千葉県に上告断念を要請

〜産廃反対東総住民連絡会〜




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 東京高裁は5月20日、エコテック産廃処分場に関する県の許可取り消しを命じました。その判決に対する上告期限を翌日に控えた6月2日、産廃反対東総住民連絡会の住民20人が県に上告断念を要請しました。
 杖をつきながら、あるいは腰を曲げながら、銚子市や旭市などから20人も県庁にやってきて、「上告しないでください」と切々と訴えたのです。なかには80歳を越えるお年寄りの方もおられました。

 まず、午後1時40分から1時間、県庁前で「森田健作知事様 東京高裁判決を尊重し、上告しないでください」と書いたチラシを配布しました。

 3時からは、上告断念の申し入れ交渉です。森田知事が会わないため、担当課(廃棄物指導課)でH課長やS主幹らと交渉しました。

 住民は、これまで産廃問題でさんざん苦しめられてきたことや、エコテック産廃処分場ができれば、野菜や米が汚染や風評被害で大打撃を受けること、地下水を利用している周辺集落の飲料水や農業用水に深刻な影響をあたえることなどを切々と訴えました。

 ところが、S主幹らが「上告すべきと思っている」などと、挑発ともいえるような発言を繰り返しました。そのため、住民が怒り、交渉は午後6時までかかってしまいました。


■「上告すべきと思っている」

 S主幹は、つぎのように住民感情を逆撫でする発言を繰り返しました。
     「私は個人的には上告すべきと思っている。それは高裁判決に不備があるからだ」
     「判決によって、これまでの我々のやり方が否定された。環境省もそのように考えてよいと言っている」
     「判決によって、二重のモノサシができたことになる。環境省のモノサシと高裁判決のモノサシだ。したがって、我々は業務が遂行できない状態になっている」
     「最高裁の判決はすごく重たいものだ。だから、そこで決着をつけてもらいたいと思っている。最高裁では我々が勝ちたいと思っている」


■住民の暮らしは二の次、三の次

 S主幹の発言には、東総地域の住民が産廃問題で苦んでいることや、住民が産廃処分場の不許可を切実に願っていることなどはいっさい考慮されていません。住民の暮らしは二の次、三の次です。

 そこで住民が激怒し、「あなたは正直だ。しかし、住民の立場にはまったくたっていない」「一審、二審の判決をどうして素直に認めないのか」「あなたはいったい何のために公務員になったのか」「あなた方の家のすぐ近くに産廃処分場ができたらどうするのか」「上告は住民イジメ以外の何物でもない」などときびしく批判しました。

 午後6時になったため、交渉は打ち切りになりました。


■「法制度のモノサシ」は住民にだけ適用
  〜有名企業が反対したら、法制度に適合したものでも不許可にする〜

 交渉では、住民イジメも浮き彫りになりました。
 住民側からこんな質問が出されました。
     「あなた方は、住民が産廃処分場設置の不許可を要請したときは、法制度(環境省のモノサシ)をタテにとって許可する。しかし、有名企業などが、隣接地に産廃・残土処分場ができたら困るので不許可にしてほしいと要望すると、許可基準に適合したものでも不許可にする。たとえば、2006年に「かずさアカデミアパーク」の隣接地に残土処分場を設置する計画が再申請されたとき、県は、企業から反対の要望がだされたことを受けて、設置を許可しなかった。法制度上の基準を満たしていたのに、である」

     「このように、有名企業から反対の要望がだされば、法制度上は許可せざるをえないものでも許可する。一方、エコテック産廃処分場のように、飲み水や農作物が影響を受けるので許可しないでほしいと住民が要望しても、法制度のモノサシを理由にして許可する。しかも、地裁が許可取り消しの判決を下しても控訴する。そして、今度は高裁判決に上告したいという。これは、あまりにも不公平ではないか。S主幹は、そういう不公平や矛盾した対応をどう考えているのか」
 そうしたら、S主幹はこう答えました。
     「かずさアカデミアパーク隣接地の残土処分場計画を不許可にしたことについては、私個人は納得していない。しかし、堂本知事の決断により、不許可が決まった」
 これは言いのがれです。S主幹が個人的にどう思おうと、県が企業の反対を受け入れて不許可にしたことは事実です。
 一方、エコテック産廃処分場の場合は、地元の住民や農民がたくさんの署名を添えて「許可しないで」と要請しても、許可しました。そのうえ、裁判所が一審、二審とも許可取り消しの判決を下しても、それを認めようとせずに上告です。これは、明らかに住民イジメであり、農民イジメです。


■住民の暮らしよりも、国や業者のほうに目が向いている

 交渉でS主幹やH課長の話を聞いて感じたのは、当日(2日)の『朝日新聞』(千葉版)の記事が反映されているのではないかということです。

 記事にはこんなことが書かれています。
    《県にも言い分はある。控訴審で指摘された廃棄物処理法の解釈をめぐる問題では、改正法施行前に許可申請があった事案までさかのぼって適用するべきか、法を所管する環境省に確認したうえで最終的に許可しているからだ。環境省も「申請する前には分からなかったことを業者に課すことになり、不合理だ」と話す。同省によると年間130件を超えていた最終処分場の新規許可件数は、法改正で環境影響調査が義務づけられてから年平均30件前後に大幅に減少した(=グラフ)。
     「リサイクルで廃棄物の量が減っているとはいえ、このまま処分場が許可されなければ7年程度で全国の処分場がいっぱいになる」と同省産業廃棄物課は憂慮する。》

    《高裁判決の波紋は、産廃業者にも広がっている。県内を含む首都圏を中心に事業を展開する別の大事業者社長は判決に「遺憾だ」と話す。毎年のように変わる法に対応するだけでも大変なのに、法の要件を満たしても不許可との判断だったからだ。この会社が県内で設置した複数の処分場はいずれも5年程度かけて開業している。建設予定地の周辺住民への説明に2年、環境影響調査、設置申請などの事務手続き、建設に各1年という具合だ。》
 住民の願いむなしく、県は翌日(6月3日)、最高裁に上告しました。
 県の姿勢は、住民の暮らしではなく、国(環境省)や業者のほうに目が向いている──。廃棄物指導課と交渉し、誰もがそのように感じました。

(文責・千葉県自然保護連合事務局)












県庁前で「森田健作知事様 くらしと環境をまもるため上告を断念してください」と訴えた地元住民




上告断念を求める地元住民の署名を提出し、産廃問題でいかに苦しんでいるかを切々と訴えた




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