治水対策の先進事例を学ぶ

〜国分川上流散策会〜




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 市川市の「真間山(ままさん)の緑地を守る会」(秋元久枝代表)は(2012年)5月28日、国分川(こくぶんがわ)上流の散策会を催しました。「守る会」は長年にわたり、景観や緑地の保全活動を進めています。
 国分川は松戸市の南部と市川市の一部を流れる川です。市川市内を流れる真間川(ままがわ)に合流します。この日は国分川の上流部分を歩きました。松戸市の和名ヶ谷(わながや)と紙敷(かみしき)の境です。


◆越流堤と分水路

 ここはめずらしい越流堤がつくられています。台風のときは、越流堤のすぐ下流にある水門(国分川水門)を閉め、洪水を越流堤から分水路(国分川分水路)へ導くようになっているのです。分水路に導かれた洪水は、坂川を経由して江戸川へ放水するようになっています。


◆川を拡幅し、“遊水地”も整備

 越流堤が築かれてある場所のすぐ上流では、約1.2kmにわたって川を拡幅してあります。
 拡幅部分は遊水地の機能を果たしています。ふだんは湿地となっていて、さまざまな生き物が生息しています。地元の松戸市が市民参加の「川づくり」に力を入れていて、観察会や桜の花見などもできるようになっています。
 この日も、この湿地や川沿いでさまざまな植物を確認しました。ススキ(芒、薄)、ミズキ(水木)、カシワ(柏)、チガヤ(茅、茅萱)、ヒメジオン(姫女苑)、イタドリ(すかんぽ)、アカツメクサ(赤詰草)、クワ(桑)、ニセアカシア(ハリエンジュ)、ヨモギ(蓬)、ガマ(蒲)、ヤナギ(柳)、セイバモロコシ(西播蜀黍)、ニワトコ(接骨木、庭常)などです。鳥も、セグロセキレイ、ハクセキレイ、ツバメ、ダイサキ、アオサギ、カルガモなどがいました。


◆国交省の中でも「八ッ場ダムはいらない」

 この越流堤と“遊水地”は、総合治水対策の格好の事例です。
 散策会を案内してくれたのは、かつて建設省(現国土交通省)に務めていたAさんです。河川管理のしくみや治水のあり方、植物などについて造詣(ぞうけい)の深い方です。
 八ッ場ダム計画や治水対策について、こんな話をしてくれました。
     「建設省にいたとき、同僚・仲間で八ッ場ダム計画について意見を交わしたことがある。“八ッ場ダムはいらない”がみんなの考えだった」

     「治水面についていえば、八ッ場ダムをつくっても治水効果は期待できない。それなのになぜ治水効果を強調するかというと、負担金の問題もある。利水だけだと、水道利用料金へのしわ寄せがたいへん大きくなる。それでは具合が悪いというので、治水効果もあげている。もちろん、下流の都県は治水分についても負担している。しかし、それは税金からの支出であって、水道料金のように特定の人の負担にしわ寄せされるものではない」

     「昔は河川沿いに遊水機能をもつ土地(農地など)があって、洪水時にはそれらの土地で氾濫水をため込むようになっていた。ところが、遊水機能をもつ土地がどんどん開発され、住宅地などに変えられた。治水問題の根本はそこにある」
 4月29日の利根川流域市民委員会再結成集会で講演した宮本博司氏(元国交省近畿地方整備局河川部長、前・淀川水系流域委員会委員長)は、「国交省の中で、ダムを造りたいと本気で思っている現役役人はほとんどいない」と断言しました。Aさんの話は宮本さんの話を裏づけるものでした。


◆総合治水への転換を

 Aさんの話を聞き、ダムなどのコンクリート構造物に頼らない治水対策への転換の必要性をますます確信しました。そのひとつは遊水地を増やすということです。
 じっさいに、市川市や松戸市、鎌ヶ谷市などを流れる一級真間川水系河川では総合治水が進められていて、遊水地(調節池)が大きな効果を発揮しています。これらの遊水地は、ふだんは緑地公園や自然観察地などとして利用されています。
 これは、30年にわたる地元環境団体のねばりづよい運動の成果でもあります。環境団体は、景観や自然を守るため、行政に総合治水への転換を求め、さまざまな活動をくりひろげてきました。




国分川の上流に設けられた越流堤と分水路




国分川の一部を拡幅して設けられた遊水地。ふだんは湿地と
なっていて、自然観察会や桜の花見などに利用されている。




セキレイ




真間川流域の総合治水計画(流量配分)

千葉県のパンフレットより



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