流域治水(総合治水)への転換で水害を防ごう
〜「豪雨から茂原・長生の住民を守る会」が現地調査〜
2019年10月25日の豪雨で茂原市は甚大な被害を受けた。「豪雨から茂原・長生の住民を守る会」は8月8日、浸水被害の現場や調節池などを見学した。参加者は17人。
市が分譲した住宅地も1.6mの浸水
最初に長清水地区の住宅団地を訪れた。一宮川のすぐ近くにある。昨年10月の大雨では浸水深が1.6mにおよぶ被害を受けた。この団地は茂原市が分譲した。参加者からは「こんな危険な場所で市が宅地を造成し、分譲するとは」と驚きの声があがった。
つぎは一宮川第一調節池である。容量は30万m3だ。ふだんは鶴枝遊水公園として利用されている。野鳥や水草などの自然観察ができる自然湿性園がある。野球、サッカー、ゲートボールなどのスポーツやイベントができる多目的広場もある。
この調節池は、大雨が降るとすぐ満杯になる。地元の人が説明した。「排水のしくみがよくない。調節池にたまった水をすべてはきだすのに何日もかかる。排水の機能や運用の改善が必要だ」。
つぎは中央労働金庫茂原支店だ。八千代地区にある。ここは大雨が降るたびに浸水被害が発生している。昨年10月の大雨では浸水深が1.5mを超えた。現金自動預払機(ATM)などの機器が水没し、使用できなくなった。そのため1か月近く臨時休業となった。
一宮川第二調節池と、その増設工事箇所も見た。第二調節池の容量は既設が70万m3、増設が40万m3である。ここも大雨が降るとすぐ満杯になる。越流堤(洪水調節の目的で堤防の一部を低くしたもの)が低すぎることも影響しているという。参加者からこんな声がだされた。
「大雨が降るとすぐに満杯になるということは、調節池が足りないということだ。越流堤の高さも改善すべきだ」
総合治水(流域治水)への転換が必要
現地調査のあとは中央公民館で意見交換である。こんな意見がだされた。
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「これまでのように河川改修に偏った対策では豪雨時の浸水被害を防ぐことができない。総合治水(流域治水)への転換が必要だ。遊水地(調節池)を数多く増やしたり、ため池や田んぼを治水に活用したりするなど、さまざまな手をうつことが重要だ。浸水の危険度が高い場所では住宅などの建設を規制する。上流域の開発も規制する。天然ガスかん水のくみ上げによる地盤沈下を止める。そのような対策を講じないと水害は防げない」
総合的な治水対策を早急に
千葉県自然保護連合 牛野くみ子
JR外房線の本納駅を出ると田んぼが広がっている。自然の貯水池になっていて、水をためることができる。その一角の少し盛り土がされたところに住宅がたてられている。周りは緑で美しいが、いったん自然が暴れだしたら怖い。
茂原市が分譲した長清水地区の住宅団地は、昨年10月の大雨で1.6mの浸水被害を受けた。近年は雨の降り方が尋常ではない。茂原市では天然ガスかん水のくみ上げもつづいている。そのため地盤沈下が止まらない。住民を守るため、総合的な治水計画を県、市、住民を交えて早急に立ててほしい。
浸水深1.6mの表示を指さす市民=茂原市長清水の住宅団地で
一宮川第一調節池(鶴枝遊水公園)の機能や問題点などを説明する茂原市民
茂原市の市街地にある中央労働金庫茂原支店は昨年10月の大雨で
浸水深が1.5mを超え、1か月近く臨時休業した
2019年10月25日の豪雨では一宮川の支流、豊田川もはじめて氾濫した。周辺市街地は広範囲で
冠水。避難所になっていた茂原市中央公民館も床上70cmまで浸水した。そのため、避難者16人
はボートで市役所に再避難した=手前の市役所本庁舎から撮影、ANNニュースより
昌平橋から撮影した豊田川(奥は下流)。右手前の建物は茂原市中央公民館。堤防を強固に
しても、川の流下能力を超える量の水が流れ込めば越流氾濫して甚大な被害をもたらす。
遊水地を増設するなど、流域全体を考慮した総合治水対策の推進が求められている
現地調査の参加者。後方は一宮川第二調節池
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