メガソーラーなど上流部開発の規制を要請

〜豪雨から茂原・長生の住民を守る会〜




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 「豪雨から茂原・長生の住民を守る会」は一宮川流域の総合的な水害対策を求めて活動している。会は(2021年)11月9日、県一宮川改修事務所と4回目の懇談をおこない、上流部におけるメガソーラー(大規模太陽光発電施設)などの開発規制を要請した。

流域治水を推進

 一宮川流域は2019年10月25日の豪雨で甚大な被害をうけた。茂原市、長柄町、長南町では約4000棟が浸水し、計6人(関連死を除く)が亡くなった。流域住民は「もう水害はこりごり」とし、「豪雨から茂原・長生の住民を守る会」を立ち上げた。2020年3月である。河川改修だけでは水害を防げないとし、流域治水(総合治水)の推進を県に求めてきた。

 流域治水は流域全体で降雨を受けとめ、河川への流入を抑えるものだ。県は一宮川流域の浸水対策を流域治水へ転換した。2020年4月に発足した一宮川改修事務所は、「守る会」との懇談でこう表明した。「一宮川流域の流域治水を全国のモデルとなるようにしたい」。

 事務所は一宮川の拡幅にとりくんでいる。第二調節池の増設工事も進めている。この増設調節池は今年8月、15万m3を暫定的に供用開始した。2023年度末までに計40万m3の完成を予定している。また、一宮川上流部で調節池の新設も計画している。流域の水田に雨水を一時的にためる「田んぼダム」の実証実験もおこなっている。これらのとりくみを「守る会」は高く評価している。

地盤沈下と上流部開発は放置

 一方で課題もある。茂原地域では、天然ガスかん水のくみ上げによる地盤沈下が現在も続いている。この50年で1m超も沈下した。このまま地盤沈下が進めば、茂原市の市街地は調節池のようになってしまう。将来は海底に沈み、人が住めない街になる。しかし、茂原市では地盤沈下にふれることはタブーになっている。マスメディアもとりあげない。天然ガス生産企業が地域の政治や経済に大きな影響力をもっているからだ。「守る会」は地盤地下の規制を県に求めている。

 もう一つの課題は上流部の開発だ。茂原市の三ケ谷(さんがや)、立木と長南町の豊原にまたがる地域でメガソーラーの建設工事が進んでいる。
 「茂原太陽光発電所」(仮称)である。事業面積は101ha。森林を伐採し、谷津田を埋め立てることによって建設する。2019年8月に許認可を取得、翌9月に着工した。完成は2023年秋の予定である。

 こんな開発が続けば、流域治水は絵に描いた餅になりかねない。スポンジとしての役割をはたしている森林がなくなれば、そこに降った雨がいっきょに河川に流入するからだ。

 茂原太陽光発電所には調整池が6カ所に設けられる。だが、どれも規模が小さい。しかも調整池は、半日で360ミリという記録的な豪雨が降った2019年10月より以前に計画されたものだ。そんな豪雨は想定していない。したがって、2019年10月のような規模の雨が降れば調整池は役にたたない。一宮川の支川に大量の雨水が流れ込む。

「守る会」はこのことを指摘し、計画を見直しさせるよう求めた。「上流部の開発を規制するなど、総合的な水害対策を推進してほしい」と要請した。
 事務所は答えた。
    「総合的という考え方が流域治水というのはそのとおりだ。しかし、当事務所は開発にはかかわっていない。本庁の河川整備課に設けられた一宮川流域浸水対策班も同じだ。開発行為の審査や協議などはほかの部署が担当している」

    「開発行為は、森林法や農地法などさまざまな法制度にもとづいて審査する。そうした法制度で定める基準に適合していれば、許可せざるをえない。一宮川流域だけ特別に規制することはできない」


行政の縦割り弊害を改め、総合的な水害対策の推進を

「守る会」は要請した。
    「今年7月、熱海市で甚大な土石流災害が発生した。その原因として、上流部に建設されたメガソーラーも指摘されている。ソーラーパネル設置のために森林を伐採した結果、上流部の保水力が落ちたというものだ。このように上流部の開発は下流部に甚大な被害をもたらす危険性が高い。茂原太陽光発電所の下流地域に住んでいる人たちは心配している」

    「メガソーラー建設は鴨川市でも問題になった。鴨川市では建設に着手しない方向になっていると聞く。太陽光発電自体は必要なことだ。しかし一宮川流域では、水害が命にかかわる問題になっている。2年前の水害では、人が亡くなった。財産もなくなった。そのように重大な問題になっていることを重く受けとめていただきたい」
 一宮川流域治水協議会(事務局は県の河川整備課と一宮川改修事務所)が主催する流域治水シンポジウムについてもこう要望した。
    「茂原市では地盤沈下がタブーになっている。だが茂原地域は毎年2センチ沈下している。これをどうするのか。いくら河川や田んぼをいじっても、地べたがどんどん沈んでいる。葛南地域は、地下水のくみ上げで地盤が沈下したのでくみ上げを規制した。行政の縦割り弊害をあらため、地盤沈下や上流部開発も含めて、ありとあらゆる角度から総合的に検討していただきたい。文字どおり流域治水を進めるというタブーなきシンポジウムを開いていただきたい」















写真の上と中は長南町豊原、下は茂原市立木。
着工前(左)はGoogleマップのストリートビュー。工事中の写真は2021年11月9日撮影



上流部開発の問題などで県一宮川改修事務所(左手前)と懇談する
「豪雨から茂原・長生の住民を守る会」のメンバー=2021年11月9月、同事務所で









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