巨大開発から

 オオタカ・里山・谷津田を守るために

千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会 代表 植田和雄









1.はじめに

 この里山・谷津田は、市原市の最北東部が千葉市と隣接しているあたりで、下総台地と上総丘陵が出会ってできている里山丘陵のことです。ここを中心に、約1万ヘクタールにわたり新都市を整備しようという大規模開発計画があります。計画の名称は、「千葉・市原丘陵新都市整備」です。
 地図のうえでおおよその位置を示せば、内房線八幡宿駅から東へ直線距離で10キロ弱、外房線からだと誉田駅から南へ直線距離3キロ強というところです。
 開発はいくつかの区域に分けられて行われることになっています。そのうち、市原市側にある「市津緑の街」と呼ばれている開発は、いつでも工事に着手できる状況になっているので、私たちは今、緊急事態としてとりくんでいます。


2.自然豊かな里山・谷津田を破壊する大規模開発
     〜「市津緑の街」開発計画 〜

 「市津緑の街」開発計画は、私たちが気づかぬうちに環境影響評価準備書の縦覧が終わり、昨年3月31日付けをもって県が許可しました。これを知って驚いた鳥類の生態に詳しい市民から、開発対象地での繁殖の可能性を思わせる雌雄つがいのオオタカの飛翔の記録写真と文字による観察記録が市原市当局へ提出されました。この市民は、そこで長年にわたってオオタカを見ていたのです。これを、千葉日報も写真入りで大きく報道しました。ところが、環境影響評価準備書には何の記載もなかったのです。
 この事実に、県がやむなくオオタカの追加調査を行ったところ、オオタカの営巣木を確認し、ヒナ2羽の巣立ちの事実を認めました。
 1999年3月、私たちはオオタカの繁殖行動のなかの交尾を目撃しました。しかし、この年のオオタカの繁殖については、確かな情報を得ていません。私たちは、この丘陵で、何度もオオタカの飛翔を目視しています。
 「市津緑の街」と呼ばれるところは、南北方向へ約2キロ、東西方向へ最大幅約800メートルの長手に伸びた丘陵です。標高は、約50メートルから80メートルくらいの、なだらかな稜線が連なっています。総面積173ヘクタール、クヌギ、コナラ、スギ、アカマツタケなどの広葉落葉雑木からなりたっています。稜線から西へ、村田川支流に向かって数条の谷津が走っています。
 開発が進めば、この地は、最大盛土25.6メートル、最大切土27.3メートル、移動土量1456万6000立方メートルという壊滅的地形改変を受けます。丘陵の周辺に約10%くらいの残地林を残すのみで、全面積ほぼ173ヘクタールの里山は、この地上から永遠に姿を消し去るわけです。そして、いまや供給過剰状態にある住宅地や企業用地に変えられるというわけです。
 ここの開発は有名な大手ゼネコンが施工するのですが、国、県、市原市から総額550億円もの公費投入が見込まれています(続いてとりあげられる「市東第一」の305ヘクタールを含めて)。
 一民間企業の事業にこれほどの膨大な公費を投入してまで計画を推し進めようとするのはなぜか。市民には合点がいきません。やはり、政官財癒着以外のなにものでもないというところか。しかし、そのツケが貴重な資産である自然破壊と公費の浪費というのであれば、なんとも嘆かわしい亡国的構造でしかありません。
 1962年の池田内閣からはじまった全国総合開発計画以来の“はじめに開発ありき”の浪費型大規模公共工事は、もう20世紀をもって終止符をうたねばなりません。
 その徴候は、遅々としたものではありますが、昨年の藤前干潟の埋め立て中止、三番瀬埋め立て計画の大幅縮小、吉野川可動堰への住民投票による見直し、海上の森開発(愛知県)に対する博覧会国際事務局からの手きびしい警告などにみられるのではないでしょうか。


3.無謀な自然破壊はストップを

 千葉・市原丘陵開発対象地域にどんなにすぐれた自然が残されているか、その一つを紹介します。
 オオタカの繁殖という事実は、ここの丘陵地問題を掘り起こす大きな端緒になった面があります。これは言うにおよばずですが、これに加えて私があえて強調したいのは、昨年の5月、この村田川の支流で13羽のヒナを連れたオシドリが見られたということです。
 オシドリは、オオタカののようにレッドデータブックにあげられている動物ではありません。県内で冬期には比較的よく見かける鳥です。しかし、繁殖についての公的記録はまだ一度もないということです。これは、県立博物館の鳥類担当者が明言しました。すると、これが県内初の記録ということになります。
 このような人口密度の高い市街地近くでこういう事例が発見されたということは、オオタカの生息を含めて、ここにいかに良質な自然が保たれているかのかっこうの証(あかし)だと思います。
 鬼に角、いま、この期におよんでこの丘陵を破壊消滅させるということには、まったく道理がありません。私たちは今の時代のためにこういうことを言っているのではありません。これより、50年、100年、200年後世の人類のことを考えると、私たちが今やっている無謀な果てがない自然破壊は罪悪だ、罪が大きい、ということです。
 20世紀の私たちは、そういう犯罪者にはなりたくないと思います。多くの皆さんと力をあわせ、千葉の自然が現在より絶対に後退しないよう、しっかり守っていこうではありませんか。

(2000年2月)









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