千葉県の不正経理をめぐる歴史

〜内部告発は1975年にはじまった〜

原田隆夫


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■企業庁職員が職を辞して乱脈ぶりを告発

 私が知る限り、千葉県の不正経理に関する最初の内部告発は1975年でした。
 同年5月、企業庁の職員が職を辞して企業庁運営の乱脈ぶりを告発しました。この内部告発をきっかけにして明らかになった点をいくつかあげますと──
  • 企業庁は、松尾台工業団地を造成する際、自民党県議の斡旋によって「三共ブロック」なる会社の所有地をまわりの14倍の値段で買った。同社はこの売却で巨利を得た。

  • 企業庁は、県地域振興公社(企業庁の外廓団体)にたいして「雑草除去業務委託費」として毎年2000万円近くの委託費を支出していた。このうち、名目どおりに使われたのは300万円くらいであった。企業庁と公社が「雑草除去費」の“水増し”を打ち合わせ、実際は草も生えない区画に雑草が生えたことにし、「伺い書」「委託書」「成果確認書」などの一連の公文書を偽造して年間1000万円以上の公金を流用していた。なお、同公社の幹部のほとんどは、企業庁の現職幹部でもあった。

  • 地域振興公社発行の膨大な数のタクシーチケットが企業庁の幹部をはじめ係長にまで配られ、私用に使われていた。一部の幹部は、家族にまで使わせていた。

  • 企業庁は「会議」を名目にした宴会をひんぱんに開き、その費用の一部を公社に“ツケ回し”していた。その飲食費は、千葉市内の4料亭だけで年間2600万円にのぼり、そのうち公社へのツケ回し分は約1000万円であった。なお、企業庁会計には、「会議費」として年間1億2000万円が計上されていた。
 以上については、75年5月31日付け『朝日新聞』(千葉版)と同年6月10日付け『読売新聞』(同)がくわしく報じています。
 企業庁の幹部は、県議会の企業常任委員会で以上の事実を認め、「あれこれとミスがあったことは事実であり、申し訳ない。今後改めるべきことは改める」と頭をさげてあやまりました。
 しかし、あやまったのは形の上だけでした。ウラで舌をだしていたのです。企業庁内部では、告発者に対し、「なぜ内部秘密を口外したのか」「公務員法違反(守秘義務違反)だ」という批判も強くだされました。
    《これはあくまで陰の発言ながら「公務員法違反で告訴したいくらいだ」とまでいきまく人もいた。》(『朝日新聞』千葉版、1975年6月2日)
 したがって、ほとぼりがさめると、再び同じようなことを繰り返しました。たとえば、公費による幹部などの飲み食いは、1997年まで半ば大っぴらにおこなわれました。県土地開発公社や県都市公社などの職員が知事部局や企業庁の関係各課の幹部を公社の費用で接待するのも日常茶飯事です。
 さらに、各公社の理事長は年間1000万円とか数千万円の「交際費」をもっていて、この金が県幹部や政治家向けの接待費として自由に使われていました。また、タクシーチケットの私的利用も幹部の間ではほとんど毎日のように行われていました。


■1988年4月の告発

 私も、なんどか不正経理の問題をとりあげました。
 最初は、いまから21年前の1988年4月です。「千葉県庁の官僚と官僚機構」という、いかめしいタイトルをつけた文書を、県職員、市民活動家、弁護士、政党関係者などに配布しました。内容は、政財官癒着、天下り、公金の浪費・私物化、人事差別などの実態を暴いたものでした。
 その一部はこうです。
    《各所属の「需用費」(食糧費、消耗品費等)などの公費が幹部の私的な飲食費に流用されたり、本庁から出先機関におろされる公金の一部がピンハネされて、同じく幹部の飲み食いなどにつかわれている。
     タクシーチケットの公私混同も同じである。各職場でおこなわれている各種の宴会(役付会、歓送迎会、納涼会、忘年会など)の際、幹部だけは特別に帰宅用として公用チケットを利用する。これは大半の職場でみられることであり、1人1回1万円は優に使っている、という。
     すべてこうしたことは“公然の秘密”となっている。そして、幹部の飲食費肩代わりなどを要領よくできる者ほど出世が早いといわれている。もちろん、大多数の職員は、こうした腐敗を肯定しているわけではない。しかしながら、職場の中でその是正を意見すれば“異端者”にされ、昇任や人事異動などで差別的な扱いを受ける。また、個人的に内部告発しても、あまり効果はない。事実、前述の職を辞しての企業庁職員の告発も、結局は“不発”におわった。逆に企業庁内部で「公務員法違反で告訴したいくらいだ」という意見が出たように、下手に告発すると、「守秘義務違反」ということで告発者が反対に告訴される可能性もある。》


