一宮海岸のヘッドランドで県を質す

〜千葉県議会県土整備常任委員会〜




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 (2010年)6月定例県議会の県土整備常任委員会が14日開かれ、川本幸立委員(市民ネット・社民・無所属)と三輪由美委員(共産党)が一宮海岸(南九十九里浜)のヘッドランド(人工岬)問題をとりあげました。


■「協議会で説明し、工事を進めていきたい」

 両委員は、県が侵食対策として進めているヘッドランドが環境破壊などさまざまな問題をひきおこしていることを指摘しました。そして、工事を凍結し、官民協議会(「一宮の魅力ある海岸づくり会議」)の議論を今後の侵食対策に反映させることを求めました。
 これに対して県は、「ヘッドランドは必要と考えているので、それを協議会で説明し、工事を進めていきたい」と答弁しました。
 官民協議会は6月27日に第1回の会合が開かれます。1回目の議題は、会長・副会長の選出や今後の進め方などです。

 以下は、常任委員会における主なやりとりです。


■協議会の総意を今後の事業に反映させるべき

◇川本幸立委員
 「一宮の海岸環境を考える会」が4万4000の署名を添えてヘッドランド工事の一時中止を要望した。そこで次の3点について質問したい。
  • 「考える会」の要望内容への対応をどう考えているのか。
  • 「一宮の魅力ある海岸づくり会議」は、今後の工事とどのように関係するのか。
  • アカウミガメの上陸・産卵やミユビシギ(水鳥)に影響がでているという指摘がされているが、この点についてはどうか。

◆河川整備課長
 「考える会」から署名を添えて要望書が提出された。その内容は、住民に対する説明と意見交換の実施、海岸利用者への配慮と景観を保つこと、などである。
 これらへの対応だが、県と町がいっしょになり、一宮海岸を魅力あるものとするため、県、町、地元住民、(サーファーなどの)海岸利用者、学識経験者などが一堂に会して話し合う場として「一宮の魅力ある海岸づくり会議」を設立することにした。
 この会議とヘッドランド工事の関係についてだが、会議の事務局は一宮町と県の長生地域整備センターが務める。設置の目的は、防護、利用、環境を考慮した侵食対策について協議を進め、魅力ある海岸をつくることである。1回目の会合は6月27日に開催する。
 今後のヘッドランド工事については、一宮海岸の侵食対策として引き続きヘッドランドの整備をおこなうとともに、養浜事業を実施したいと考えている。
 アカウミガメとミユビシギの状況だが、アカウミガメについては平成17年度に一宮海岸において産卵が確認されている。しかし、平成18年度以降は確認されていない。ミユビシギの生息状況は把握していない。

◇川本委員
 「考える会」の要望書では、住民の納得が得られるまでヘッドランド工事は延期することを求めている。今後の工事については「魅力ある海岸づくり会議」の議論の様子をみることとし、工事は延期するということでよいか。

◆河川整備課長
 「魅力ある海岸づくり会議」の中でヘッドランドの必要性を説明し、工事を進めることとしたい。

◇川本委員
 「魅力ある海岸づくり会議」の議論の内容は尊重するということでよいか。

◆河川整備課長
 ヘッドランドは必要と考えているので、それを「魅力ある海岸づくり会議」で十分に説明したい。

◇川本委員
 ヘッドランドの効果については疑問がだされている。完成している2号と3号の間は、砂浜の侵食がはげしくなっている。一方、近くの太東海水浴場はヘッドランドがないのに侵食がみられない。こういうことを考えると、ヘッドランドの効果をきちんとみきわめることが必要ではないか。
 課長の答弁からみてもわかるように、アカウミガメやミユビシギの調査も不十分だ。生態系に関する専門家も「魅力ある海岸づくり会議」に加わってもらい、ヘッドランドの効果を検証することが必要だと思うがどうか。

◆河川整備課長
 「魅力ある海岸づくり会議」には九十九里浜自然誌博物館の秋山章男館長にも加わってもらうよう打診している。

◇川本委員
 秋山章男先生にはぜひ入ってもらい、生態系への影響もしっかり調査してほしい。なにがなんでもヘッドランド工事をやるということではなく、「魅力ある海岸づくり会議」のみなさんの総意を今後の事業に反映させてもらいたい。


■アカウミガメの調査を県独自でやるべき

◇三輪由美委員
 私たちも現場をみせてもらったが、ヘッドランドは非常に疑問である。したがって、真剣な議論と見直しが必要だと思う。
 先ほどのやりとりを聞いていると、ヘッドランドは必要と認識しているので「魅力ある海岸づくり会議」で説明をして工事を進めたい、という答弁がされた。
 しかし、4万を超える署名が提出されている。一宮海岸は、年間50万人ものサーファーが訪れ、サーフィンのメッカといわれている。そういうサーファーから、ヘッドランドについて疑問の声が強くだされている。したがって、いったん工事を凍結し、地元のみなさんといっしょにゼロから改めて考え直していくことが必要だと考える。そういう視点から、きょうはアカウミガメについてだけ質問したい。
 アカウミガメの問題については、元東邦大学教授の秋山章男先生(九十九里浜自然誌博物館館長)から話を伺った。そこで、アカウミガメの調査を県として独自にやっているのかお聞きしたい。

◆河川整備課長
 アカウミガメについては調査していない。

◇三輪委員
 この点は「魅力ある海岸づくり会議」でも議論されると思うが、アカウミガメは絶滅危惧種に指定されており、非常に大事な生物である。県も生物多様性保全の重要性をうたっており、県として独自に調査を検討してもらいたい。

◆河川整備課長
 アカウミガメは一宮町で調査すると聞いているので、県としては考えていない。

◇三輪委員
 産卵するためにやってきたアカウミガメが、ジャカゴ護岸(カゴマット)に何度も何度もぶつかって、結局は海にもどっていった足跡の写真を見せてもらった。そういう状況をみると、いったい誰のための事業なのかと思う。アカウミガメなどの生き物についても配慮してほしい。


    〈注〉以上のやりとりは、県自然保護連合事務局がメモをもとにまとめたものです。













一宮海岸(南九十九里浜)で建設中の人工岬「ヘッドランド」

ヘッドランドがほぼ完成している2号と3号の間は、未完成のところ(たとえば9号
と10号の間)や工事対象外(10号の手前の海岸)よりも侵食が激しくなっている。








ヘッドランドがほぼ完成している2号と3号の間は侵食が加速。(写真は2010年2月時点)




整備中のヘッドランド




ほぼ完成した2号と3号の間は、未完成や工事対象外よりも侵食が激しい。
向こう側に見えるのは2号ヘッドランド。手前はコンクリートの緩傾斜護岸。




ジャカゴ(蛇籠)の護岸。鉄線で組んだ籠(かご)に砕石を詰め込んである。景観や生態系を
破壊するばかりでなく、切れた鉄線で子どもが大ケガをしたこともあり、きわめて危険である。




産卵のために何度も上陸を試みたアカウミガメの足跡。ジャカゴ護岸に阻まれて産卵
を断念し、海へ戻っていった。(九十九里浜自然誌博物館の秋山章男館長が撮影)




コンクート防潮堤の倒壊を防ぐため、防潮堤の前にテトラポットが置かれ、アカウミガメの上陸や産卵を
拒んでいる。向こう側に見えるのは9号ヘッドランド(工事中)。すさまじい環境破壊である。




県が設置した看板。ヘッドランド工事によって立入禁止や海水浴禁止の場所が増えた




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