんに会の活動などを聞いた。

 次々と成果


 小櫃川(おびつがわ)は、君津地域の木更津・君津・袖ケ浦3市を流れている。3市に富津市、市原市、千葉市の一部を加えた35万人の貴重な水道水源となっている。
 「小櫃川の水を守る会」は、小櫃川を守る活動を25年も続けている。また、君津地域のダムや産業廃棄物、放射性廃棄物、干潟などの問題にもとりくんでいる。
 主な活動をあげるとこうだ。
  • 小櫃川流域の木更津・君津・袖ケ浦3市に水道水源保護条例を制定させた
  • 追原(おっぱら)ダム計画を中止させ、七里川渓谷を守った
  • 鬼泪山(きなだやま)国有林の山砂採取を中止させた
  • 産業廃棄物処分場設置をいくつも止めた
  • 放射性廃棄物埋め立てに反対する運動を展開中
  • 小櫃川河口・盤洲干潟の保全運動を進めている


 高校教師が運動の中心を担う


 「守る会」が結成されたのは1988年8月である。
     「発端は、小櫃川支流・御腹川(おはらがわ)の上流に旧竹田商事が産業廃棄物の最終処分場を計画したことである。1980年代中頃のことだ。きれいな沢をゴミで埋めつくす計画に、渡辺みつさんなど地元のおばあさん10人が“とんでもない”と声を上げた。御簾納照雄さんら県高等学校教職員組合(高教組)君津支部のメンバーがそれを聞きつけ、支援にのりだした。そしてこの年の8月、自分たちの飲料水を守ろうと『小櫃川の水を守る会』を結成した。会長は渡辺みつさん、事務局長は御簾納照雄さんである」
 渡辺みつさんは18年にわたり会長をつとめた。御簾納さんは2011年8月まで23年間、事務局長として大活躍した。
     「そうした運動の中心を担っているのは高校の教師や教師OBである。生物、化学、物理、地理といったそれぞれの専門を活かしながら、ダム、山砂、産業廃棄物、放射性物質、干潟などの問題にとりくんできた。小櫃川などの水質検査はおてのものである。追原ダムが予定されていた七里川渓谷の生態系調査や盤洲干潟の観察会も高校教師が中心になった」
 佐々木さんも、地理を専門とする元高校教師である。


 問題ごとに市民団体をつくって運動を進める


 君津地域ではあちこちで環境問題が噴出している。それをすべて「小櫃川の水を守る会」が対応しているわけでない。佐々木さんはこう教えてくれた。
     「問題がもちあがると、それに対応する市民団体をつくるようにしている。たとえば七里川渓谷に追原ダムをつくる計画が浮上したときは、『小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会』(通称・七里川を守る会)を結成した。また、鬼泪山国有林の山砂採取がもちあがったときは『鬼泪山の国有林を守る市民の会』をつくった。君津市や富津市の水源地に放射性廃棄物を埋め立てがはじまると、『放射性物質から生命を守る市民の会』を結成して運動した。そうした団体の中心を担っているのは『小櫃川の水を守る会』の会員である」
 すべての環境保護運動を「小櫃川の水を守る会」が請け負うのではなく、各地域にちらばっている会員がそれぞれの地元で運動の中心になる。そして、「小櫃川の水を守る会」と連携しながら運動を進めていくということだ。
 脱原発デモも、君津地域4市で場所を変えながら月1回おこなっている。すばらしいことである。環境保護運動に重要なヒントを与えていると思う。
(聞き手・中山敏則、2013年8月)










佐々木悠二さん










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