国立マンション訴訟運動に学び、

 緑と景観を守ろう!

  〜市川で真間山裁判の学習会〜


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 「真間山の緑地を守る会」と「市川緑の市民フォーラム」は2月11日、市川市民会館で真間山裁判の学習会を開きました。参加者は約50人です。
 市川市の真間山(ままさん)は、長さ2キロ余にわたってこんもりと繁った森が連なる斜面林で、市川の顔ともなっています。この斜面林の一部(旧木内別邸跡地)をつぶして高層マンションを建設するという計画がもちあがったため、「真間山の緑地を守る会」のメンバーらが計画撤回の要請や業者側との話し合いなどをつづけてきました。
 しかし、業者側が工事を強行したため、市民有志35名が「市川市が行った真間山の開発許可等の取消しを求める裁判」を起こしました。市川市を相手に提訴したのは、市が業者側の要望に沿って10mの建物高さ制限を20mに緩和する都市計画制度を導入し、マンション建設を可能にしたからです。市民有志は、市による都市計画決定は無効とし、これにもとづく開発許可を取り消すよう千葉地裁に提訴しました。


●真間山の緑を壊すマンション建設を止めさせ、緑の住環境を守ろう!

 学習会ではまず、佐野さんが「真間山の緑を壊すマンション建設を止め、緑の住環境を守ろう!」というテーマで、真間山の緑地保全の経過と現状を話しました。佐野さんは次のようなことを述べました。
 「市川の樹林地はどんどん減り続け、現在は2.3%ぐらいしかない。これは千葉市や船橋市などと比較してもはるかに少ない。そんな中で、真間山の斜面林は、千葉県最大の風致地区であり、歴史的・文化的遺産が市川でもっとも多い場所である。文教地区でもあり、桜の名所ともなっている。まさに市川にとって最も大切な地域となっている」
 「市川市は、都市計画法上の地区計画制度を導入し、これまで建物の高さ制限が10mだったのを20mに緩めた。これは地区計画制度の悪用であり、この方法をとれば、どんな緑も開発が可能になる」  「私たちは、マンション建設に反対する署名を2万4000筆集めて市に提出した。自然や植物の専門家などからも6通の意見書が出された。市の都市計画審議会や市議会、県公園緑地課への働きかけなどもおこなった。そして、県の都市計画審議会に不服審査請求をしたが、残念ながら却下されてしまった」
 「このたびの国立マンション裁判の結果は大きな励ましであり、追い風になっている。真間山と市川の緑を守るためにがんばりたい」


●“市川市民はそんなことをよく許しているな!”

 つぎに、東京都国立市の「東京海上跡地から大学通りの環境を考える会」の石原一子代表と佐藤節子さんが、国立マンション裁判の運動を話してくれました。
 この裁判は、住民の反対や国立市の指導にもかかわらず完成した高層マンションの撤去を東京地裁に提訴したものです。問題のマンションは大学通り沿いに昨年12月に完成しました。1月18日にでた判決は、住民らの「景観権」を認めたうえ、建設した「明和地所」に高さ20mを越える7〜14階の撤去を命じました。
 裁判長はこの地区について「住民が土地利用の犠牲を払いながら70年以上も良好な景観を保ってきた歴史がある」と指摘し、「建築物は並木の高さを超えない範囲で」が守られてきた中で、突出したマンションを「住民の景観の利益を侵害」としました。
 この判決は画期的なもので、たいへん注目されています。全国各地の住民運動にも大きな影響をあたえるものです。
 「考える会」の石原一子代表は、次のように述べました。
     「私たちの思いは、国立の街をきちんとした形で次の世代に残したいということだ」
     「運動を通じて思ったことは、“いけないことはいけない! 悪いことは悪いんだ!”ということである。いろんな立場の方がおられるだろうが、悪いことに対しては立ち向かうという、基本的な気持ちが大切だ」
     「きょうの午前中、真間山のマンション建設現場を案内してもらったが、これはヒドイと思った。“市川市民はそんなことをよく許しているな!”というのが率直な感想である」  「市川と国立とでは状況が少し違っているように思う。国立の場合は、業者(明和地所)が非常に悪質で、住民説明会も開こうとしなかった。市川の場合は、業者ではなく、むしろ行政(市川市)の方が悪質と感じる。市川市長に対し、“あんたは本当に市長さん?”と言いたくなった」
     「市民は本質を見抜く能力をもたなければならない。だれが本当のことを言っているか、誰が住環境などを守ろうとしているかなどを見抜くということだ。市川のこんな大切な場所を守ろうとしないのは日本人の血が流れていないのだとさえ思う」
     「とにかく大切な景観を守ろうとすることが重要だ。市民がつくってきた街であるという思いを裁判官に強く訴えることが必要である」
     「工事が始まったからといってあきらめてはいけない。“継続は力なり!”である。あきらめてはダメだ。勉強会をしたら、前に進まなければならない。市川市のすばらしい環境をぜひ守ってほしい」


