常磐新線用地の土地収用法事業認定を糾弾する


住みよい流山をつくる会 会長 林 計 男



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 2002年1月、「住みよい流山をつくる会」は、第9回総会を開催し、常磐新線と一体型土地区画整理事業の根本的見直しを求める請願署名に取り組むことを決定し、今日まで署名を募ってきました。


●永遠の赤字路線に

 マスコミが「三セク新線、火の車」「常磐新線も、お先真っ赤」と報道したとおり、東京・秋葉原と茨城・筑波を結ぶ常磐新線を建設し経営するのは、首都圏新都市鉄道株式会社という第三セクターです。これは、JR東日本が「鉄道建設費が必ず膨張し、事業として危険過ぎる」と参加しなかったからです。
 その予測が的中しました。8000億円だった建設費を1兆500億円に増やす一方、10両編成を6両編成に減らし、空調設備を省略するという無理をし、乗降客数の下方修正をしました。それでも建設費は膨張するばかりです。鉄道設備の耐用年数は40年だというのに、鉄道建設費を回収するのに、当初見込みでさえ30年以上かかると見込まれています。永遠の赤字路線になりかねません。


●地元負担は莫大な額に

 千葉県と流山市、柏市の鉄道建設費の負担は1149億円です。これに沿線開発と関連事業費をあわせると、千葉県の負担は1兆円規模となります。柏市の負担は952億円です。流山市の負担は840億円、年間予算の2.4倍で市民一人当たり56万円にもなります。
 流山市、柏市の常磐新線関連の開発面積は1090ヘクタールで、東京ドームの232倍におよびます。流山市、柏市とも自然環境に恵まれています。しかし、オオタカの生息する50ヘクタールの「市野谷(いちのや)の森」の樹木を伐採し、そこへ高架鉄道と40メートル幅の道路を交差させ、常磐自動車道と並行して32b幅の都市軸道路を通します。このほか、流山市内だけで16本、柏市内17本と、巨大幅員の道路網を張りめぐらせます。開発推進組織の中心にトヨタ自動車が席を占めており、住民から無償で土地を取り上げた土地で道路を張りめぐらせ、「大いに車を買ってください」という訳で、ひどい話です。


●「素直にやれば破綻する」

 行政が財界の手先に成りさがってしまっているのは、これだけではありません。三井不動産の子会社が経営する、柏北部中央地区の柏ゴルフ場には、化石時代からの希少な植物が自生し、災害時の市民の非難場所として貴重なものですが、これも昨年9月に閉鎖されました。三井不動産は、事実上、千葉県政を支配しているとされる会社で、常磐新線を「三井新線」と呼ぶ人もいるくらいです。三井不動産が常磐新線・巨大開発を見込み、あらかじめ買い占めておいた土地は56ヘクタールといわれ、同社が全国に保有する土地の7割に達するそうです。
 流山市、柏市を中心に業務核都市をつくり、自然と優良農地と閑静な住宅街を潰し、鉄とコンクリートの殺風景なまちをつくるため、莫大な血税が湯水のように投入されるのです。
 流山市議会の特別委員会に出席した首都圏新都市鉄道株式会社の担当者は、「素直にやれば破綻する。新たなカンフル注射(公的資金投入)が必要」と、あけすけに語っています。
 鉄道建設工事の進む南流山地域では、工事により人の流れが変わったのに、営業の補償もなく、移転を余儀なくされる商店がでたり、交通事故の危険が現実にあるのに、行政は有効な対策を何一つとっていません。
 同じく流山市駒木地区では、玄関の真上90センチに高架鉄道が建設されるのに、何の補償もされないという人権侵害が起こっています。
 「常磐新線は、常磐線の混雑緩和策」という宣伝は、行政によって広く市民に浸透していますが、JR東日本は、「常磐新線開業によって、常磐線の乗降客数は影響を受けない」としています。


●土地収用法事業認定を強行

 3月8日、国土交通省は、私たちの「周知徹底不十分な公聴会は、やり直せ」という要求を無視し、千葉県内の区画整理地以外の鉄道用地の土地収用法事業認定を強行しました。これは、住民意向無視の従来の手法を、ここでまた適用したものです。
 私たちは、こうした住民意向無視の強行に断固として抗議します。同時に、堂本暁子千葉県知事の無責任さを、声を大にして追及したいと考えます。堂本知事は、選挙中の「常磐新線・巨大開発の根本的見直し」の文書公約を、選挙中の方便かのように、弊履のようにあっさりと捨て去りました。そして、開発会社化した千葉県政の従来の路線を、唯々諾々と踏襲しています。
 「常磐新線と住民本意のまちづくりを考える柏市民の会」(田口正巳代表)の報告によれば、鉄建公団は、鉄道用地のうち、区画整理区域内の建付け地は仮換地指定を先行させ、建物のない土地は使用貸借による借地という脱法行為で、工事をできるところから虫くい的に強行しています。しかし、千葉県内の工事進捗率は12%、全体でも29%に過ぎず、開発推進勢力は2005年開業の展望ももっていません。それにもかかわらず、やみくもに工事を進めています。無責任なことです。


●根本的見直しの住民運動を大きく発展させるために

 私たちは、常磐新線・巨大開発による犠牲者を一人も出さないため、「あせらず、あきず、あきらめず」、これらの問題の重大性をより広範な市民に知らせ、徹底した情報公開と住民参加で、事業の必要性、採算性、環境への影響等を再評価させ、計画の根本的見直しを求めていきます。
 4月14日には、流山市内で「住みよい流山をつくる会」の第10回総会を開催します。特別講演を高尾山天狗裁判事務局長の橋本良仁さんにお願いしました。橋本さんに講演をお願いしたのは、常磐新線・巨大開発根本的見直しの住民運動をより大きく発展させるためには、圏央道の運動のような大きく構えたとりくみが必要だと考えたためです。

(2002年3月)





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