1メートル1億円の道路はいらない

〜外環道・第二湾岸道を考えるシンポジウム〜





 外環反対連絡会や千葉県自然保護連合などは(2002年)9月8日、市川市内で「1メートル1億円の道路は必要か〜外環道・第二湾岸道を考える」と題したシンポジウムを開きました。超党派の国会議員でつくる「公共事業チェック議員の会」の中村敦夫会長と佐藤謙一郎事務局長を迎えて開いたシンポには120人が参加しました。



 《シンポジウムの概要》



■現地視察 10:00〜12:00
  公共事業チェック議員の会による外環道路予定地視察

■シンポジウム 13:30〜16:30

 ◇会 場  市川市女性センター

 ◇挨 拶 
   中村敦夫氏 (公共事業チェック議員の会会長、参議院議員)
   佐藤謙一郎氏(同事務局長、衆議院議員)

 ◇基調講演 住民運動からみた道路事業の見直し
         標(しめぎ)博重氏(首都圏道路問題連絡会代表幹事)

 ◇経過報告 外環道路と第二湾岸道路計画
         高柳俊暢氏(外環反対連絡会 世話人代表)

 ◇参加者討論会

■主 催  外環反対連絡会、市川市松戸市外環連合、市川市外環用地不売同盟
      市川緑の市民フォーラム、千葉県自然保護連合



●「嘘つきだし、やり方がひどい」
  〜公共事業チェック議員の会による外環道路予定地視察〜

 午前中は、公共事業チェック議員の会による外環道路予定地視察です。市川・松戸両市の用地買収地や工事箇所をバスで見てまわりました。
 市川市内は予定地のあちこちが買収済みで、更地になっています。しかし、土地を売らないでがんばって住みつづけている人たちもたくさんいるので、買収地は虫食い状態です。
 案内者の高柳俊暢氏(外環反対連絡会)は、「たとえば国分川沿いはごらんのように大半が買収済みになっている。しかし、緑地になっているため、春になるといろいろな花が咲き、ひばりもさえずる。道路用地としてみれば納得できないが、自然回復事業としてみればいいかな、と思う」と語りました。
 また、「土地を売らないで強硬に反対している人たちがたくさんいる。さらに、貴重な遺跡が発見された『どうめき谷津』の部分は遺跡調査だけで12年ぐらいかかる。他の場所にも遺跡があるので、20年ぐらいは遺跡調査にかかってしまう。これだけみても、外環道はできないと思っている」とも述べました。

 市川市の平田新田地区では、外環道に反対している住民が大勢で出迎えてくれました。道路予定地となっている自宅の敷地に「外環道路建設絶対反対」「立ち退きを絶対拒否する」などと書いた大きな看板を設置している杉原さんたちが、外環道をめぐる経過や地域の実情、立ち退き拒否の思いなどを語ってくれました。
 松戸市の矢切地区でも、住民の方々がたくさん出迎えてくれました。「ここの地域は由緒ある屋敷もあって風情のあるところだったが、道路予定地にされ、工事がどんどん進められたために荒廃してしまった」「矢切の台地は、木がうっそうと生い茂った見事な斜面林がつながっていた。私たちが愛していたその斜面林もメチャクチャに伐採されてしまった。事業者は、立派な木を移植すると約束していたが、それを反古(ほご)にし、伐採してしまった。嘘つきだし、やり方がひどい」などと怒りをぶちまけました。

 現場を見た後、中村敦夫議員は「この道路はできる見込みがない。したがって、跡地(買収地)をどうするかを考え、対案を積極的にだしたほうがよい」を感想を述べました。また、佐藤謙一郎議員は、「更地化された買収地を見て、“緑のコリドール計画”を打ち出したらよいのではないかと思った。ヨーロッパ諸国ではこうした施策がかなり進められている。“一部の変わり者が反対している”というような見方をされないように、虫食い状に用地買収が進められ、荒廃しつつある街をどのように住みやすいものにしていくかという対案を積極的に提起してもらいたい」と述べました。


