「法制度上、許可せざるをえない」はウソ

〜基準を満たしても産廃・残土処分場を許可しないことがある〜



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 「エコテック産廃処分場をめぐる訴訟の東京高裁判決に県は上告しないで」と申し入れた5月26日の県交渉で、県幹部はこんなことを言いました。
     「県は法制度というモノサシにもとづいて業務を執行せざるをえない。産廃処分場も、法制度にもとづいて許可せざるをえない。」
 これを聞いて思わず笑ってしまいました。
 というのは、県が力を入れている開発地とか誘致企業の隣接地で産廃・残土処分場設置計画がもちあがったら、法制度上の基準を満たしていて許可せざるえないものであっても、必死に食い止めるからです。


■「パーク」隣接地の残土処分場計画を不許可に

 端的な事例は、木更津・君津両市の丘陵地域にある「かずさアカデミアパーク」です。
 その隣接地に残土処分場を設置する計画が申請されましたが、県は、「進出企業の反対」や「静穏な環境の悪化」などを理由にして、設置を許可しませんでした。法制度上の基準を満たしていたのに、です。
 以下は、新聞記事の抜粋です。
    《木更津市矢那に持ち上がっている建設残土処分場設置計画について、堂本知事は15日の会見で、「水源地に近く、慎重に考えないといけない」と述べ、設置許可に慎重な姿勢を示した。
     県産業廃棄物課によると、設置事業者は当初、かずさアカデミアパーク隣接地に建設する予定だったが、同施設への進出企業の反対や堂本知事の慎重姿勢で2004年10月に白紙撤回。その後、当初の予定地から約2キロ離れた木更津市矢那の山砂採取場跡地(約3万3000平方メートル)を代替地とし、建設残土約35万4000立方メートルを埋め立てる計画を県に提出した。昨年10月には本申請が受理されている。》(『読売新聞』千葉版、2006年6月16日)

    《かずさアカデミアパーク隣接地での残土処分場計画が白紙化、木更津市内の代替地でも反対された問題で、設置事業者が再びパーク隣接地で設置を計画、県に非公式に打診していることが10日、分かった。かつてパーク内の進出企業から、環境悪化を理由に反対されたため、独自の環境対策を施すほか、埋め立て後には、跡地に総合スポーツ公園を建設するという。残土条例の基準を満たしていれば、県は設置を拒否できないが、パーク内への企業誘致に対する影響も懸念され、県は対応に苦慮している。(中略)
     同処分場をめぐり事業者は、当初からパーク隣接地に計画していたが、搬入トラックによる振動や粉じんなど環境悪化を懸念する進出企業の反対を受けた県の指導で、2004年10月に申請を取り下げ。2キロほど離れた山砂採取場跡地を代替地として再び計画を県に申請。昨年10月に受理されている。(中略)
     再度計画変更を迫られた事業者は、当初のパーク隣接地であらためて計画を検討。地元ゼネコンらを申請者としてリポートを県に提出しているという。
     それによると、進出企業の反対を考慮して、パーク内をダンプカーが通過する場合は時速20キロ以下で運転。ダンプに付いた残土の粉じんは専用の機械で洗い流し、通過した路面に道路清掃車を走らせ清掃するなどの環境対策を盛り込んでいる。
     一方、県は同パークを新産業三角構想の一角として、企業誘致を強化している最中で、「(同パークは)良好な環境が売り物。誘致への影響が懸念される」とし「隣接地に処分場が建設されるのは困る」(商工労働部)と反対の構えを崩していない。
     ただ、これまで2回の申請とも、県の残土条例の基準を満たしており、今度の計画も、基準をクリアしていれば、県は本来申請を拒否することはできない。再三計画変更を迫られた事業者は、「着工の遅れで経営危機に陥っている」と話しており、損害賠償を求め裁判を起こされた場合、県の勝算は薄いとみられる。
     このため同部は「対応に苦慮している。正式に申請があれば立地企業や関係市、県でつくる街づくり協議会に諮り対応する」と新たな事態に頭を抱えている。》(『千葉日報』2006年8月11日)

    《この問題は当初、事業者がかずさアカデミアパークの東南側隣接地に残土処分場建設を申請したことが発端。静穏な環境の悪化を懸念するパーク内の立地企業が反対、堂本暁子知事も難色を示し、2004年10月、事業者は計画を白紙撤回して申請を取り下げた。
     このため、事業者は約2キロ南西の同市矢那字向台木地先の約3万3000平方メートルを代替地とし、再度県に申請。既に3割の用地を取得していた。しかし、同所は君津市との市境で、上水道の水源地から近く、君津市と周辺住民が反発。堂本知事も再び難色を示したため、今年9月、事業者はこれまでの県対応に対し、不服申し立てを申請した。
     県はこの間、事業者に地元との調整を指導してきたが、住民の理解は得られず、結局、県の要請を受け事業者が設置申請を再度取り下げた。(中略)
     千葉日報社の取材に対し、事業者は「(当初予定の)パークの隣接地を主眼に(代替地の)検討に入っている」と話し、県に非公式に打診したことを明らかにした。
     これに対し、県は「埋め立て後に運動場をつくるなど計画が少し変わったようだが、結局処分場ができることには変わりがない」とパーク隣接地への建設に反対の構えを崩していないほか、かずさアカデミアパーク街づくり協議会も反対する方向で企業の意見をまとめている。》(『千葉日報』2006年11月10日)
 ご覧のとおりです。たとえ裁判で県の勝算は薄いとみられても、有名企業が反対したら不許可にするのです。

 こうした事実をみれば、「法制度にもとづいて許可せざるをえない」という県の言い草はチャンチャラおかしいものです。

(千葉県自然保護連合事務局)




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