■1995年9月県議会で追及

 1995年の9月定例県議会では、小松実県議(共産党)が「官官接待」をとりあげ、実態調査や見直しをせまりました。しかし沼田知事は、中央官僚に対する接待や市町村から受けた接待については「必要最小限で節度を持って対応していると思う」としたうえで、「接待の金額は把握していない。(今後も)調査することは考えていない」とつっぱねました(『読売新聞』千葉版、1995年9月29日)。つまり、「本県の現状は問題がなく、実態調査や見直しは必要ないとの考えを明確にした」(同紙)のです。


■全国有数の“官官接待県”の実態を告発
  〜1995年12月〜

 同年12月、私は「『官官接待』に思う」という名の文を、『ちば・地域とくらし』第34号、千葉県自治体問題研究所)に掲載しました。県庁で大々的におこなわれていた官官接待などを暴露したものでした。
 その一部はこうです。
    《沼田知事は、官官接待問題について「必要最小限で節度を持って対応している」とか「問題ない」としているが、これは大ウソである。千葉県庁でも税金を使った公務員同士の飲み食いはすごいものがある。むしろ、企業庁や土地開発公社、都市公社、道路公社、日本コンベンションセンター(幕張メッセを運営する第三セクター)など、大型開発にかかわる公営企業や外郭団体を多数かかえる千葉県は、全国有数の“官官接待県”といっても過言ではない。》

    《タクシーチケットの私的利用も同じである。各職場でおこなわれている各種の飲み会の際、幹部職員などは必ずといってよいほど公用のタクシーチケットを利用する。これはほとんどの職場でみられることであり、本庁では、係長クラスになるとタクシーチケットを飲み会のたびに自由に使うことができるようである。安房地域や夷隅地域など遠くから通勤している職員が多いことを考えると、タクシーを1回使えばどれほどになるか想像がつくであろう。こうした実態はタクシー会社がよく知っていることであるが、タクシー会社にしてみれば大変な儲け口になっているので、暴露などをすることはない。》

    《日常的に行われている「官官接待」の費用はどこから出るかというと、いわゆる「食糧費」から出ることは少ない。つまり、流用である。
     内実を少し書くと、まず一般的なのは職員の旅費である。じっさいには出張しないのに、課内の職員が何回も出張したように書類を作り、この分を飲食費にあてるのである。つまり、一時期問題になった「カラ出張」である。この場合、書類上出張したことになっている職員はそのことを知らないケースが多い。旅費が流用しやすいのは、現金化しやすいことと、税金がかからないためである。
     また、消耗品費や印刷製本費なども飲み食いに流用されており、領収書の偽造が日常的におこなわれている。たとえば、愛知県や秋田県では、市民オンブズマンや新聞社の調べなどで、県が食糧費を使って接待などで飲食した時、飲食店から受け取った請求書のうち、あて先や明細、日付の書かれていないものや改変されていたものが大量に発見された。また、大阪府や茨城県、沖縄県では、会計検査院の検査によって、国の補助金である公共事業費の事務費に含まれる食糧費が事業とは無関係の目的外に流用され、書類が改ざんされていたことが判明した。
     こうした書類の大規模な改ざんは、千葉県でも日常的に行われているのである。したがって、たとえば千葉ニュータウン事業にからむ会議費(食糧費)が2年間で5000万円とか、県企業庁の1994年度の会議費(食糧費)の決算額が約2億円というのは、表向きのものであって、実際に飲み食いに使われている分の氷山の一角でしかない。飲み食い費の大半を占める流用分については、公文書公開制度を利用しての開示では調べることが不可能なのである。》

