都市の緑と景観を守ろう

〜東京高裁判決を受けて「真間山の緑地を守る会」が臨時総会〜



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 市川市真間4丁目の通称「真間山(ままさん)緑地」のマンション建設をめぐる住民訴訟で、東京高裁は6月30日、訴えを却下した千葉地裁の判断は妥当として、住民の控訴を棄却しました。


●緑地保全住民訴訟を東京高裁が棄却

 この訴訟は、「風致地区」などにより高さ10メートルの建築物規制がされていた「真間山緑地」について、市川市が高度利用地区計画を定め、さらにマンション開発を許可したのは違法として、周辺住民が訴えていたものです。

 「真間山緑地」は古刹(こさつ)の弘法寺(ぐほうじ)がある真間山の斜面とふもとの一部です。真間山は、長さ2キロ余にわたってこんもりと繁った森が連なる斜面林で、市川の顔ともなっています。
 この斜面林の一部(旧木内別邸跡地)をつぶして高層マンションを建設するという計画がもちあがったため、「真間山の緑地を守る会」のメンバーらが計画撤回の要請や業者側との話し合いなどをつづけてきました。しかし、業者側が工事を強行したため、住民有志35名が「市川市が行った真間山の開発許可等の取消しを求める裁判」を起こしました。

 市川市を相手に提訴したのは、市が業者側の要望に沿って10mの建物高さ制限を20mに緩和する高度利用地区計画を定め、マンション建設を可能にしたからです。住民有志は、市による高度利用地区計画と開発許可を取り消すよう千葉地裁に提訴しました。
 この提訴が千葉地裁で却下されたため、東京高裁に控訴していました。


●都市の緑と景観を守るために

 「真間山の緑地を守る会」は7月9日、この高裁判決にどう対応するかを話し合う臨時総会を開きました。
 総会では、訴訟に尽力した小関傳六弁護士が高裁判決の内容や「改正行政事件訴訟法」の意義などを話した後、参加者からさまざまな意見がだされました。

    「私たちの訴訟は、千葉地裁で却下され、高裁で棄却された。しかし、住環境を守るために訴えた私たちのおこないは、たいへん意味があったと思っている。裁判所の姿勢は、市民感覚からかなりずれている」

    「今回の問題点の一つは、市川市が開発業者の意向を受け、建物の高さ規制を緩和して高層マンションを建てられるようにしたものだ。こんなことがまかりとおれば、市内の緑や貴重な景観は次々とつぶされてしまう。現に、市川市では、いろんな開発業者があちこちでマンション建設の計画を進めている」

    「裁判をつづけるのは大変しんどいことだ。しかし、このままでは、ほかの緑も伐採され、開発されてしまう。貴重な緑とすばらしい景観を次世代に残すためには、負ける可能性が高くてもやるしかないと思う。全国各地でこんな運動が高まっていけば、裁判所の姿勢を変えることも可能だと思う。泣き寝入りはしたくない」

    「これまでの裁判は、いろいろな問題点があっても、そうした中身を問題にしないまま門前払いにされるケースが多かった。しかし、改正行政事件訴訟法が制定されたことによって、中身をとりあげる可能性がでてきた。また、すでに開発工事が終わったものでも是正できるようになったのではないかと言われている。これを活用し、新たな訴訟を起こそう」

    「市川市は、市内のすぐれた緑や景観を守るという気がまったくない。ゼネコンなど開発業者の利益を第一にしている。市はまた、たくさんの生き物がいて、東京湾の漁協や水質浄化に大きな貢献をしている三番瀬海域をつぶし、人工海浜をつくろうとしている。その提案を広報紙で大々的にした。今後は、これに反対して三番瀬を守ろうとがんばっている人たちなど、たくさんの環境保護団体などと連携することが必要だ」

 こんな意見が活発にだされたあと、今後の対応策を話しあいました。
 以下は、今回の高裁判決にかんする「真間山の緑を守る会」の声明です。

(2005年7月)  





声 明 文



真間山裁判の東京高裁判決を受けての声明文


■住民による訴訟の提起

 市川市が市川の宝 真間山に行った都市計画変更は、「10mの建物高さ規制のある『第一種低層住居専用地域』と『風致地区』の地に、『業者がマンションを計画しているから』という理由で、高さ規制を緩和できる『住宅地高度利用地区計画』を導入する」 という驚くべきもので、これは法の導入規定を空文化させるもので、真間山だけでなく他の都市環境の破壊を先導するものであるとして、3年半前に住民と市民が市川市と市長を告発し、行政不服審査請求に続いて行政訴訟を起こしました。

