■千葉県自然保護連合が創立50周年
房総自然保護運動の50年
千葉県自然保護連合 中山敏則
千葉県自然保護連合は2021年9月に創立50周年を迎える。この50年、千葉の自然保護団体は各地でさまざまな運動をくりひろげてきた。自然破壊の開発計画などをいくつも中止・凍結させた。
結成のきっかけは房総スカイライン反対運動
千葉県自然保護連合の創立時の名称は「房総の自然を守る会」である。房総の豊かな自然と住みよい環境を守るため、1971年9月26日に発足した。きっかけは有料観光道路「房総スカイライン」の反対運動だ。
この道路は、東京湾岸の富津岬から鹿野山、高宕山、清澄山などを結び、外房の勝浦市にいたる約60kmの南房総横断道路として計画された。スカイラインは、当時全国各地で建設が進んだ観光用の山岳道路である。
房総スカイラインの第1期工事は鹿野山−高宕山−豊英ダム−香木原間の18.5kmである。高宕山、元清澄山などニホンザル生息地の中央を貫通するため、反対運動が盛りあがった。その結果、房総スカイラインは大幅に縮小された。ルートも変更され、君津市の西粟倉と片倉をむすぶ10kmの有料観光道路となった。
反対運動にはさまざまな団体が加わった。木更津みちくさ会、木更津むしろの会、千葉県生物学会、千葉大学自然保護問題研究会、千葉県山岳連盟、千葉県勤労者山岳連盟、清澄森林研究会、千葉県地学教育研究会、東邦大学野鳥の会、千葉の干潟を守る会などだ。そして、これらの団体のよびかけで、千葉県全土の自然保護運動の連携組織として「房総の自然を守る会」が結成された。
10kmに縮小された有料観光道路は1979年3月に開通する。しかし通行量が少なく、赤字経営がつづく。自然保護団体が指摘したとおりになった。そのため、2019年4月21日から無料開放となる。管理者は県道路公社から千葉県に移った。
房総スカイライン反対運動の経過などについては、『房総の自然を守るために─房総スカイライン建設反対に関する資料』(岩本久美子・小畠裕子編)がくわしい。
自然保護運動の成果
当連合はその後、県内のさまざまな環境保護運動にかかわってきた。自然保護団体などは、ねばり強い運動によって自然破壊の開発事業をいくつもストップさせた。たとえばこうである。
- 日本最大規模の砂質干潟、盤洲干潟(小櫃川河口干潟)の埋め立て計画を中止させた。盤洲干潟の隣接地に計画された子供向けレジャーランド「民話・童謡の里」の建設も中止させた。
- 谷津干潟の埋め立て計画を中止させた。
- 七里川渓谷をつぶす追原ダム建設計画や、市原市の「市津緑の街」開発計画、鬼泪山国有林の山砂採取を中止させた。
- 三番瀬の埋め立て計画を白紙撤回させた。また、三番瀬を通る国家事業の第二東京湾岸道路建設を28年も防いでいる。当連合は三番瀬保全を戦略的重点として位置づけている。
- 南九十九里浜(一宮海岸)では、コンクリート製人工岬「ヘッドランド」の工事を凍結させている。
(2021年6月)
赤字経営がつづいたため、2019年4月に無料開放となった房総スカイライン
=2021年5月18日撮影
新緑の七里川渓谷。さまざまな団体が参加する運動によって追原ダム計画が中止になり、渓谷は守られた
=2021年5月18日撮影
市原市北東部の旧「市津緑の街」開発予定地を見学した県弁護士会のメンバー。
ここは千葉県と千葉・市原両市が計画する巨大開発「千葉・市原丘陵新都市開発」の一角を
占めていた。自然豊かな里山・谷津田である。オオタカも生息する。自然保護団体は
「千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会」を結成した。この丘陵地域を「陸の三番瀬」と
位置づけ、開発から守るためにさまざまな活動をくりひろげた。事業者は開発を断念し、
「市津緑の街」予定地(160ha)をそっくり市原市に無償譲渡した。市はこの土地を
「自然環境保全のための市有地」として管理することになった=2000年5月13日撮影
★関連ページ
- 50周年記念誌を発行(中山敏則)
- 千葉の自然保護運動の父 石川敏雄さんの意志を継ぐ(中山敏則)
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