産廃処分場設置訴訟

控訴した県に抗議と取下げ要請

〜小櫃川の水を守る会/天羽の水を守る会/産廃反対東総住民連絡会/田原康子さん〜


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 2市1町(旭市=旧海上町、銚子市、東庄町)のエコテック産廃最終処分場の設置許可取り消し判決に県が控訴した問題で、「小櫃川の水を守る会」と「天羽の水を守る会」は2007年9月10日、県庁に出向き、控訴に抗議し、取り下げを求める要望書を知事に提出しました。その内容を紹介させていただきます。あわせて、原告や地元住民でつくる「産廃反対東総住民連絡会」(高田豊代表)と現地住民の田原康子さんの抗議・要請書も転載させていただきます。


小櫃川の水を守る会



 千葉県知事 堂本暁子 様


抗議並びに要請書

主旨
 エコテック産業廃棄物処分場(銚子・海上地域)設置について、千葉県の許可を取り消した千葉地裁判決について、このたびの県の控訴に抗議するとともにその控訴の取り下げを強く要請します。

理由
 私たち「小櫃川の水を守る会」は、1988年、水源地への産業廃棄物処分場設置計画が契機となり設立されました。以来、環境保全に向けてあらゆる運動を重ねてまいりました。
 一つの成果として、1995年、県内で初めて小櫃川流域3市(君津、木更津、袖ケ浦)に水道水源保護条例が制定されました。その後も県内外の環境保護団体と連携し環境保全に精力的に取り組んでいるところです。
 当会は富津市田倉産廃差止訴訟、この度の銚子・海上産廃差止訴訟についても全面支援しているところです。
「廃棄物と清掃に関する法律」は増え続ける化学物質に追いつくことができず、改定が続いています。そのなかでの審査制度では県が簿外債務を把握することは困難であるとしていますが、事前協議を適正に実施することで、それは不可能ではないはずです。  また千葉地裁判決で、業者は事業運営が明らかに困難であることが指摘されたのですから、地域住民、旭市議会の控訴しない旨要請を尊重すべきです。
「環境を大切にする千葉県」、「生物多様性ちば県民会議」を推し進め、地域住民の健康と命を守る意味でも、このたびの『控訴を取り下げること』を強く要請いたします。
 2007年9月10日

小櫃川の水を守る会
代 表 山田周治
事務局 御簾納照雄


天羽の水を守る会



 千葉県知事 堂本暁子 様


抗議と控訴取り下げ要請


 8月21日(エコテック)産業廃棄物処理施設設置許可処分取消請求事件について千葉地裁は千葉県の許可を取り消す判決をいたしました。私たちはこの判決を心の底から喜びました。貴職には「控訴しないこと」求めて、8月末まで当地域からも多数の人が文書要請いたしました。
 ところが9月4日、貴職は東京高裁に控訴する手続きをしました。このことについて以下の理由で容認することは出来ません。控訴の取り消しを強く要請いたします。
 平成12年3月30日、厚生省は海上町と富津市田倉の2つの処分場建設について、「不許可とした千葉県の判断を覆して」設置を認める判断をしました。すると当時の沼田知事は独断で国の裁決に従う意向を示し、両処分場を一転して許可にしたため、現在の2市1町の訴訟が起きました。
 富津市田倉地先に計画されている産業廃棄物処分場について、千葉県知事が平成11年11月15日、有限会社浅野商事の産廃処分場計画を「設置取り消し」処分としたのは、「富津市と業者の環境保全協定締結」ことを着手前の条件としたのに、業者がこの条件を無視して着手したからです。
 厚生省が業者の申し立てた行政不服審査請求を認め、県の決定を取り消す裁決を行ったことは、私たちの安全な飲み水と住環境を危うくするものであり、私たちにとってとうてい認められるものではありませんでした。
 厚生省の裁決によって条件が無効にされ、工事が進行したため、私たちは、このかけがえのない環境を守るために、地元集会決議を行い、工事の進行を止めるために仮処分訴訟の申請手続きを取りました。
 そして地元の多数の住民や地元自治会等諸団体の協力を得て大規模な住民訴訟へと発展しました。地元3区の多数の区民の反対(85%の反対)、天羽地区8,700名の反対陳情、富津市長、富津市議会の反対表明がありました。
 地元の意思を全く無視した「厚生省の裁決」や「千葉県の無責任な態度」は今も認めてはいません。その後一審千葉地裁、そして控訴審と長い裁判が続いています。千葉地裁での仮処分、一審本裁判で裁判所は私たちの主張を認めてくれました。
 住民が将来とも安心して生活を続けられるために、銚子海上などの人たちとも共同し、連帯して運動の輪を広げてきました。海上の裁判は当初から私たち自身の裁判でもあるという思いで海上の皆さんの諸行動に機会があれば参加してきました。
 事前協議の時から行政の厚い壁に阻まれて悔しい思いで行動してきた私達にとって、この8月21日の千葉地裁判決で新しい可能性が切り開かれるかと考えていました。
 ところが貴職は地域住民のこの思いを裏切る行為にでました。断じて容認できません。千葉地裁判決を尊重し、控訴を取り消すよう強く要請いたします。