■一審の判決

 私たちは訴えで、「真間山への地区計画は違法であり無効」そして「開発許可を取消せ」を求めましたが、千葉地裁は前者に対しては「地区計画は不特定多数者に対する規制で特定の個人を対象にしておらず、処分性がなく訴訟の対象にならない」、後者に対しては「開発が終わり、許可の効力はなくなり、もし許可内容に誤りがあれば法に規定する是正命令で正せるから、取消しの訴えの利益は無い」として、共に真間山の実態にあわない最高裁の判例を使って門前払いをし、訴えの内容は審理されませんでした。

■東京高裁における主張

 これを控訴した東京高裁では、都市計画と行政訴訟の学識経験者の応援を得て、地区計画に関しては「処分性に結びつくと考えられる市川市によるマンション計画の事前合意、一人地区への適用、業者の多大の利益受与の他、業者は当初、処分性のあるとされる『総合設計制度』で高さ緩和を計画したが、市は県と相談して処分性が無いとされる『地区計画』に変更しており、これらの点から地区計画には処分性がある」と主張しました。
 また開発許可取消しに関しては、「本事例のように開発許可権者と是正命令権者が同一の場合は、許可が取消されない限り誤りを是正する訳が無いから訴える利益がある。また崖地は開発許可の範囲外だから、事業地の安全性に直結する崖地の安全性が検査されておらず、許可要件に違反している」と主張しました。

■本日の判決について

 しかし本日の判決は、一審と同様、私たちの訴えを全面的に斥けました。地区計画の決定にサンウッドの要望が影響を及ぼした可能性は否定しないものの、決定された地区計画はサンウッドだけに働くものではないから処分性がないとし、実態を考慮しないで最高裁の判例に忠実に従ったものです。
 また斜面地と開発区域は一体性を有しているから、開発区域外だからとして斜面地の安全性の検査をしていない開発許可は違法、との主張に対して、ただ斜面地は開発区域外だからそこの工事も検査も不要と述べるだけで、「一体性を有する」との主張には全く触れず、違法との訴えを斥ける説明にはなっていません。
 このように本判決は従来と同じ行政偏重で、住民の住環境保全の願いに応える点が全く見られず、極めて不当なもので、強い憤りを覚えます。

■今後の対応

 私たちは先に開いた「真間山の緑地を守る会」総会において、「有害な真間山への地区計画を無効にする」という当初の願いが叶えられない限り司法に訴え続ける、という意思統一をしましたが、本日の判決を受けて、7月9日の臨時総会において、弁護士、原告、支援者によって今後の対応を考えることになります。この4月から施行された「改正行政事件訴訟法」は私たちの訴訟に使える可能性があります。
 真間山の事例は開発業者を鼓舞するものであり、残念ながら類似した開発事例が起きてきています。私たちの裁判運動は知られるにつれ、関心と支援の輪が大きく広がっています。市川から発した住環境を守る運動を皆の力で、間違いなく進めて行きたいと考えます。

■今後ともご支援をお願いいたします
 
 この裁判を真正面から受け止めて、ここまで導いていただきました小関弁護士に厚い感謝の意を表させていただきます。そして長期にわたって物心両面からの変わらぬご支援を与え続けて下さる支援者の皆様に深く感謝いたします。
 裁判を支援する内外の腕は次第に太くなっていると思われます。闘いはまだこれからです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。報道関係の皆様も、これまでのご協力に感謝いたしますと共に、今後とも私たちの運動に関心を寄せ、ご支援をよろしくお願いいたします。
 2005年6月30日

真間山裁判控訴人 代表 鈴木 一義
真間山の緑地を守る会 代表 秋元 久枝







東京高裁判決を受けてひらかれた「真間山の緑地を守る会」の臨時総会








市川のシンボルともなっている真間山の斜面林








かつての旧木内家別邸。深い緑に包まれた和洋折衷の由緒ある建物でした。








深い緑に包まれた旧木内別邸跡地は高層マンションに変わりました。市川市が業者側の要望に沿って10mの建物高さ制限を20mに緩和する高度利用地区計画を定め、マンション建設を可能にしたからです。 写真は、マンション工事中の写真です。上の写真にある建物は解体され、敷地内の多くの樹木は伐採されたり、移植されたりしました。








現在の旧木内別邸跡地。こんな高層マンションが何棟も建っています。









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