高層マンション建設反対は

  社会の不条理を正す運動

   〜市川市でマンション建設問題の講演・交流会〜


トップページにもどります
「ニュース」のページにもどります
「市川・真間山の斜面林」にもどります


 8月23日、「マンション建設問題から考える都市再生と住民」と題する講演・交流会が市川市内で開かれました。
 いま、高層・超高層のマンションがあちこちの住宅地に建てられ、住環境や景観を破壊する現象がすすんでいます。今回の催しは、そうした問題にとりくんでいる市民団体の交流の場としても設けられました。主催は「真間山の緑地を守る会」です。
 講演・交流会の概要はつぎのとおりです。


1.報告 真間山裁判の現状……………………………真間山の緑地を守る会
2.講演 市民が問う「都市再生」〜高層マンション裁判の背景〜
             ……………………ジャーナリスト 小川明雄氏
3.意見交流会
 (1)報告
  ・市川市・真間山マンション建設問題……………真間山の緑地を守る会
  ・国立市・明和マンション裁判
                      ………東京海上跡地から大学通りの環境を考える会
  ・渋谷区西原地区・丸紅高層マンション問題
           …………………………………西原の環境を考える会
  ・横浜市の地下室マンション問題…………………………横浜市民環境議
  ・世田谷区・北烏山6丁目100mマンション問題
                 ……………………………………烏山の環境を守る会
 (2)意見交換


 たいへん中身の濃い講演・交流会であり、多くのことを学びました。とくに印象的だったのは、非常に困難な運動であるにもかかわらず、みなさんが元気ハツラツに活動されていることです。
 現在の法制度のもとでは、高層マンションの建設を中止させることはかなり困難です。国立市の明和マンション反対運動では、東京地裁が東棟20mを超える部分の撤去を命じる画期的な判決をくだしました。しかし、ほかの地域はどこも住民側が苦戦しています。
 ところが、活動報告を聞くと、どの方も一様に、自分たちの活動が社会のゆがみを正す運動になっていることが分かってやりがいがあるみたいなことを述べました。それを快活に言い切ります。これには元気づけられると同時に、すごく感動しました。
 以下、小川さんの講演要旨と各団体の報告を紹介します。


●政財官癒着のもとで大手マンション業者はやりたい放題
    〜小川明雄さんの講演要旨〜

  1.  真間山(市川市)の緑地に高層マンションを建設しているサンウッドは、森ビルの子会社である。  かつてのリゾート法は堤一族(トップは堤義明氏)のための法律だったが、「都市再生法」は森一族(森ビル)のための法律となっている。
     政府の経済戦略会議で都市問題の議論をリードしているのは森ビルの森稔社長である。要するに、さまざまな規制緩和によって、住宅地に高層や超高層のマンションが建てられるようになったのは、森ビルを儲けさせるためのものであった。みなさんはそんな大物を相手にたたかっているのである。

  2.  森ビルは膨大な借金をかかえていて、金を稼ぐためにサンウッドをつくった。したがって、サンウッドが真間山の緑地にマンションを建てるのは、そこで多額の金を儲けようとする目的がある。

  3.  我々も都内で長谷工の高層マンション建設に反対する運動を進めている。長谷工は暴力団とおなじようなことをやる。我々が立てた看板を壊したり、反対住民をケガさせたりすることを平気でやる。我々が調べたら、違法建築が26もみつかった。たとえば、道路幅は6m以上でないといけないのに、6m以下のところがたくさんある。ところが、それらを行政や開発審査会に申し入れてもまったくダメだ。行政は長谷工の手先になっている。

  4.  大手不動産会社は借金を重ねれば重ねるほど安全になっている。借金を増やせば増やすほど銀行もつぶしにくくなるからだ。最近、りそな銀行に2兆円の公的資金が投入された。りそな銀行の最大の借り手は長谷工であり、2兆円のうちかなりの部分は長谷工の債務(借金)免除となっている。これは、森ビルも同じだ。

  5.  マスコミは、こんなことをきちんと報道しない。政財官癒着のもとで、大手マンション業者はやりたい放題をやっている。国民の利益は無視だ。

  6.  マンション建築に関する法律はものすごくたくさんある。だから、普通の人はまったくわからない。しかし、業者の方はそれを知っている。また、業者は暴力団のような連中も使う。さらに、行政も手足のように使う。こんな中で住民が反対に立ち上がると、「地域エゴ」という攻撃を受ける。しかし、マンション建設問題はけっして「地域エゴ」などではない。国民みんなの問題だ。

  7.  マンション建設に反対する団体は、横につながらないと消えてしまう。幸いにして、最近はいろいろな団体が横につながろうとしている。きょうの集会も、そのひとつの事例だ。

