指定廃棄物処分場候補地(千葉市)撤回を申し入れ

〜東京湾保全7団体〜




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 環境省は(2015年)4月24日、千葉県内の指定廃棄物処分場建設候補地を千葉市に提示しました。候補地は東京湾に面する東京電力千葉火力発電所の敷地(千葉市中央区)です。
 指定廃棄物というのは、福島第一原発事故で付着した放射性セシウムの濃度が1kgあたり8000ベクレルを超える廃棄物のことです。

 候補地は、今後予想される首都直下型地震や東京湾北部地震によって地盤の液状化や大津波の危険性が非常に高い場所です。処分場ができると、東京湾の環境は危険にさらされます。
 そこで、東京湾の干潟・浅瀬の保全にとりくんでいる自然保護団体は5月14日、指定廃棄物処分場の千葉県内候補地選定の白紙撤回を求める申入書を環境大臣に提出しました。翌15日は、千葉県知事と千葉市長にたいし、処分場を受け入れないよう申し入れました。
 申入書を提出したのは、千葉県自然保護連合、千葉の干潟を守る会、小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会、三番瀬を守る会、三番瀬を守る連絡会、三番瀬を守る署名ネットワーク、日本湿地ネットワーク(JAWAN)の7団体です。


「つくりやすいところはどこか」が大前提

 環境大臣への申し入れでは、廃棄物・リサイクル対策部指定廃棄物対策担当参事官室の山崎寿之課長補佐、小磯俊之係長、重松賢行主査の3人が応対しました。
 最初に牛野くみ子さんが申入書を手渡しました。そのあと約1時間にわたってやりとりしました。
 液状化や大津波の危険性が高く、また住宅密集地がすぐ近くにある場所に高濃度の放射性廃棄物処分場をつくるのは、常識からみてもおかしいことです。結局のところ、「つくりやすいところはどこか」ということが大前提になっていて、東京湾や住民への影響などはまったく考慮していないようにみえます。
 これらの点について、参加者から疑問や意見が活発にだされました。


東京湾漁業は壊滅の危機

 こんな意見がだされました。
     「千葉の干潟を守る会は、“海はみんなのもの”をスローガンにかかげ、40年以上にわたって東京湾の干潟・浅瀬や湾の保全活動にとりくんでいる。指定廃棄物処分場の候補地も、かつては干潟であった。東日本大震災のさい、近くの埋め立て地にあるコスモ石油千葉製油所でLPGタンクの火災・爆発事故が起きた。そういうことが今後も起こる可能性がある。指定廃棄物処分場ができて漏洩事故が起これば、東京湾は放射能に汚染され、たいへんなことになる」

     「東京湾も自然豊かな場所だ。いまも漁業が盛んにおこなわれている。たとえばスズキの漁獲量は日本一となっている。さきほどの環境省の説明を聞き、候補地の選定において、東京湾の自然や漁業のことはまったく考慮されていないと思った」

     「私は千葉市の埋め立て地に住んでいる。東日本大震災のときの液状化被害をとくと見た。候補地は東京にも神奈川にも近い。そこを大津波が襲ったらどうなるのか。安全性を第一に考えてほしい」

     「さきほど、指定廃棄物を外部と遮蔽(しゃへい)するコンクリートは100年もつという説明があった。仮にそうだとしても、指定廃棄物に含まれる放射性物質の危険性は100年以上つづく。子孫の世代に大きなツケを回すことになる」

     「候補地はかつてコアジサシの繁殖地になっていた。再び繁殖地になる可能性もある。コアジサシは“千葉市の鳥”でもある。そんな貴重な場所を候補地とするのはやめてほしい」

