かずさアカデミアパーク隣接地の

  残土処分場計画をめぐる騒動

   〜大型開発地の近くだから許可に難色示す〜

千葉県政研究会



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 県庁内では、「かずさアカデミアパーク」隣接地の残土処分場計画をめぐり、騒動が起こっているようです。
 「かずさアカデミアパーク」は、県の巨大開発「千葉新産業三角構想」の一つです。木更津・君津両市にまたがる丘陵地域にバイオ関連産業の集積拠点をつくろうと、県が企業誘致を進めています。その開発地の隣接地に残土処分場計画がもちあがっているのです。


かずさアカデミアパーク隣接地に残土処分場計画

 まず、7月27日の『千葉日報』が1面トップでデカデカとこの残土処分場計画をとりあげました。記事の要旨はこうです。


《『千葉日報』7月27日より》

 かずさアカデミアパーク隣接地に残土処分場計画
  進出企業環境悪化懸念の声
   対応に県、苦慮 企業誘致に支障
    「要件満たせば許可」に

 県がバイオ関連産業の集積拠点として企業誘致を図っているかずさアカデミアパーク(木更津・君津市)の第1期地区隣接地に、建設系の残土処分場設置が計画されていることがわかった。すでに進出企業から反対の声が出ているほか、進んでいない県の企業誘致活動への影響も必至だ。しかし、安全基準など許可要件が整えば、権限を持つ県としても許可せざるを得ず、対応に困惑している。
 事業者は木更津市内に本社を置くK社で、新日鉄系の子会社の所有地約8万3000m2を借りて、土量約70万m3の残土処分場を設置する。
 K社の説明会では残土は木更津・袖ケ浦港から同パーク内を南北に貫通する地区内道路を通って処分場に搬入。1日200〜300台のトラックが往来することになるという。
 この申請に、工場が処分場や搬入路に面している佐藤製薬が反対の旨の文書を県に提出した。
 同社では、クリーンルームである工場内に取り入れる外気の浄化フィルターを1年半ごとに約2000万円の費用をかけて交換しているが、残土を運搬するトラックの排ガスがフィルターに吸着するため、2カ月に1回の短期間でフィルター交換が必要となる。また、工場内のクリーン度をチェックするため、1週間の操業停止も必要で「これでは工場生産が成り立たない」と悲鳴をあげる。
 タイヤ等に付着した昆虫の侵入、従業員の通勤、製品の運搬、工場見学者の車両との交通事故にも心配。「どの進出企業も良好な環境を買って進出したはず」と環境悪化への懸念を表明する。
 企業誘致を進める県商工労働部も「好ましくない」と反対の意向だ。26区画、約150haの研究所、工場用地のうち、まだ19区画、約105haヘクタールが未分譲のまま。残土処分場の設置で今後の企業誘致に支障が出ることは避けられない。





堂本知事が怒り心頭

 この記事を見て残土処分場計画をはじめて知った堂本知事は、カンカンに怒りました。それで7月29日、幹部を集めて次のように訓戒を垂れたそうです。
 「千葉県職員は危機管理意識やマネージメント能力がなさすぎる。ある部局(商工労働部)では、かずさアカデミアパークに企業を誘致すべく、いろいろとやっているのに、別の部局(環境生活部)は、その隣接地の残土処分場計画を許可する方向で動いている。しかも、そんな残土処分場計画がもちあがっていることを知事に知らせないなんて、ひどすぎる。すぐに、全職員にたいし、危機管理意識をもっと持つよう指示しなさい」
 本庁職場ではただちに、このことが全職員に伝えられたそうです。