    《本庁についていえば、会館、料亭、スナックやタクシー会社などから請求書が届けられ、多くの課で支出担当者がその対応(つまり、書類改ざん)に頭を悩ましている。料亭やタクシー会社から次々と請求書が届けられてくるために、当該年度で支払いできず、借金が次年度に繰り越され、過年度分の支払いややりくりに追われている課も多いと聞く。こうした書類改ざんや過年度分飲食費の捻出などで連日残業や休日出勤を強いられている担当者も多い。国の会計検査がある時は徹夜状態が何日も続くという課も少なくない。 本来は、監査委員がこうしたことを厳しくチェックしなければならないのだが、よく知られているように、監査委員は知事の任命であり、県職員OBなどで構成されているので、チェックする気はさらさらない。また、監査委員の監査を手助けする監査委員事務局の職員も一般の県職員であり、2、3年後には監査される立場に回るため、不正流用などが分かっていても、見てみぬふりをしている。かつて、監査委員事務局の職員がある職場の監査を厳しくおこなったために、この職員は左遷された、という話もあるくらいである。 酒好きが課長になった知事部局のある課では、週に1日以上の割合で公費を使った飲み食いがおこなわれ、1年間に数百万円におよぶ予定外の飲食費を支出せざるをえなくなった。そのために、年度末に恒例のようにおこなわれていた職員の県外視察がとりやめになった、という話も耳にしている。 沼田知事や蕨総務部長などは、こうした実態をよく知ったうえで、県議会で「問題ない」とか「節度をもって対応している」などと答弁しているのである。》

 この雑誌は、千葉市内のいくつかの書店でも扱ってくれました。500部発行し、すぐに完売しました。県立中央図書館にも置かれています。


■県職員有志による告発
  〜1997年1月〜

 1997年1月、県職員有志の会が県内政党やマスコミ、オンブス団体、職員労働組合などに告発文を送りました。
 県職員労働組合(県職労)は、「いわゆる『官官接待』『カラ出張』問題について全庁的討論をよびかけます/なによりも事実関係の徹底究明・総点検を」とのタイトルをつけた声明を発表し、総務課長に対して事実関係の徹底調査を要請しました。しかし、県は、全庁的な調査をせずに内部的な対応で済ませ、「告発文で指摘されているような事実はなかった」と、うやむやにしました。
 同年2県議会では、共産党の前田堅一郎県議(共産党=当時)がこの内部告発をとりあげました。しかし沼田知事は、「匿名の文書には答えられない。個人情報は公開しない」とつっぱねました。
    《(2月)5日に開かれた2月定例県議会の代表質問で日本共産党の前田堅一郎県議は、県職員からの内部告発文書を示して、「『カラ伝票』による裏金づくりがおこなわれており、50億円をこえる公費が乱用されている」と書かれているとのべ、県独自の調査を要求、沼田知事を追及しました。しかし、沼田知事は、「匿名の文書には答えられない。個人情報は公開しない」と答弁。》(『赤旗』南関東版、1997年2月11日)


■会計検査院の検査で不正使用が発覚
  〜1997年1月下旬〜

 97年1月下旬、会計検査院の検査によって、県住宅課における事務費の不正使用が発覚しました。タクシーの不正使用が明らかになったのです。この発覚は、県職員が会計検査院に内部告発したことによるものでした。
 これを『朝日新聞』(千葉版)が何回か大きく報じました。記事の見出しはこうです。

  • 「県、偽造・ミス両面調査へ/乗車と異なる運賃請求/1年後駆 け込み請求?/住宅課が46回 一律に待ち時間加算も」(『朝日新聞』1997年4月19日)

  • 「まだ変だ 県住宅課のタクシー使用/乗車の後で見積書/支出伝票にウソの日付 『事前見積もり』装う」(同、4月20日)

  • 「請求書類 偽造認める/タクシー運賃不実記載で県住宅課/白紙に架空の金額」(同、4月24日)

 公金によるタクシー不正使用や飲み食いは、すべての課でやられていました。会計検査院がその後も不正使用の検査をつづけたら、その実態がどんどん明らかになるはずでした。しかし、会計検査院は、不正使用の検査を住宅課だけで終わりにしてしまったのです。


