問題山積のリニア鉄道

〜リニア中央新幹線と成田リニア構想〜



トップページにもどります
「ニュース」のページにもどります


 「リニア鉄道は問題山積─リニア中央新幹線と成田リニア構想」と題した講演会が2009年9月27日に浦安市で開かれました。主催は全国自然保護連合とリニア・市民ネットです。千葉県自然保護連合も協力しました。
 講師は交通政策にくわしい橋山禮治郎明星大学教授(政策学)です。


■リニア中央新幹線と成田リニア構想

 JR東海は2007年12月、東海道新幹線のバイパス路線としてリニア中央新幹線計画を発表しました。超電導磁気浮上方式の超高速鉄道(リニアモーターカー)によって、東京−名古屋間を50分で結ぶというものです。以来、沿線の各県では停車駅誘致運動が活発に進められています。
 また、今年4月に千葉県知事に就任した森田健作知事も、成田と羽田両空港をリニアで結ぶという成田リニア構想をブチ上げています。


■JR東海は破綻必至

 JR東海が試算したリニア中央新幹線計画の建設費は5兆1000億円です。南アルプスを貫通することになっており、そのためのボーリング調査が長野県大鹿村ではじまっています。

 橋山教授は、リニア中央新幹線は問題だらけであることを、具体的な数値などを示しながら明らかにしました。建設費が膨大であり、採算がとれないという財政問題のほか、在来新幹線の数倍といわれるエネルギー浪費、電磁波による人体への影響、南アルプス貫通による自然破壊などです。果たして国民の要求に沿ったものなのかという根本問題もあります。

 この計画を強行した場合、JR東海は破綻が必至とし、こう話しました。

 「技術的信頼性、環境適応性、経済性の3つの点でリニアと最新の在来新幹線を比較すると、リニアはすべての点で劣っている」

 「リニア中央新幹線は大幅なコスト増で累積赤字が危惧され、JR東海の経営破綻を招くことが必至である。そうなった場合、政府は第二の国鉄化を放置できず、財政支援も不可避となる。JR東海はそれを見越しての見切り発車だと思われる」

 「リニア中央新幹線の導入は、わが国の高速鉄道網の今後のあり方、国民の利便性、沿線の住民や地域への影響など、経済的・社会的影響がきわめて大きい。そればかりでなく、政界でも例をみないビッグプロジェクトであり、一民間企業の投資能力の限界をはるかに超えている。第二の国鉄に陥らないためにも、事業主体のあり方にも慎重に検討されるべきだ」

 そして、リニア計画の内容や問題点を多くの国民に知らせ、また民主党新政権に働きかける必要があると指摘しました。


■成田リニア構想の実現可能性はゼロに近い

 一方、成田リニア構想についてはこんなふうに指摘しました。

 「森田県知事による成田リニア構想も、膨大な建設・運営コストに見合う収入確保は望めない。事業主体の主体の出現も絶望的である。成田新幹線がなぜ実現できなかったのかを振り返ってみれば、実現可能性はゼロに近い。」


■長野県内にリニアが通る適地はない

 講演のあと、リニア中央新幹線が通ることになる長野、山梨、神奈川と、成田リニア構想に関わる千葉から現地報告がありました。

 長野からは、こんなメッセージが寄せられました。

 「南アルプス貫通ルート上のトンネル付近に位置する大鹿村は静かで自然豊かなところであり、江戸中期から伝わる大鹿歌舞伎が特に有名で、毎年多くの観光客が訪れる。そんな大鹿村に、一昨年、降って湧いたようにリニア計画が持ち上がり、すでに水平ボーリングによる地質調査も実施され、昨年10月、建設可能との報告書がJR東海から国に提出された。しかし、南アルプスの山地の中には多くの断層群が存在している。周辺部の地質はたいへんもろく、それが原因となって過去には土砂崩落等による大災害も発生している。また、活断層に沿って走ることになる伊那谷回りの迂回ルートも、環境面や安全面に問題があることは同様である。県内の自治体の首長は、ルート問題で綱引きを演じているが、長野県内にリニアが通るための適地はなく、どうぞほかをお回りくださいと言うしかない」


■JR東海労働組合も猛烈に反対

 講演会には、JR東海労働組合(JR東海労)の組合員も数人参加し、役員がこんな訴えをしました。

 「私たちは、JR東海の責任ある労働組合として、リニア中央新幹線計画について討議を重ね、6月開催の定期大会で反対の方針を決定した。計画の内容には、多くの矛盾と問題点が隠されている」

 「中央新幹線は全幹法(全国新幹線鉄道整備法)で位置づけられており、国の公共交通政策の中で検討・議論されるべきものである。それを一企業(JR東海)の経営陣の利害と思惑で勝手に“バイパス”などと決めつけ、そこにリニアを押しこもうとするやり方は、独善的かつ傲慢な姿勢のあらわれといわざるをえない」

 「JR東海は、1991年に新幹線鉄道保有機構から買い取った5兆円余の債務返済が重要な経営課題となっている。17年もたつのにまだ2兆円余しか返済できておらず、現時点で3兆2000億円の長期債務をかかえている。そんな状態で新たに5兆1000億円ものリニア新幹線の費用を負担するというのは無謀である」

 「この計画は経営破綻・経営危機のリスクが高く、JR東海・関連企業の労働者の失業問題に発展することが必至である。だから、私たちはこの計画に反対している。中止させるため、みなさんといっしょ運動したい」

 以上です。













成田リニア構想の問題を報告した川本幸立さん(千葉県議会議員)



リニア中央新幹線をめぐる神奈川の状況を報告した野元好美さん(相模原市議会議員)



★関連ページ

このページの頭に戻ります
前ページに戻ります

トップページ | 三番瀬 | ニュース | 自然・環境問題 | 房総の自然 |
環境保護団体 | 開発と行財政 | 自然保護連合 | 書籍・書評 | リンク集 |