●「運動を幅広く発展させてほしい」
  〜中村敦夫参議院議員〜

 午後はシンポジウムです。  はじめに公共事業チェック議員の会の中村敦夫会長(参議院議員)があいさつし、つぎのように述べました。
     「公共事業チェック議員の会は、シンボリックな現地へでかけ、問題点などを把握したり、マスコミにアピールしたりしている。全国のあちこちの現場によばれ、たいへん忙しくなっている」
     「公共事業は本来、地域産業の振興に必要なインフラ(基盤)を整備するもので、政府や自治体がやらなければならない必要なものだ。しかし、日本経済が一定のところまで発展したら、インフラ整備は十分になってしまった。それなのに、インフラだけはどんどんつくりつづけている。本当は、現実にあわせて公共事業も見直しが必要だ。しかし、予算化によって利権がうまれるしくみになっている。ゼネコンの利益確保や、役人の天下り、政治家へのリベートなどだが、これが固定化されてしまっている。こうした利権を維持するために、相変わらずインフラ整備がどんどん進められている」
     「いまや、公共事業はゼネコンなど土建業者の従業員を食わせるためにだけ進められている。それなしに地方の産業はなりたたないような状況になっているからだ。公共事業にかかわる土建業の従業者は600万人といわれている。だから私は、“これは公共事業ではなくて福祉だ”と言っている。それなら、工事はせずに金をくれてやればいいではないかと思っている。そうすれば、環境破壊などは起きない。また、建造物の維持費に多額の金を費やしつづけることもない」
     「きょう外環道の現地をみて、あきれかえった。人が住んでいるのに、役人が一方的に道路計画線を引き、どんどん買収をすすめている。私はこの外環道はできないと思っている。運動を幅広く発展させ、全国的な連携を進めてもらいたい」


●「道路をいくらつくっても渋滞は解消しない」
   〜標 博重氏による講演〜

 次は、首都圏道路問題連絡会の標(しめぎ)博重代表幹事による基調講演「住民運動からみた道路事業の見直し」です。標氏は、次のようなことを話してくれました。
     「東京大気汚染公害裁判の判決が10月29日にでる。この裁判は、東京都内の幹線道路周辺に住み、道路の大気汚染で健康被害に苦しむ住民が道路管理者である国、東京都、首都高速公団、そして排ガス対策を怠ってきた自動車メーカーの責任を訴えたもので、東京都内の国道、都道、高速道路のすべてを対象としている。今日のクルマ優先、道路建設一辺倒の交通政策そのものを問うているが、この判決は外環道の建設にも大きな影響を与える」
     「道路公団の民営化問題が論議されているが、高速道路の効用はどんどん下がっている。したがって、カネは、道路建設ではなく、ほかの地域振興策に使うべきだ」
     「いま、総合交通・輸送政策の見直しが必要となっている。現在の輸送割合は、旅客の場合は自動車68%、鉄道32%、貨物の場合は自動車91%、鉄道1%、海運8%となっている。この割合を維持するために道路整備計画がたてられている。こうした輸送分担を見直すことが必要となっている。また、高齢化・少子化社会の到来や労働人口の減少などを踏まえたり、クルマ社会からの転換なども求められている」
     「首都圏では道路をいくらつくっても渋滞は解消しない。たとえば埼玉県内の外環道はできているが、これができても都内に出入りするクルマの交通量は減少していない。むしろ、高速道路の新設は誘発交通で交通量を飛躍的に増やす傾向がある。ようするに、渋滞解消のために高速道路を建設するという考え方は陳腐化しているということだ」
     「道路やダムなどの公共事業をやめさせたところが以前よりはかなり増えている。外環道も中止に追い込むことができると思う。しかし、運動が弱くなると負ける。中止させることができるということに確信をもち運動を強めてもらいたい」


