〜日本の橋や道路も危ない〜
公共事業と環境を考える会
(2007年)8月2日(日本時間)、米国ミネアポリスでミシシッピ川にかかる高速道路の橋が崩落し、多くの死傷者がでました。
この事故はけっして他人事ではありません。というのは、橋の寿命は建設後50年から70年とされていますが、日本でも今後、50年を超える橋がどんどん増えてくるからです。ミネアポリスで崩落した橋は築40年でした。
■「明日は我が身」
新聞や週刊誌も、こんな指摘をしています。
◎『東京新聞』2007年8月4日社説
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注意したいのは、わが国の道路事情を考えると、橋の崩落事故を海の向こうの国の出来事と言って済まされないことだ。「荒廃する日本」もありえない未来とは言えない。
鋼材とコンクリートで造った橋の寿命は50年がメドとされる。資本整備の大きな部分を占める道路、橋の建設が目ざましく進んだ。高速道路と一般国道、地方道も含めた橋は約12万といわれる。(中略)
国土交通省によると2006年現在、建設後50年以上となる“高齢橋”は国道、地方道合わせて約8900、これが16年には約2万8400に急増する。いずれも何らかの手当てをしないと、どんな事故が起きるかわからない。現に三重県の国道23号木曽川大橋(1963年完成)では鋼材の破断が見つかるなど、危険の兆候は少なくない。(中略)公共事業のあり方に多くの議論はあるが、既設の橋の安全を確保するのは、人命にかかわる最優先課題であろう。効率性より安全性である。
◎『日刊ゲンダイ』2007年8月7日号
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同じような事故は日本でも起きるのではないか。全国の自治体の8割は、予算や人手不足を理由に橋の定期点検を実施していなかったというから「明日は我が身」。「日本ではあのような事故は起きない」(冬柴国交相)と言われても信用できない。「橋の点検はアメリカでは2年に1度と決められていますが、日本では国の管轄の橋でさえ5年に1度。自治体が管轄の場合は義務付けられておらず、造られてから一度も点検されていない橋も多いのです。しかも、日本に現在14万ある橋の多くは60年代、70年代の高度成長期に造られたもの。当時は『列島改造諭』に基づいて幹線道路の整備を急ピッチで進めるために、国が一時的に橋の設計基準を緩和していたのです」(国交省関係者)
橋の寿命は建設後50年から70年。50年を超すと亀裂、ひび割れ、腐食などの損傷が日立つようになる。国内で建設されて50年が経過する橋は、06年度は全体の6%だったが、10年以内に全体の20%にあたる2万8000基、20年以内には48%の6万6000基に達する。(中略)
政府は早急に全国の橋を総点検して、重大事故が起きる前に国民の不安を解消すべきだ。
◎『フライデー』2007年8月24・31日号
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今回の事故は日本にも、決して他人事ではない。八戸工業大学感性デザイン学部の長谷川明教授は、こう指摘する。
「日本は今、“インフラ施設高齢化時代”に入っている。築数十年も経った公共施設はいくらでもあります。そのため、今後は国土交通省などが中心となって行っている通常点検をより緻密(ちみつ)に、より正確に行うことが大切になってきます」
我が国には約15万本の橋が存在する。これらの多くは高度成長期に造られたもので、築50年以上の橋は2006年度こそ6%だが、2016には20%、2026年度には実に47%まで増える予定だ。今回、崩落した橋が築40年ということを考えると、とても安閑としてはいられない。
実際に老朽化などによる損傷も広がりつつある。首都高速道路では直接、事故にこそ結びついていないものの、築30〜40年の道路で1kmにつき数十カ所の損傷が見つかっているのが実情だ。
構造上の脆さが指摘されている「トラス構造」の橋も、日本全国に約1800本あり、そのうち、今回の崩落した橋と同様の「連続トラス構造」で築30年以上と老朽化が進み、なおかつ、比較的橋長のある橋は上の表の通りだ。点検について国土交通省に問うと、「国道の橋は5年に一度、定期点検しているので心配はない」と言うのだが、これは「国道○号線」など国の直轄道路に限った話だ。
驚くべきことに、地方自治体が管理している都道府県・市町村道になると絶望的だ。7県と1567市町村が、予算や職員不足を理由に橋梁の点検を「まったく実施していない」という、なんともお寒い状態だ。
「何らかの手当てをしないと、どんな事故が起きるかわからない」
「築50年以上の橋は2006年度こそ6%だが、2016には20%、2026年度には実に47%まで増える予定」
「全国の自治体の8割は、予算や人手不足を理由に橋の定期点検を実施していなかったというから『明日は我が身』」
──などと書いていますが、まったくそのとおりだと思います。
■「保険で対処するから、事故が起きてもいい」
〜千葉県の考え方〜
千葉県に目を転ずると、高速道路や幹線道路に莫大な金を投じる一方で、道路の維持補修費は激減です。そのため、県道は、あちこちで舗装のひび割れが目立つようになっています。舗装劣化に伴う段差、くぼみによる騒音・震動の苦情も激増です。歩道に雑草が繁茂してもほったらかし状態です。
こうした維持管理の不備で事故が起きるケースも増えており、訴訟で県が敗訴する例も目立ちます。しかし県は、維持補修に力を入れるのではなく、保険加入で対応です。つまり、「保険で対処するから、事故が起きてもいい」という考え方です。
これはいったい何でしょうか。県庁内部でも、「公共施設の維持管理をおろそかにして保険で対処するというのは邪道だ」という批判の声がだされているそうです。
まったくそのとおりです。知事や県幹部は、県民の命をいったいなんだと思っているのでしょうか。
(2007年8月)
★関連ページ
- 公共事業問題で意見交換会〜自然保護団体と県職員団体(県自然保護連合事務局、2007/9)
- 県道がガタガタになる(公共事業と環境を考える会、2005/10)
- ムダと利権疑惑の国道297号バイパス道路を見学(千葉県自然保護連合事務局、2001/12)
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