七里川渓谷と追原ダム計画




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●「七里川渓谷」とは
 
 七里川渓谷は、君津市の小櫃川源流域にあり、千葉県内随一の豊かな自然環境や渓谷美を形成しています。
 この付近の黄和田畑から四方木地区にかけては、東京大学演習林なども広がり、貴重な動植物の宝庫となっております。
 氷河期の名残とされるヒメコマツ、モミ、ツガ等の自然林や原生林、またフサザクラ、ケヤキ、クマシデなど、野鳥ではヤマセミ、オオルリ、ヤブサメ、センダイムシクイ、ハイタカ、オオタカ、水生動物ではウズムシ、カゲロウ、カワゲラ、トビゲラ、ヘビトンボ、ギバチ、カジカガエル、サワガニ、蝶類ではオオムラサキ、ミドリシジミなど枚挙に暇がありません。
 

 
 
●七里川渓谷をつぶすダム建設計画
 
 千葉県は、この七里川渓谷をつぶしてダム(仮称「追原ダム」)を建設しようとしています。
 ダムが建設されれば、貴重な動植物と渓谷美をもつ七里川渓谷が消滅します。
 また、ダム建設により、小櫃川の下流域、木更津市で汲み上げられ供給される木更津、君津、袖ケ浦、富津、市原、千葉市民の水道水としての水質の低下も心配されます。さらに、建設費が260億円と試算されていることから、水道料金の値上げなどの跳ね返りも懸念されるところです。
 
 県はダム建設の目的を水需要の増加と治水のためと説明していますが、周辺人口はむしろ減少傾向にあり、各市は将来人口予測の下方修正をしているところです。また昭和45年(亀山ダムができる以前)以来、目立った洪水・渇水は発生しておりません。そのようなことから、これは全国的に発生している無駄な公共工事との声も多くあがっております。
 
 
 
●自然保護団体がダム建設反対運動
 
 
 このようなことから、千葉県自然保護連合や小櫃川の水を守る会、追原を歩く会など、いくつかの市民団体が、県にダム建設反対を訴えています。これをさらに県民全体に広げていこうと、これらの団体が呼びかけて、昨年(1998年)11月、「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」(通称「七里川渓谷を守る会」)が結成されました。
 今後は、この問題を広く県民に伝え、思いを同じくする個人・団体と交流しながら大きな輪をつくり、ダム建設計画が廃止されるまで、千葉県や関連団体に要請していくことを主眼に活動していくことにしています。
 
 
 
●ダム建設中止を求める県自然保護連合の要請書
 
 
 
小櫃川上流域「追原ダム建設計画」の中止を求める要請書(1998年2月27日提出)


 千葉県知事  沼 田 武 様

千葉県自然保護連合
代表 岩 田 好 宏


 私たちは、先般新聞紙上で、また千葉県矢郡川・片倉ダム建設事務所発行のパンフレット等により、小櫃川上流城の七里川渓谷における追原ダム建設の計画を知りました。
 同渓谷一帯は、養老川の梅ヶ瀬渓谷などとともに、千葉県でも有数の渓谷美の地域であり、初夏の新緑期、秋の紅葉期には、多くの県民が訪れて、その自然美を楽しんでいます。また、この一帯は、イロハカエデ・ケヤキ林やフサザクラ林など渓谷特有の急峻な地形のところに成立する植生など優れた自然環境がみられるところでもあります。こうした自然環境がダム建設にともなって消失することは、千葉県にとって重大なことです。さらに、小櫃川の河口域には、東京湾最大の、数少ない自然のままの塩湿地帯、干潟がみられ、各種の鳥類が飛来するなど、その優れた自然環境の実態は、これまでの千葉県による継続的な調査、あるいは先の緊急調査によって明らかにされているところです。その保全については、千葉県のみならず全国的に、また世界的に注目されています。それらは、これまで潮の流れや波による土砂の流失と上流城からの供給のバランスの上で維持されていましたが、もしダム建設が実現されるならば、同河口域への土砂の供給が著しく減少して、土砂の供給と消失のバランスが崩れ、河口域の塩湿地、干潟、海岸域の自然環境が壊滅的な打撃を受けることは十分予想されることです。
 また、ダム建設は大幅な水質低下をきたします。1995年に君津市、木更津市、袖ケ浦市の三市において小櫃川水系を中心とする水道水源保全条例が制定されました。
 こうした自然環境保全、地域住民の生活にとって重大な影響を与えると予想される今回の小櫃川上流域におけるダム建設の計画は、直ちに中止し、千葉県がこれまで基本方針としてとられてきました自然環境保全の一環として、ぜひとも同地城の自然環境保全に一層ご尽力くださいますことを要請します。
 

