公共事業のあり方をめぐって討論

〜シンポジウム「千葉の公共事業」〜




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 (2007年)10月6日、千葉県自然保護連合は「千葉の公共事業」と題したシンポジウムを千葉県教育会館(千葉市)で開きました。
 千葉県職員労働組合土木協議会のメンバーが公共事業の現状や諸問題を報告し、この報告をもとに討論や意見交換をおこないました。同協議会は、県の公共事業にかかわっている県職員で構成されます。
 報告の一部を紹介します。


■交通安全対策・道路修繕費は激減

     「道路施策について県民が強く求めているのは、交通安全対策や道路修繕だ。しかし、これらの予算は激減している。交通安全対策費は、平成10年度は111億円だったのが今年度(平成19年度)は38億円、道路修繕費は87億円(平成10年度)から39億円(今年度)に減った。」

     「道路の寿命は約20年だ。県が管理している道路の延長は約3400kmだから、毎年170kmが壊れる計算になる。こうした既存の道路を良好に保つためには毎年100億円が必要だ。しかし、道路修繕(補修)の予算は38億円でしかない。そのため、道路が傷(いた)んでも、一部しか補修できない。傷みが原因で事故が起きている。このままだと、今後は事故がどんどん増えるだろう」


■国庫補助と借金に依存する公共事業予算

     「補修費を大幅に削減する一方で、新しい道路をどんどん建設している。なぜそうなるかというと、予算のしくみにある。道路を建設する場合、自主財源はわずか10%ですむ。たとえば100億円の道路をつくる場合、国庫補助(道路特定財源)が約5割(50億円)もつく。県が措置するのは残り5割(50億円)だが、そのうち8割(40億円)については、国が起債(借金)を認めてくれる。つまり、県は全体の1割(10億円)だけを措置すればいいことになる」

     「こういうしくみによって、新しい道路がどんどんつくられることになる。しかし、起債(借金)分は県が返還しなければならない。いわゆる公債費だ。この公債費が増え続けているため、県の借金総額は雪だるまのように増え続けている。県債残高(一般会計の借金総額)は、とうとう2兆円を超えた」〈注〉

      〈注〉 2006年度(平成18年度)末の県債残高は2兆4120億円で、前年度末に比べ461億円増です。これは県民1人あたり約40万円の借金に相当します。堂本知事就任前の2000年度末の県債残高は1兆8728億円ですから、堂本知事は5392億円も借金を増やしたことになります。



■不要普及の高規格道路整備を優先

     「県がいまいちばん力を入れているのは北千葉道路だ。この道路は成田空港と東京を結ぶ成田新高速鉄道に沿ってつくられるが、県民にとってはまったく必要のない道路である。不要なのになぜつくるかというと、成田新高速鉄道だけをつくると、採算がとれずに大赤字になる。そこで、鉄道と道路を一体でつくることによって鉄道の負担を軽減するため、計画された」

     「県は、北千葉道路や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東京外かく環状道路(外環道)、銚子連絡道路といった高規格道路を最優先に進めている。これらの道路は、不要不急であるだけでなく、自然環境や住環境に大きな影響をおよぼす」

     「県は相変わらず県都1時間構想を最重点課題に掲げている。これは、県内のどこからでも県都千葉市に1時間以内で行けるように幹線道路を整備しようというものだ。しかし、千葉市にどこからでも1時間以内でいくようにすることがなぜ必要なのか。そういう疑問をもっている人は県庁内にも多い」

     「いま優先的にやるべきことは、通学路に歩道を整備することだ。また、自転車専用道路(通行帯)を整備することが必要だ。歩道を自転車が平気で走っているが、こんなのは日本だけではないか。歩道を自転車が走ると危ないし、じっさいに事故も起きている。車道と歩道の間に自転車通行帯を設けるようにすべきだ」


■最初は事業費を低く抑える

     「こういった道路をつくる際、建設しやすいように、最初は事業費をかなり低く抑えられる。実際にかかる費用の半分以下だ。たとえば、東京湾アクアラインもそうだったが、途中で事業費をどんどんあがっていく。これは公共事業を推進する際の常套的なやり方でもある」

     「道路補修費の予算だが、現場事務所から本課に提出される予算要望は100億円ぐらいになる。じっさいにそれくらい必要だからだ。しかし、維持補修には国庫補助があまりつかない。また、起債(借金)も認められない。そこで、大幅にカットされる。前述のように、今年度予算はわずか39億円だ」

 以上です。
 このほか、河川、港湾、海岸、流域下水道についても、さまざまな問題や課題が報告されました。また、報告をめぐって活発に討論が交わされました。

(文責・『自然通信ちば』編集部)








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