 平成19年9月10日

天羽の水を守る会
代表 安田貞夫




産廃反対東総住民連絡会/2市1町・現地住民一同



堂本知事の東京高裁控訴に強く抗議します。



 2007年9月11日


産廃反対東総住民連絡会
代表 高田 豊
2市1町・現地住民一同


「エコテック最終処分場許可取り消し」千葉地裁判決(8月21日勝訴)に対して、9月4日、堂本知事は「住民の健康と安全、地域の環境を守るため控訴しないでください」という多くの住民の願いを踏みにじり、東京高裁に控訴の手続きを行うと発表しました。
 今回の措置は、私たち松ヶ谷をはじめ関係する地域住民にまさかの驚きと落胆をもたらしました。同時にそれは堂本知事の判断に期待した各地の公害問題に取り組んでいる行政・市民・住民に大きな波紋を広げました。
 千葉県は控訴理由として、千葉地裁判決に対する3つの基本的主張を上げています。  それは
  • 今回の判決は、現行審査制度の枠を超えた審査を要求するものである。
  • 現行法令のもとでは、県の審査は適法であり、それに基づく許可も適法である。
  • 今回の判決には、県に簿外債務や第三者債務の把握など事実上不可能なことを要求したり、許可時に存在しない登記の抹消費用を加算するなど妥当性のない認定がある。  というものです。
 1、2についていえば、住民の健康と安全、地域の環境の保全よりも、自らの体面を優先し、行政のやることには間違いはないとする国家無問責の立場、行政のおごり以外の何ものでもありません。
 3)についていえば、自らの怠慢を棚に上げた開き直りの論理です。簿外債務や第三者債務の把握が事実上困難とするなら、なぜ裁判の過程で明らかになったのでしょうか。県の努力不足を合理化しているとしが思えません。青山貞一武蔵工大教授(環境政策)は「許可申請書を受理する前に県が行った事前協議がずさんだった」
とズバリ指摘しています。
 県の控訴は、住民の立場を全く無視し、自らの体面を保ち、自らの怠慢を棚に上げて責任逃れをするために行ったものです。
 県の控訴に対し、私たちは正面から正々堂々と受けて立ちます。弁護団とも協議し、理論を深め、東京高裁で徹底して県の主張を論破していきます。
 私たちは9年間産廃処分場建設に反対しています。時とともに運動が広がっています。今回でも、たった6日間で「健康・安全・環境を優先し、控訴しないでください」という堂本知事宛の要求署名4972筆が集まりました。地域住民の皆さん、県内外の支援者の皆さん、有り難うございました。地元住民がねばり強く反対している限り、エコテック産廃処分場が日の目を見ることは無いでしょう。
 県の控訴に断固抗議するとともに、地元住民、県内外支援者の皆さんに更なるご支援をお願い申し上げて、声明といたします。





田原康子さん



「環境知事」の看板に偽りあり!


「エコテック最終処分場許可取り消し」千葉地裁判決(8月21日勝訴)に対して、9月4日、堂本知事は東京高裁に控訴の手続きを行うと発表しました。
 今回の措置は、現地松ヶ谷をはじめ関係する地域住民に深い衝撃を与え、同時に私たちの反対闘争に深い関心を寄せて下さった各地の公害問題関係者をも失望させました。
 知事の掲げた看板「環境保護」はとんだ茶番です。土壇場で裏切られた地元住民の深い落胆を少しはお察し頂けるでしょうか。
 就任時、知事は「あなたたち地元住民が反対運動を大きく盛り上げれば山は動きますよ」と、私たちに下駄を預ける発言をされた。苦笑しながらも、前知事のツケを背負わされた新任知事の立場を思いやり、まさかの時は強い味方の堂本さんと秘かに期待を寄せていました。
 看板に偽りあり。いつの間にか、貴女は県政の泥海か産廃・残土の中に沈没してしまったのだ。私たちは再度、東京高裁で「知事の背信」と「県廃棄物指導課の無策」を追いつめる覚悟です。法や規則は所詮「人」が作ったもの。そこに新たな息を吹き込むのもまた「人」です。それを放棄した県の環境政策を指をくわえて見過ごすことはできません。  今さら説明するまでもなく、処分場予定地は県内屈指の野菜生産地であり、豊書で良質な水瓶(みずがめ)と称される水源地です。後世に引き継がねばならぬ貴重な財産を知事は子供騙(だま)しに等しい理由で足蹴(あしげ)にしました。
 ところで、提訴から6年3ケ月、並行して千葉地裁に訴えた業者相手の民事訴訟も本年1月31白、住民側の主張を認め「建設差し止め」の裁定が下されました。
 今回の知事の控訴は、実質、2つの司法判断に真っ向から対決することを意味します。一方で県民とも争うことを選択された。住民を踏み台にして国の環境行政を改めるなど、どこを押したら出てくる台詞(せりふ)でしょう。環境行政の衰退ここに極まれりです。
「控訴が現行制度の不備を国に訴えることにつながるという考えは全く理解に苦しむ」と直後に語った住民連絡会・高田代表の所感は、控訴理由を聞いた関係者すべての思いです。
 私たちは、行政や事業者の理不尽を自分たちの手で証明するため、9年間(うち6年は司法判断に委ね)額に汗し、知恵を絞り、資金捻出に苦労し、我が身を削って闘ってきました。
「行政に現行の仕組みを超える裁量権は与えられていない」とする知事と県廃棄物指導課の釈明は、「やるべき務めも果たさず、私たちの訴えを聞き流し、苦闘する住民を高みの見物よろしく手を拱(こまぬ)いて眺めていた」と語ったも同じです。あなた達は何にも努力していなかったのだ。
 堂本知事、廃棄物指導課の皆さん。あなた達は国を相手に「現行法の不備を正す」ため住民と同時並列で闘うべきでした。9年間はそのために十分過ぎる時間だったはずです。
 もう何も期待しない。ましてや膝を屈してお願いなどしない。知事の覚醒(かくせい)を促すのみです。

 2007年9月10日


産廃反対東総住民連絡会・銚子
田原康子







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