金権政治家のハマコーが人気タレントに

〜浜田幸一元代議士〜

開発問題研究会



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 ハマコーこと浜田幸一元代議士(73歳)の借金地獄が話題になっています。
 発売中の『週刊新潮』(2002年4月18日号)によると、ハマコーは次男と二人で巨額の借金を抱えて四苦八苦しているとのことです。
 ハマコーの借金は10億円以上、次男の敏之氏(43歳)の借金は49億円におよぶ。浜田親子の借金地獄のために、代議士稼業を継いだ長男の靖一氏は、地元の木更津市の事務所を追いだされた。ハマコーは街金融などから借金しまくり、担保に差し出した愛人宅も競売にかけられてしまった──などと書かれています。


 テレビに引っ張りダコ


 ところで、私たちが以前から問題にしているのは、そんなハマコーをテレビ局がバラエティ番組に引っ張りダコにしていることです。フジテレビの「笑っていいとも!」をはじめ、テレビにひんぱんに出演しています。CMにも起用されています。そのため、ハマコーはすっかりお茶の間の人気者になっており、「女子高生にも大人気」(同誌)といわれています。


 「暴力と利権を一身に担った保守政治の人格的表現」


 しかし、ハマコーは、ヤクザ議員として千葉の埋め立て開発などで暴利をむさぼった人物です。たとえばルポライターの鎌田慧氏は、ハマコーについて、「暴力と開発と利権を一身に担った保守政治の人格的表現ともいえる珍重すべき存在」とし、つぎのように書いています。
     「地元のヤクザ組織である石崎一家(稲川会系)の舎弟で、傷害罪で逮捕歴のある浜幸は、富津町町議から、1963年に県議、69年に代議士と『男の階段』を登りつめてきた。開発から湧き出るアブク銭が浜幸を大きくしたのである。彼の頭の回転の早さと度胸は賭場の下足番から計算係としての『中盆』程度の出世でけっして終わらせるものではなく、造成地払い下げの仲介、君津地区後背地の『地揚げ』(転売)、埋立て入札での『談合』の根まわし、など、開発利益をむさぼらせたのだった」
     「市原地区の菅野儀作、君津地区の浜田幸一。友納知事は、これらの地元の県議(ボス)の力をかり開発をすすめた。京葉コンビナートが完成して、この3人ともに国会議員となったのが金権政治を象徴しているようである。とりわけ、浜田幸一は、広域暴力団・稲川会舎弟、児玉誉士夫書生、小佐野賢治代理人など、暴力と開発と利権を一身に担った保守政治の人格的表現ともいえる珍重すべき存在である」(鎌田慧「房総半島──腐食の軌跡」『世界』1981年10月号)


 二足のワラジをはいた代議士


 君津郡富津町(現在の千葉県富津市)で生まれたハマコーは、小さいときからヤクザの石崎一家にあずけられ、そこから旧制の木更津中学(現在の県立木更津高校)に通いました。

 中学の高学年のときは、すでに無法者・狂暴者で有名だったといわれています。たとえば、いつも首に自転車のチェーンをかけて町をゴロゴロし、気分次第で通りかかりの者に打ってかかったりナイフで刺すという話がたくさんありました。
 ルポライターの鈴木治氏によれば、「敗戦後の着る物もないころ、この町に住むある公務員が、新しい外套を着て総武線の電車に乗っていたら、運悪くハマコウに出会い、オーバーをはぎ取られてしまった。当時その人は肺を患っていたが、外套なしで寒い夜道を歩いて帰ったため、肺炎を併発して、間もなく死んでしまった」というようなエピソードが富津や木更津にはいくらでも残っている、といいます(『文化評論』1980年6月号)

 浜田氏とヤクザとのつながりができたのは中学卒業前後といわれています。ある人物辞典には「20代で暴力団幹部となる」と記されているそうです(『週刊新潮』1992年11月12日号)

 ハマコーは1952年、ヤクザ仲間と長野県小諸市へ出かけて映画館へなぐり込みをかけて映写技師を短刀で刺し、奥多摩刑務所で服役しました。仮釈放で千葉へ帰った浜田氏は1955年、青年団運動を足がかりにして富津町の町会議員に初当選しました。しかし町議当選後も、無鉄砲性や無法性は少しも変わりませんでした。
 『追跡・湾岸開発』(朝日新聞千葉支局)は、「いったん決まった議案が、浜田が演壇に座り込んで頑強に反対したため、採決がひっくり返ってしまったこともあった」と書いています。
 また、「役場で美人ナンバー・ワンといわれた女性職員が、浜田氏からしつこく追い回された」とか、「昼休み、彼はドンブリ飯を箸でかきまぜながら町役場の事務所に下りてきて、立ち食いをしながら職員とワイ談をしたり、女性職員をからかったりする。そのうち、役場ぐるみで毎晩賭けマージャンをするという悪習ができてしまった。みんな浜田に誘われた」(前出『文化評論』)などという話もたくさんあります。

 町会議員とヤクザの二足のワラジをはいた浜田氏は、君津郡の青年団長、千葉県の青年団連合会副会長と、着々と地歩を固めました。その理由は、「抜群の行動力」を発揮したことと、ポストを得るために要所要所に酒などを配ったことです。

 1963年、県議選に立候補し、当選します。選挙では“実弾”をふんだんにばらまきました。そして1969年、念願の代議士の座を射止めました。衆議院選挙に4期連続当選した後、「ラスベガス事件」で一時浪人生活を送り、83年の総選挙で再び当選しました。
 国政では、衆院大蔵委員会理事、農林政務次官、防衛政務次官、自民党国対副委員長、建設委員長、党副幹事長などを経て、自民党千葉県連会長や衆院予算委員長の要職もつとめました。


