九十九里浜ヘッドランドに疑問相次ぐ
〜一宮の海を考える集いに140人〜
第2回「一宮の海を考える集い」が4月10日、一宮町中央公民館で開かれ、千葉県が進めている「ヘッドランド(人工岬)」工事について疑問や見直しを求める声が相次ぎました。集いは町が主催したもので、住民など140人が参加しました。
■ヘッドランドが侵食を加速
県は、1980年代後半からこの工事を進めています。錨(いかり)の形をしたT字型のヘッドランドは、大きな石やコンクリートでつくられた消波(しょうは)ブロックを組み合わせてできています。これが10基も工事中なのです。
工事の目的は海岸の侵食(侵食)対策です。しかし、ちっとも侵食対策にならないばかりか、完成した場所では侵食がいっそうはげしくなっています。それは、未完成の場所と比べれば一目瞭然です。
また、生態系への影響も大きく、景観も台無しです。このままでは、観光客やサーファーのほか、町への移住者が減少し、地域への経済的打撃も危惧されます。
そのため、地元住民の有志が今年2月に「一宮の海岸環境を考える会」を結成し、工事の一時中止と見直しを求める署名を短期間で4万4000筆も集めました。
今回の集いはこういう背景のもとで開かれました。
■このままでは魅力のない海岸になる
集いではまず、ヘッドランドにかかわってきた宇多高明氏(日本大学理工学部客員教授、財団法人土木研究センター審議役)と清野聡子氏(九州大学大学院准教授。「千葉東沿岸海岸保全基本計画」策定委員)が、ヘッドランド工事のいきさつや現状などを報告しました。
そのあと、2人と参加者の間で質疑応答です。15人がヘッドランドについて質問や意見をだしました。こんな意見です。
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「ヘッドランドによって、砂浜の侵食がさらに進んだ。景観や自然環境を破壊しないで海岸の侵食を防止する対策はほかにないのか」
「ヘッドランドをいっきに10基もつくろうとしたところに問題がある」
「ヘッドランドがすべて完成するとサーフポイントが消滅してしまい、サーファーにとって魅力のない海岸になる。すでに、一宮海岸でサーフィンを楽しんでいた人がほかの海岸へ移るという状況もうまれている」
「一宮町は“波”が大きな財産になっている。波を求めて大勢のサーファーがやってくるため、コンビニやレストランなどが数多くあり、町の経済や財政にうるおいをもたらしている。また、サーフィンの世界大会が何回も開かれている。それは、それだけ良い波があるからだ。事業のやり方をぜひ見直してほしい」
「隣の太東海岸(太東海水浴場)では、ある人が漁網やロープを使うことによって砂浜の侵食を防いだり、安定させている。そういう方法も検討すべきだと思う」
「コンクリートやジャカゴ(蛇籠)の護岸がつくられたため、アカウミガメの上陸や産卵が激減している。そういうモノ言わぬ生物のことも考えてほしい」
■不満の声も
ところが、質疑応答の司会は宇多氏がつとめ、しかも、ほとんど宇多氏が答弁するのです。ヘッドランドの事業者である県(河川整備課と長生地域整備センター)の職員はだまったままです。
宇多氏の答弁も、自分がヘッドランドの提唱者であるためか、ヘッドランドの肯定や言い訳、スリカエ答弁に終始です。そのため、参加者からは「宇多氏の答弁は事実と違う点やごまかしが多かった」「なぜ県は答えないのか」「これではガス抜き集会ではないか」などの不満がだされました。
■官民共同の協議会を立ち上げ
集いの最後にあいさつした玉川孫一郎・一宮町長は、近いうちに官民共同の協議会を立ち上げ、海岸のあり方を検討すると表明しました。協議会でさまざまな意見をだしてもらい、魅力ある海岸づくりをめざすそうです。委員は海岸利用者・町民の代表者や学識経験者などで構成し、会議は公開するとのことです。
協議会に注目したいと思います。
140人が参加した第2回「一宮の海を考える集い」
一宮海岸(南九十九里浜)で建設中の人工岬「ヘッドランド」
ほぼ完成している2号と3号の間は、未完成のところ(たとえば9号と10号の間)
や工事対象外(10号の手前の海岸)よりも砂浜の侵食が激しくなっている。
ヘッドランドがほぼ完成している2号と3号の間は侵食が加速。(写真は2010年2月時点)
工事中のヘッドランド
★関連ページ
- 南九十九里浜のヘッドランド工事は見直しへ〜第2回「一宮の魅力ある海岸づくり会議」(2010/9/19)
- 一宮海岸のヘッドランドで県を質す〜千葉県議会県土整備常任委員会(2010/6/14)
- 「官民協議会で合意形成をはかる」〜九十九里浜のヘッドランドで県と交渉(2010/4/26)
- 目に余る九十九里浜の惨状〜ヘッドランド(人工岬)工事の現場を見学(2010/4/3)
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