紅葉の七里川渓谷  1998年11月29日撮影

 
 
●紅葉の七里川渓谷観察会に150人が参加
 
 昨年(1998年)11月8日に「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」(「七里川渓谷を守る会」)が結成され、同会の第1回行事として11月29日(日)、紅葉真っ盛りの七里川渓谷の観察会がおこなわれました。
 午前10時20分、JR久留里線の上総亀山駅前に集合した参加メンバーは150人。佐野今朝雄・同連絡会代表のあいさつなどがおこなわれたあと、水生昆虫・両生類、植生、景観、野鳥、けもの、写真・絵画の6つのグループに分かれ、車に分乗して出発しました。
 以下は、参加者の感想の一部です。
 
 
■追原ダムの建設には絶対反対
 
 紅葉がとてもきれいでした。自然に育まれた樹木が湖底に沈むことを考えると、樹木の悲鳴が聞こえるような気がします。
 地球は人間だけのものではありません。鳥や木やけものや草木それぞれが分かち合って生きていけるものです。川面をのぞくと、自転車が数台固まって落ちていました。一方には、冷蔵庫も捨ててあり、日本人の悪いくせだと思います。
 今、君津4市は、水需要の急増はないと私は思います。かずさアカデミアパークは矢那のダムで十分まかなえるとの回答があるそうです。水を汚さないできれいな水を使うようにすべきです。森林は水をきれいにする働きをもっています。 これ以上自然をこわして何のよいことがありましょうか。追原ダムの建設には絶対反対します。ゼネコンの恐ろしい力に負けないようにがんばりたいと思います。また、現在はあまりにもゴミの量が多すぎます。この問題もまた、再考の問題だと思います。

(景観グループ参加者)

 
■サルの生態などを学習でき、貴重な体験であった
 
 直井さんのリードによって、発信器をつけた蔵玉群のサルを追跡するという、まさに、フィールドワークを体験しつつ、房総のサルの生態、農業とサルの関係、サルの食文化などについて学習できた。じつに貴重な体験であった。サルはついに発見できずに終わったが、それはそれでよし。
 滝原地区で、七里川の紅葉を愛で、往復1時間ほど山歩き(ケモノ探索)に入った。七里川は絶対に守らなければならない。こんな美しい紅葉が眺められ、生き物がいるのだから。

(けものグループ参加者)

 
■七里川はすばらしい
 
 『ちば民報』で知り、千葉市からバイクで駆けつけました。
 先週も猪ノ川林道を歩きましたが、演習林内ストップで、やむなく引き返したりしました。今週は、滝川から小仁田への林道歩きができ、次回は小仁田→猪ノ川コースを歩こうかと思っています。
 七里川はすばらしいところです。三石の下の笹地区側のダムを先日見ましたが、みるも無惨な自然の破壊だけが残っていました。こんな姿に七里川はしたくないとつくづく思います。
 
 
■千葉県が誇りとすべき景観
 
 素晴らしい渓谷美に感激しました。養老渓谷の梅ヶ瀬渓谷へは何回も行っていますが、その上流にもっと素晴らしいところがあることを知りました。千葉県が誇りとすべき自然景観だと思います。
 ダム建設などもってのほかです。休耕田を増やそうとしている今、何のためにダムが必要なのか? たとえ、何らかの理由を並べても、この自然はとりかえすことはできません。
 自然と先人の知恵を知るいい勉強会に参加したことを感謝いたします。