●「まちづくりが大きな課題になっている」
  〜高柳俊暢氏の報告〜

 つぎは外環反対連絡会の高柳俊暢代表による「外環道路と第二湾岸道路計画」です。高柳氏は次のような点を強調しました。
     「外環道は、市川市内にジャンクションが3カ所もつくられる。わずか10キロの区間で3つも造られるのはめずらしい。また、高速道路が住宅密集地を突き抜け、市川の街がつくりかえられる。さらに、用地を8割も取得しているのに未買収の住宅が1000戸も残っていたり、予定地内に教育施設が非常に多い。こんな道路計画はほかにみられない」
     「外環道(千葉県内区間)は、たとえ建設されても、100円の収入を得るのに375円のコストがかかる大赤字路線になると新聞で報道されている。それでも事業者はどんどん用地買収や工事を進めている。事業者はまた、今の財政状態でこんな道路ができるわけがないのに、財政のことがまったくわかっていない。こんなバカを相手にしても仕方がないというのが率直な気持だ」
     「外環道は、東京湾岸の埋め立て地と内陸部をむすぶ幹線道路として計画された。そんな道路がまだできていないことが、湾岸地域の開発を抑制する役割を果たしている。また、外環道が建設されれば内陸部と湾岸地域の交通量が飛躍的に増えるから第二湾岸道が必要とされている。このように、外環道と第二湾岸道は密接にからんでいる」
     「私は外環道はできないと思っている。一つは、道路公団や国・自治体の借金が莫大になっているからだ。また、遺跡調査にかなり年数がかかったり、予定地の一部がダイオキシンに汚染されておりその対策がたいへんであることなどもある。さらに、住民の強い反対もあるので、建設はかなりむずかしいとみている。そういう状況のもとで、私たちにとっては、反対運動をいっそう強めると同時に、市川や松戸のまちづくりをどう提起していくかが大きな課題になっている」


●「明るい希望をもって今後もがんばりたい」

 公共事業チェック議員の会のあいさつや、標氏と高柳氏の講演・報告を受けて、質疑討論がおこなわれました。討論はたいへん活発で、地元住民のほか、東京都や神奈川県で高速道路反対運動を進めたり、三番瀬の保全運動にとりくんでいるメンバーなどからさまざまな意見がだされました。
 公共事業チェック議員の会の佐藤謙一郎事務局長は討論の中で、次のように語りました。
     「私たちは現場をみたら、その事業をなんとか中止させたり見直しさせようと国会でがんばることにしている。しかし、困難も多い。国の役人は自分たちの都合のいいデータしか出さない。また、公共事業計画は国会審議の対象にならないものが多い。そこで、私たちは一部の議員で公共事業基本法案を国会に提出した。それは公共事業を議会の審議対象にするというものだ。みなさんの運動の経験や教訓は全国の似たような運動に必ず役立つと思っている」
 また、外環道予定地の不売運動や立ち退き拒否を続けている「市川市外環用地不売同盟」の横山吉雄さんは、次のように述べました。
     「千葉県がこれまでやってきたことはたえまないコンクリート化である。自然を大規模に破壊し、財政も破綻状態にしている。それなのに、東京湾口道路や第二湾岸道など、無謀な事業を相変わらず進めようとしている。このままでは“国やぶれて道路あり”になってしまう。しかし、幸いにして、財政状態が非常に悪くなっていることもあり、公共事業の見直しの気運が高まっている。これはたいへんけっこうなことだ。外環道の買収地は、住民にたいへんな迷惑をかけたということで地元に有効活用させていただきたいと思っている。明るい希望をもって今後もがんばりたい」
 最後に、外環道は中止させることができるということに確信をもち、運動の輪を大きくしていくことを全員で確認しあいました。








外環道の現地を視察した公共事業チェック議員の会の中村敦夫会長(右)と佐藤謙一郎事務局長(左)。





市川市外環用地不売同盟の方々は、道路予定地となっている自宅の敷地に「外環道路建設絶対反対」の大きな看板を設置している。看板には、「緑多い旧くからの住宅地を壊してまで自動車道を造る発想はもう古い、おかしい!! ゼネコンと癒着の餌食にされるのはごめんだ! 私たちは信念をもって現計画に反対し、立ち退きを絶対拒否する。住民が拒否する限り、この道は50年経っても100年経っても作れない。外環道路は路線を変更し、外環抜きの、明るい暮らしよい都市計画を早期に樹立するよう要求しよう」と書いてある。





松戸市の矢切地区で、立ち退きを拒否している住民から熱心に話を聞く中村敦夫参院議員と佐藤謙一郎衆院議員ら。





現地は虫食い状態で用地買収が進んでいる。





シンポジウムであいさつした公共事業チェック議員の会の中村敦夫会長。





公共事業チェック議員の会の佐藤謙一郎事務局長。





基調講演をしてくれた首都圏道路問題連絡会の標(しめぎ)博重代表幹事





外環反対連絡会世話人代表の高柳俊暢氏





会場は120人の参加で熱気むんむんだった。







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