デンマークの湿地再生を見学(2)

サムソ島での自然エネルギーのとりくみ

千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子





●風力発電

 前回はデンマークの湿地回復を見学しての報告をしました。今回は自然エネルギーの展示場ともいうべきサムソ島の話です。
 デンマーク第2の都市、ユトラント半島北部のオーフスからフェリーに乗って1時間半くらいでサムソ島に着きます。島は南北26キロ東西7キロと南北に細長く、面積は114平方キロメートルで、人口は4400人ほどの静かな村です。
 出迎えてくれたのは、村で「自然エネルギーアイランド構想」を進めるエネルギー環境事務所のゾーレン・ハーマセンさんです。ゾーレンさんは、サムソ島のエネルギーについて情報を与える仕事をしていて、風力発電(写真1)、太陽光発電、バイオマスなどについて案内と説明をしてくれました。
 風車はこの島に11基あり、そのうち9基分は金持ちが出資していて、2基は452名が金を出しあって所有しているとのこと。1基の値段は700万クローネ(1クローネは18円位)ですから、日本円にすれば1億2000万円ほど。1名あたり54万円出資した勘定になります。日本だったら出資するだろうかと考えてしまいました。が、彼らは“自分の使用する電力は自分でまかなうという考えに基づいている”とのことでした。それを裏付けるかの話をゾーレンさんはしてくれました。
 サムソ島には1600年頃、フランチングスボルグ城という城があり、城主はこの島全体を所有していた。島民は城主の下に働いていたが、ただ従うというのでなく、自分で物事を決めたり、動く気質がある、とのことでした。
 風車を設置するには、(1)風がよく吹くところ、(2)人が住んでいないところ、(3)保護区には作らないなど、話し合いがもたれるそうです。


●バイオマス施設とウィードベッドシステム

 次に、ワラや木屑を燃やすバイオマス(生物エネルギー)施設を見学しました。ここでは、ワラを燃焼させて家庭にお湯を供給しています(供給時は80.7度、戻ってくるときは57度くらい)。農家が持ち込んだワラ1個は大体500〜600sで、約200リットルの燃料になるそうです。300万kwの熱量が400戸分の家庭を支えていて、島の90%をまかなっている。また、ワラを持ってきた人はその5%の灰をもらい、畑に使用している。ですから、畑に農薬は使用しない。離れた家には効率が悪いのでパイプは敷設せず、各戸でウッドペレット(木材を圧縮したペレット)を使用している。燃焼効率はよく価格も灯油の3分の1とのことでした。
 ゾーレンさんのお宅に伺いましたが、足下が暖かく気持ちが良かったです。なお、バイオマスは、枯渇することのない恒久エネルギーで、持続可能エネルギー源です。
 続いてウィードベッドシステム(写真2)という排水処理場を見学しました。それは200世帯の排水を休耕田のような所(50m×100m)に入れるだけのものでした。真ん中にはヨシが植えられていて周りに小石が入っています。その小石の所に排水を入れるだけのものですが、出てくるときはとてもきれいになっていました。そして、それは海に流されます。定期的に水質検査をしているが安全ということでした。私たちが見学しているときも、海では釣りをしている人がいました。ゾーレンさんのいうとおり原始的ですが、効率のよいものです。(太陽光発電はメモっていません。すみません)


●自然エネルギーにとりくむ理由

 島の人たちはなぜこのように風力発電、太陽光発電バイオマスと、自然エネルギーにとりくんでいるのでしょうか。
 それはデンマーク政府が、2030年に向けて再生可能エネルギーでエネルギーを供給していくという目標を掲げた際、補助金を出すからやらないかと言われた。けれども出来なかった。アイデアを出せと言われ、6つの島が公募してサムソ島が選ばれた。今までは、エネルギー源を確保するために働かねばならなかった。いろいろ話し合った結果、子どものためにも環境にも税金にも良いということでやることになったと、ゾーレンさんは誇らしげにそして楽しそうに語ってくれました(注)。デンマークの湿地回復、自然エネルギーのとりくみ、地域住民の話し合いの進め方には多くの学ぶべき点がありました。

(2001年11月)   



    (注) デンマークでは暖房用途には高い税金を課している。が、二酸化炭素の削減や
      エネルギー効率化に関して政府と合意を交わすとエネルギー税が減税される。






風力発電(写真1)



ウィードベッドシステム(写真2)



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