(景観グループ参加者)

 
■楓の巨木にはうたれた感じ
 
 紅葉が見事でした。川もすばらしかった。吊り橋を渡って追原に行く道がなつかしい道でした。追原のカエデ(「写真をとるな 私有地」の立て札はちょっと気になりましたが、しかたありません)の巨木にはうたれた感じがしました。
 実行委員の方々の案内も見事でした。この川と山と道を守らなければ、と強く思いました。「守る会」に入りたいと思います。

(景観グループ参加者)

 
■県民が大切に守っていかなければならない風景
 
 すばらしい眺めでした。こんなところが千葉県の山奥にあることを皆に知らせ、あの吊り橋を背景にした紅葉の絶景も皆、ダムの下になってしまうのだということを話します。
 この風景は、私ども県民が大切に守っていかなければならないものです。750年の楓(かえで)の木を大切にし、子々孫々まで、この木が見てきた話を伝えていきましょう。
 ダム反対の声をひろげてゆきましょう。東大演習林にかかわる方々にも、もっと声を大きくして、県民と一緒に反対するよう働きかけましょう。

(景観グループ参加者)

 
■梅ヶ瀬渓谷に匹敵する景観
 
 七里川渓谷を訪れたのは初めてでした。昨年の同じ時期に養老渓谷の梅ヶ瀬渓谷へ行きましたが、それに匹敵するか、それ以上の景観です。とくに、河原から見た紅葉はすばらしいものでした。吊り橋の景観も見事です。追原の「かくれ里」の巨大な古木にも圧倒されました。
 七里川渓谷は千葉県が誇るすぐれた景勝地です。ここを潰すのはたいへん愚かなことです。絶対にやめさせましょう。

(景観グループ参加者)

 
■カワセミ、キセキレイなどを十分に観察
 
 ワシタカの仲間では、ハイタカとオオタカが現れた。カワセミ、キセキレイ、セグロレキレイ、ハクセキレイもよく観察された。ウソも数羽見られた。
 このような自然の豊かな所をダムにする必要性はまったくない。現状のまま残してほしい。

(野鳥グループ参加者)

 
 
■水生昆虫は今回も多種多量
 
 水生昆虫グループには2度目の参加だった。今回は釣り竿を用意し、川虫を餌にハヤを釣った。
 今回は子供の参加もあり、昼食しながらの交流もよかった。追原ダム建設をどう阻止するかに話が集中した。
 水生昆虫は前回と同じく多種多量であった。今回の観察を生かした活動を今後に期待したい。近々、再びこの場所に来たいという思いを強くした。

(水生昆虫グループ参加者)

 
 
■紅葉と渓谷美にうっとり
 
 初めて七里川渓谷を歩き、紅葉と渓谷の美しさにうっとりしました。この美しさを残してほしいと思います。
 遠くからやってくる人のための観光資源としても、この自然を残すのであれば、ある程度の道路整備は必要かもしれませんが、この渓谷を守る意志をもって残してほしいと思います。
 
 
■動物から自然を観察
 
 常日頃、植物に接する機会には恵まれていますが、サル、シカ、イノシシなどの足跡を自然の中でたどり、動物の糞(ふん)から種類を鑑別するなど、動物からの自然を観察するグループに入れていただき、美しい紅葉の中で十分に楽しませていただきました。
 軽い汗をかきながら、気持ちのよい山歩きができました。自然を大切にしたいと思います。

(けものグループ参加者)

 
■春とは異なる七里川渓谷を満喫
 
 大きな岩を裏返すと羽化の途中のカゲロウがたくさんはりついていました。感激です。
 二度目の参加です。春とは異なる七里川渓谷を満喫しました。
 これからがたいへんだと思いますが、頑張りましょう。

(水生昆虫グループ)


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