知事の“訓戒”に呆れる県職員

 しかし、この知事の“訓戒”に、かなりの県職員は呆れているそうです。Aさんは、こう語ってくれました。
 「今回の堂本知事の“訓戒”は、笑止千万としかいいようがない。なぜなら、自分は来年春の知事選のことが頭いっぱいで、県政運営にはあまり関心がないからだ。“よきに計らえ”で、県政運営は守旧派幹部(沼田前知事の側近グループ)にまかせている。『あきこホットライン』のメールだって、自分では目を通しておらず、知事室の職員に処理させている。だから、産廃・残土処分場設置申請の処理も、担当の産業廃棄物課にまかせている。住民が許可しないように要望しても、担当課は“要件を満たせば許可せざるを得ない”と答える。知事はそれでいいとしている」
 「それなのに、なぜ今回の件で腹を立てたといえば、自分が知らないことを新聞がデカデカと報道したからだ。知事は、マスコミ報道をものすごく気にしている。メンツがつぶれたと怒っているのだ」
 「腹を立てているもう一つの理由は、県の基幹プロジェクトとして位置づけている『かずさアカデミアパーク』の隣接地に残土処分場が計画され、さらに、進出企業がそれに反対していることだ。知事は、そんなところにどうして残土処分場をつくらせるのかと怒っている。しかし、これはおかしい。一般の山林や、民家の近くだったら残土処分場を認めるが、県の開発予定地の隣接地だったら認めないというのと同じだからだ。しかも、一般の県民がいくら反対の要望をだしても無視するのに、大企業(佐藤製薬など)の声は聞き入れるというのは、県民蔑視だ」

 まったく、そのとおりです。

「宝のような場所に何百台もダンプカーが」
  通るのは許容できない」
   ─知事が許可に難色示す〜

 知事は、同日(29日)の記者会見で、「バイオ産業の国際的拠点で千葉の宝のような場所に、一日に何百台もダンプカーが通るのはとても許容できない」と述べ、許可に難色を示しました。
 以下は、7月30日の『千葉日報』の記事です。


《『千葉日報』7月30日より》

  かずさアカデミアパーク  残土処分場設置問題
  申請の許可に難色  知事「宝のような場所」
    事業者との交渉、可能性も

 かずさアカデミアパーク(木更津・君津市)の第1期地区隣接地に建設系の残土処分場設置が計画されている問題で、堂本暁子知事は29日の定例記者会見で「バイオ産業の国際的拠点で千葉の宝のような場所に、1日に何百台もダンプカーが通るのはとても許容できない」と述べ、事業者から提出されている許可申請書に対する許可に難色を示した。理由に振動やばいじんによる環境悪化の懸念を挙げている。一方で、申請に対しては「法律(や条例)上の問題なので、特例扱いは難しい」と通常の手続きに乗っ取って許可せざるを得ないとの認識も示した。今後、事業者との直接交渉の可能性にも言及した堂本知事だが、許可へは厳しい判断を迫られそうだ。
 堂本知事は「かずさは、今までに大変な歳月と県民の税金を投入してここまできた。実体として1日に何百台ものダンプカーが通過することになれば、企業・研究者誘致などさまざまなことが前向きに進もうとしている矢先だけに、大変な懸念を抱いている」と表明。

 さらに、「一番の懸念は、バイオテクノロジーは遺伝子などを調べるため極度に精密な機械を使って検査しているので、ダンプカーによる振動は困る。また、既に立地している製薬会社にとっては、工場内にばいじんなどが入ると迷惑な話になるだろう」と説明した。

 一方で、県にとって重要な施設の隣接地には許可しないことになれば、今後、他の地域に影響を及ぼす可能性があるため、「県としては法的には当然許可しなければならない業」との考えも述べた。
 ただ、「法的にすべてOKだからといって、千葉の宝のような場所に処分場を計画するのは、考え直してほしい」と事業者へ再考を求めたい意向も示した。今後については「必要が生じた場合、事業者との直接交渉も行う」とした。
 県産業廃棄物課によると、同計画は今年4月、事業者から許可申請書が提出されているが、「許可条件に合わない事項がある」として県が「補正」を求めている。申請書の補正が出されれば、関係法令などに照らし合わせるなど手続きを行い、通常なら60日以内に許可が出される。




 以上です。
 堂本知事は、許可に難色を示しています。しかし、「宝のような場所」だから許可しないとなれば、今後、ほかの地域でも、住民が反対するものは許可を出しにくくなります。そこで知事は、「県としては法的には当然許可しなければならない業」と語りました。
 そこで、今後の対応ですが、知事はおそらく、さまざまな手をつかい、事業者が申請書を自主的に取り下げるよう求めていくと思います。つまり、政治家なども使いながら、取り引きをするということです。
 今後の動向に注目です。

(2004年7月)




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