     「候補地の選定理由についていろいろと説明を受けたが、とても納得できる内容ではない」
 これらの疑問や意見をめぐり、参加者と環境省の間でやりとりしました。


「千葉を成功のモデルケースにしたいようだ」

 今回の候補地選定について、『千葉日報』はこう報じています。
     「原発事故の“当事者”東電の敷地ということに、地元の反発を最小限にとどめたい環境省の思惑が垣間見える」
     「『他県で苦戦する中、環境省は千葉を成功のモデルケースにしたいようだ』との声が漏れる。山間部を選定し反発を受けた他県と同じ轍(てつ)を踏みたくないという官僚の思いがうかがえる」。
 同感です。この点について見解をただしたところ、環境省はこう答えました。
     「そんなことはない。評価基準にそって千葉県内でいろいろな場所を評価したところ、2カ所が最高得点となった。その一つは東電千葉火力発電所敷地である。もう1カ所(民有地)は土地利用計画があるということなので、候補地から除外した。千葉火力発電所敷地は土地利用計画がないので、ここを候補地とした」


「自然度は低い」「津波は3mを超えない」

 「東京湾は自然環境がたいへん豊かだ。この点はなぜ考慮しないのか」については、こう答えました。
     「候補地とその周辺は自然環境保全区域などに指定されていない。そのために自然度は低いという評価になった」

 液状化の危険性が高い、という意見についてはこうです。
     「有識者会議の議論において、液状化については技術的な対策が可能とされている」

 大津波の危険性についてはこんな回答です。
     「千葉県の想定によれば、大地震が起きても東京湾の内湾は3mを超える津波は起こらないということになっている。候補地の地盤高は4m以上ある。といっても、候補地に選定したからすぐに処分場をつくるということではなく、詳細調査をおこなう。詳細調査の中で大地震のときに想定される津波の高さも調べ、対策を講じることになる」
 これらの回答については、「机上の想定があてにならないことは福島第一原発事故が証明している」という批判がだされました。
 なお、候補地がコアジサシの繁殖地になっていたことについては、環境省は「認識していなかった」と回答しました。



環境大臣あての申入書


2015年5月14日

 環境大臣 望月義夫 様

千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子
千葉の干潟を守る会 代表 近藤 弘
小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会 代表 小関公平
三番瀬を守る会 会長 田久保晴孝
三番瀬を守る連絡会 代表世話人 中山敏則
三番瀬を守る署名ネットワーク 事務局長 織内 勲
日本湿地ネットワーク 共同代表 辻 淳夫
同 牛野くみ子

指定廃棄物処分場の千葉県内候補地選定に関する申入書

 貴職におかれましては、平素より環境保護対策にご尽力いただき感謝申し上げます。
 私たちは東京湾の干潟・浅瀬の保全にとりくんでいる市民団体です。
 環境省は4月24日、東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質を含む指定廃棄物の処分場建設候補地として東京電力千葉火力発電所の敷地(千葉市中央区)を提示しました。
 私たちは、下記の理由により、この選定は適切でないと判断しています。つきましては、候補地選定を白紙撤回されるよう申し入れます。


  1. 候補地は、今後予想される首都直下型地震や東京湾北部地震によって地盤の液状化や大津波の危険性が非常に高い場所である。環境省は「適切な構造の施設」を建設するとしている。しかし、それが机上論にすぎないことは福島第一原発事故が実証している。事故によって放射能が漏れれば、東京湾は死の海となる可能性が高い。東京湾の漁業は潰滅的な打撃を受け、人口が集中する東京湾岸地域は危険にさらされる。

  2. 候補地から3キロも離れていないところに住宅が密集している。また、候補地のすぐ近くには千葉市が整備した再開発地区があり、防災拠点機能を備える広大なスポーツ公園、商業施設、サッカー場(フクダ電子アリーナ)などに県内外から大勢の来場者が集まっている。地域住民だけでなく、これらの来場者にも不安を与える。
以上











環境大臣あての申入書を手渡す=5月14日




環境省と話し合い




千葉県知事あての申入書を手渡す=5月15日




千葉県の循環型社会推進課と話し合い




千葉市長あての申入書を黒川治喜環境局長に手渡す=5月15日




千葉市の黒川治喜環境局長と話し合い




指定廃棄物処分場建設候補地(東京電力千葉火力発電所敷地)=2015年5月20日撮影




同上







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