■初代代表・石川敏雄さんを偲ぶ

石川敏雄先生の思い出


千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子



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 石川先生がお亡くなりになって24年になる。先生の思い出というと、千葉大学の先生というより自然保護の先生と言った方がぴったりくる。その活動は、千葉の干潟を守る会をはじめ、千葉県自然保護連合(前身は房総の自然を守る会)、千葉県野鳥の会、ゴルフ場問題千葉県連絡会、残土廃棄物問題千葉県連絡会、サヘルの会など、数えきれないくらいだ。その一つひとつに全力を注いでいた。あの細い体のどこにそんなエネルギーがあるのかと思うが、精力的にこなしていた。

 その根本には、農を国の本と考えていたことがある。今どきちょっと古いかなと思われていたようだが、農業と自然は切り離すことができない。すべてのものを育てるのも自然であって、人が育つのも自然と風土である──。これが持論だった。風土が人を育てるのだと。

 また、ものを大事にすることでも知られていた。年中、ビニール袋をもってゴミ拾いをまめにしていた。実は私が初めて飼った猫のモンちゃん。それは、先生が園生市民の森でゴミ拾いをして5匹拾ってきたうちの1匹を私が飼ったものだった。先生は、生き物を捨てるとは何事か、と怒っていた。時にきれいなボールペンを「拾ったんだよと」と見せびらかした。

 政府の介入で教科書が書き換えられるという教科書問題が起きた。千葉大学でもそれに関する講演がおこなわれた。先生も主催者の一人に名を連ねていた。

 こんなこともあった。私は、公民館の教育に関する講座に参加していた。その講座に、声をかけてもいない右翼の男性がやってきた。「自分の知り合いの男性にも声をかけてよいか」と言う。困ったなと思っていたところ、「あなたはなんでこの場にいるのだ。お帰りください」と先生が一喝してくれた。「牛野さんが困っていたので思わず言ってしまった」と。

 御宿にゴルフ場をつくるという話がもちあがった。漁民は、ゴルフ場から海に流入する農薬を心配した。農薬が水中に入っても潮流の関係で影響はない、と業者は言う。先生は専門のリモートセンシング(離れた位置から観測する技法)を活かし、業者の言い分と反対のことも起こることをランドサットが撮影した写真で示した。やはり素晴らしい教育者だったのだ。

 忘れられないひとつに、先生のサンドイッチがある。食パンにバターを塗り、その上に紅ショウガを載せたものだ。意外な組み合わせなのだが、これが不思議とおいしかった。既成概念にとらわれない自由な発想がそこにあった。
(2021年3月)




オーストラリアのブリスベンで開かれた第6回ラムサール条約締約国会議にNGOとして参加。
右端が石川敏雄さん。左端は福士融さん、その右は牛野くみ子さん=1996年3月



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