●市民がきちんとモノを言い、市を動かすようにしなければならない

 佐藤節子さんは判決の画期的な内容などについてふれたあと、こう述べました。
     「いくら正しくても協力してくれる人が多くいなければ、運動は強くならない。また、広報活動が非常に重要で、読みやすく見やすいものを出していくことが大切だ」
     「行政は頼りにならないし、頼ってはいけない。市民がきちんとモノを言い、市を動かすようにしなければならない。それをしないのは市民の怠慢だ」
     「景観を守る運動は、ちょっとでも気をゆるめると負けてしまう。国立の場合は大学通りの景観を守る運動であり、市川は緑を守る運動だ。思いは同じなので、連携を強め、ともにがんばりましょう」


●提訴の目的は、都市の中の森の価値を認識してもらうこと

 つづいて、「関さんの森」の近況を、「関さんの森を育む会」の関美智子代表と、埼玉県生態系保護協会の堂本泰章事務局長が話してくれました。
 「関さんの森」は千葉県松戸市に残るわずか1.1ヘクタールの屋敷林です。これを将来にわたって残すため、所有者だった関さんが同協会に寄付しました。
 しかし、松戸市が隣接する山林の開発を許可し、宅地開発がおこなわれたため、森の樹木の枯死や倒壊などが進んでいます。
 このため、協会は昨年10月、松戸市を相手に、損害賠償(市が許可した開発によって被害を受けた樹木の治療費を請求)を求める裁判を千葉地裁松戸支部に起こしました。
 関さんと堂本さんは、つぎのように述べました。
     「松戸市は緑の減少にまったく危機感をもっていないし、私たちの保全のとりくみもいっさい助けてくれない」
     「提訴の本当の目的は、都市の中の森の価値を広く認識してもらい、その保全の大切さを訴えることだ」
     「千葉県も里山保全条例を制定するとのことだが、内容をみると、“再生”ということで土木屋を儲けさせる方向になっているように思える。そうではなくて、いま残っている貴重な里山や屋敷林などをいかに残すかが重要だと思っている。なんとしてでも、環境権を認めさせたい」

◇          ◇


 このあと、景観を守ることの意義や市民運動の進め方などについて、活発に討論がおこなわれました。
 感想をいえば、たいへん中身の濃い学習会でした。とくに国立マンション裁判の運動からは多くのことを学びました。何人もの方が同じような感想を述べていたように、とくに石原一子代表からは大きな元気をもらいました。

(2003年2月)  









真間山裁判の学習会








「国立マンション訴訟」で勝訴した「東京海上跡地から大学通りの環境を考える会」の石原一子代表(左)と佐藤節子さん(右)。








かつての旧木内別邸。深い緑に包まれた和洋折衷の由緒ある建物でした。








旧木内別邸跡地では高層マンションの工事が進められています。上の写真にある建物は解体され、敷地内の多くの樹木は伐採されたり、移植されたりしました。









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