 埋め立て開発利権などで巨利を得る


 ハマコーは、富津市の神明山や砲台山、そして四街道市、八千代市などの土地ころがしで巨利を得ました。(そのいきさつは、前出『追跡・湾岸開発』などにくわしく書かれています)
 また、県内のさまざまな開発に積極的にかかわり巨額のリベートを得ました。たとえば、1980年の県企業庁の富津埋め立ての工事では、工事関係者の間で「(浜田が)懐に入れたのは3000万円だって話だ」と公然と語られていたことを『朝日新聞』(1980.5.16)が報じています。

 東京湾アクアライン(東京湾横断道路)についても、たとえば1990年、横断道工事の安全確保のために海上交通の整理をおこなう警戒船業務を受注した会社の役員に浜田代議士の公設第二秘書と元運転手が名前を連ね、月額30万円の報酬を得ていたことが報道され、問題となりました。
 『サンデー毎日』1990年2月11日号は、「東京湾横断道路の建設工事には、巨大利権が渦巻いています」と言うジャーナリストの話とともに、横断道工事と浜田氏のかかわりについての地元政界関係者の話を次のように紹介しています。
     「地元の千葉県木更津市や富津などでは、氷山の一角という見方が支配的です。なにしろ浜幸を通さなかったら、東京湾横断道路の千葉県側工事は何ひとつ進まない。各企業の“富津参り”はものすごいですよ」


 ハマコーをモデルにした小説
  〜大藪春彦著『黒豹の鎮魂歌』〜


 故・大藪春彦氏のハードボイルド小説『黒豹の鎮魂歌』(3部作、徳間文庫)は、千葉の埋め立て開発をめぐる利権やヤクザ代議士(すなわちハマコー)をモデルとしています。あらすじはこうです。
 主人公の新城彰の実家は千葉の君津の浜で漁業をやっていました。そこに巨大企業の「九州製鉄」が進出することを決めました。その経過を著者はこう書いています。
     「昭和28年の川鉄千葉製鉄所の進出をキッカケとし、京葉工業地帯への巨大企業の進出は、32年に三矢不動産が県に替わって埋立て工事費や漁業補償金を立替え払いする協定が出来てから、急ピッチとなった。漁民の海は次々と大企業に奪われていった。政財界に思いのままに動かされる県は、漁民たちに高圧的な態度でのぞんだ。昭和36年、マンモス企業九州製鉄も、どんなに公害を出しても県も町も文句を言わぬ京葉工業地帯に進出することを決めた」
 九州製鉄の進出は、新城一家に悲劇をもたらしました。
     「新城家が加入していた漁業組合の会長は、熱海に本拠をもつ広域組織暴力団銀城会の千葉支部最高幹部の一人であり、県会議員で県会土木常任委員もしていた小野徳三(通称・小野徳)であった」
     「(小野徳は)町会議員を振りだしに利権あさりで得た金を政界にばらまいて、当時でも県会の実力者にのしあがっていたのだ。小野徳は、九州製鉄君津製鉄所の従業員用食堂の経営を彼の一手に任されるという利権と引き替えに、漁業組合の補償を法外に安く九鉄と県とのあいだで決めた。組合員の大半は反対したが、小野徳には銀城会の暴力というバックがついていた。しかも、組合員には小野徳から借金している者が少なくなかった。小野徳から、今後は九鉄の守衛や食堂の従業員として傭ってやるという約束をとりつけた、と言われると、反対の声は鎮まった」

 新城の父はノリとアサリの漁業権放棄に対する補償金として100万円をもらった。しかし、巧妙な手段でバクチにさそわれ、気がついたときには補償金をまきあげられ、さらに300万円の借金を背負っていた。父はあせってますますバクチにおぼれ、ついに小野徳からの借金が1000万円を超えたとき、妻と新城の二人の妹も道連れにして自殺をしてしまった。新城彰は、一家の命を奪った連中へ復讐するため、射撃や拳法、ナイフ使いなどの腕を磨いた。そして、「銀城会のヤクザから千葉県議員に転じ、漁民たちを食いものにして国会議員にのしあがった」小野徳への復讐を果たす。その際、小野徳にいろいろと白状させている。京葉工業地帯に進出してきた大企業と保守党政治家が持ちつ持たれつの関係で荒稼ぎしていることなどである。その後、新城は千葉の開発で利権をむさぼっている政治家やヤクザを次々と殺していく。

 以上があらすじです。本書には、浜田幸一代議士をはじめ、自民党副総裁川島正次郎や幹事長田中角栄、岸信介首相、右翼の大ボス児玉誉士夫、政商小佐野賢治、友納武人千葉県知事、八幡製鉄(現在の新日本製鉄)、三井不動産などとみられる人物や企業がぞくぞくと登場します。そして、日本の権力者たちの金権腐敗のカラクリと実態をフィクションの形でえぐりだしています。


 モラルハザードの象徴


 以上がハマコーの実像です。彼は、ヤクザの手法を政治の世界にそのまま持ち込み、しかも議員という地位を最大限に利用して利権あさりをくりかえしてきました。無法者であると同時に、典型的な金権政治家です。
 テレビ局は、そうしたことを知っていながら、バラエティ番組などに引っ張りダコにしているのです。これを「モラルハザードの象徴」といったら言い過ぎでしょうか。

(2002年4月)








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