  8.  日本の官僚制度はとてつもなくヒドイ。日本の官僚は匿名性を利用してやりたい放題をやっている。法律も勝手に変えてしまうなど、日本の権力を私物化している。

  9.  日本では、ほんのひとにぎりの権力者によって大多数の国民がたいへんなめにあわされている。選挙の際は、みんなが投票に行って自民党以外に投票することが必要だ。


●本当の敵は“巨悪”
    〜国立市・明和マンション裁判の報告〜

  1.  東京地裁が明和マンションの東棟20mを超える部分の撤去を命じる画期的な判決をくだした。しかし、我々に対する業者側の攻撃はすごい。勤務先におしかけ、「お前のところの社員はこんなことをやっている」などといやがらせをする。家族にたいする脅しもやる。このように、マンション業者はウラでは悪らつなことをやる。みなさんも注意してほしい。

  2.  我々の敵は明和地所だけではない。運動を進める中で我々の敵は“巨悪”であることがわかってきた。マスコミは力にならない。しかし、いろいろな団体や人と連携を強め、世論が高まっていくと、住民運動は眼に見えない脅威になる。今後も各地のみなさんと手をたずさえながら活動していきたい。


●住民運動で世の中や行政のおかしさがわかってきた
    〜渋谷区・丸紅高層マンション問題の報告〜

  1.  静かで緑が多く、図書館や小学校の在るこの西原という住宅地に、地上13階(高さ約41m)の巨大な分譲マンションが建設されようとしている。13階という高層ビルは、隣接に住む人はもちろん、さまざまな形で地域住民に、広範囲にわたり影響をおよぼす。

  2.  建つはずのないところに高層マンションが建った。しかし、裁判をとりくむのは非常にむずかしい。いろいろな弁護士さんに相談すると、「道路ができてしまって区に引き継がれるとか、マンションが建ち始めると、ストップするのはむずかしい」と言われる。それで、反対運動に加わっていた住民も抜ける人がでている。

  3.  住民運動を進める中で世の中や行政のおかしさがわかってきた。世の中が変な方向に進んでいるとも思う。今は、「だまっていることが平和」みたいなところもある。しかし、いろいろな人に聞くと、このマンションはおかしいと多くの人が言っている。おかしいことはおかしいと言い、あきらめずにがんばっていきたい。


●負けるとわかっていてもやる
    〜横浜市・地下室マンション問題の報告〜

  1.  これまで、第一種低層住居専用地域など良好な住宅地では高さ制限が10mだった。しかし、規制緩和で、斜面地を削り地形を変えることで15〜30mの中高層マンションが建てられるようになった。それで、法的には地上3階建てでも、斜面下から見ると地上9階というマンションがどんどん出現している。この「地下室マンション」は横浜にかろうじて残された斜面地の緑を破壊するうえに、景観も悪くする。

  2.  住民が運動を起こしているところは、いろいろなことが明らかになっている。しかし、反対運動が起こらない地域は、状況や問題の本質がよく分からず、泣き寝入りを強いられている。業者と行政にいいようにあしらわれている。

  3.  我々は、横浜市内でこの地下室マンションに対する裁判を6件起こしている。現行制度のもとでは、勝利することはかなりむずかしい。しかし、我々は負けるとわかっていてもやる。なぜなら、我々がこんなに痛めつけられていることをきっかけにし、ほかの人も同じ思いをしなければいいという気持ちでいるからだ。不条理なことに対しては闘うことが必要だ。いろいろな地域の人たちとネットワークを組んでやっていきたい。



●税金をタダ取りして超高層マンションを建設
    〜世田谷区・北烏山6丁目100mマンション問題〜

  1.  大京が30階建ての100mマンションを建てようとしている。大京の主要取引銀行はUFJ銀行だ。この銀行に1兆5000億円の公的資金が投入され、大京は4100億円もの債務を免除された。つまり、借金の棒引きだ。なんのことはない。住宅地の真ん中に建つ超高層マンションの原資は我々の税金をタダ取りということだ。そんな大企業がもうけのために地域の環境を食い物にする。ここに100mマンション建設の本質的な問題がある。

  2.  大手マンション業者は、借金を重ねてマンションを建て続けない限りつぶれるという側面ももっている。したがって、当事者たちは必死だ。

  3.  はっきり言って、裁判闘争で勝利することは困難だ。しかし、そういう社会状況の中で運動していることや、社会のゆがみを正す運動となっていることを自覚すると、やりがいがある。

(文責・千葉県自然保護連合事務局)  









たいへん中身の濃い講演・交流会でした








ジャーナリストの小川明雄さん









★関連ページ

このページの頭に戻ります
「ニュース」のページにもどります
「市川・真間山の斜面林」にもどります

トップページ | 三番瀬 | 産廃・残土 | ニュース | 自然・環境問題 | 房総の自然 |
環境保護団体 | 開発と行財政 | 催し物 | 自然保護連合紹介 | 書籍・書評 | リンク集 |