■「県庁における公費の不正使用と官僚腐敗」を告発
   〜1997年4月〜

 1997年4月、私は再び「県庁における公費の不正使用と官僚腐敗」という文を『ちば・地域とくらし』第35号に載せました。同誌も500部発行し、すぐに完売しました。
 こんなことを書きました。
    《公費の乱用・私物化の実態について少し付け加えると、問題のひとつは、“予算さえ獲得すれば、あとはそれをどう使おうがかまわない”、あるいは「県職員の会」が指摘しているように、「計上した予算は1円残らず使い切らねばならない」という財政システムにある。毎年、夏から秋にかけて、各課で次年度の予算要求を作成し、財政課の査定を受ける。最終的に査定結果をつみあげたものが県の予算案となり、二月県議会に提案される。この場合、議会承認後に各課に配分された予算は、事業ごと、科目ごとに金額が細かく決まっている。しかし、実際には、各課がこれらの予算を事業ごと科目ごとに厳密に使っているわけではない。たとえば、「○○○事業費」という場合、内訳は、賃金、旅費、委託費、需用費(消耗品費、食糧費、印刷製本費)など、科目ごとに金額が決まっている。しかし、たとえば業者に発注する委託費や印刷製本費をみた場合、予算額は特定の業者に見積書を出させたりして作成したものであるが、実際の事業実施段階では、複数業者による入札を行ったり、随意契約の場合でも、複数の業者から見積書をださせたりして、金額や内容によって業者を決定する場合が多い。したがって、実際には、業者への発注費は予算額よりも少なくなるケースが少なくない。この場合、本来は予算補正によって余った金を返すべきなのだが、そうすると次年度の予算確保がむずかしくなるということもあり、普通は返すことをしない。つまり、余った金は他に「流用」し、1円も残さず使い切ってしまうのである。(「流用」というのは役所用語であり、実態をみると公金横領というべきものが多い)。この「流用」はほとんどすべての課で日常茶飯事的に行われているもので、裏金づくりや幹部の飲み食いのなどにあてられている。》

    《「流用」の一般的な源泉は、職員の旅費である。じっさいには出張しないのに、課内の職員が何回も出張したように書類を作り、この分を幹部の飲み食い費などにあてるのである。つまり、全国的に問題になっている「カラ出張」である。また、カラ出張分をすべて幹部がつかうと不満がでたりすることから、その一部を“口止め料”としてすべての職員に分配している職場もある。ちなみに、旅費が「流用」しやすいのは、旅費が現金化しやすいことと、税金がかからないためである。
     消耗品費や印刷製本費、食糧費なども幹部の飲み食いや官官接待、「県県接待」(県庁内部の接待)として「流用」されており、伝票などの偽造が日常的におこなわれている。コピー用紙などの消耗品を購入したように書類をつくり、実際は飲み食い費につかったり、ビール券やパソコンなどを購入する。あるいは、刊行物発行の名目で印刷製本費の予算を確保しておき、実際には刊行物は発行せず、裏金に回すなどということが、ほとんどの課で行われている。
     時間外手当のピンハネもひどいものがある。この点については、「県職員の会」が投書の中で、職員が残業しても時間外手当が十分に支払われず、この未払い分が幹部の飲み食いなどに使われていることを訴えている。これも、大半の職場で行われている。たとえば、昨年(1996年)末に県職労が全職員を対象に実施した「仕事と職場のアンケート」では、「時間外手当カットの実態はありますか?」という問いに対して24.5%(782人)が「ある」と答えている。》

    《公費乱用や県民に背を向けた県政運営に対して、心を痛めたり、なんとかならないかと思っている県職員は数多い。次に紹介するのは、県職労青年部が昨年1月に実施した青年対象のアンケートに対して、ある職員から寄せられた一文である。
    「今、千葉県職員として第一に疑問を抱き叫ぶべきことは、露骨な政治的介入、組織の面子至上主義、ことなかれ主義、職員の低い士気等々により、まともに行政機関としての法の正義も公共の福祉も貫徹されていないことである。これについては具体例や理論上の説明は不要であろう。(中略)少しでも職場に根を張り現場の問題を考えているのならば、出先の職員は将来を悲観し無為に日々を過ごし公僕としての誇りを捨てていること、本課では議会やプレスに対する対外的なポーズを作ることに病的なまでに固執し、やはり公僕の理念を捨てていることなどがすぐに見えてくるはずである。(中略)この腐った県行政に対し疑問や怒りを感じている不満分子は特に若い女性を中心に意外と多く、これらの勢力をうまく結集できれば組織の勢力は質的にも強化されるのではないか。(中略)長々と偉そうなことを述べてきたが、そういう自分は何か行動を起こしているのかといえば何も考えてさえもいない。何よりあきらめの気持ちが先に立ち、完全なペシミズムに陥っている。この先どうしてよいかわからず、将来に対してどうにもならない不安と絶望を感じているだけである。ただ実際の活動家たる皆さんに訴えるよい機会であり、こういう考えを持っている人間がたくさんいるということを知ってほしかった次第である」
     ここに書かれているように、腐敗した県政運営や人事のもとで、数多くのまじめな職員がやる気をなくしたり、不安や苦悩をいだいている。こうした実態をより多くの方々に知っていただきたいと思い、長々と書かせていただいた。
     最後に、数的には多数を占めている真面目な職員と、労働組合や県民が力を合わせ、県政が県民本位に転換することを切に望んでいる。》


■職員逮捕により、県がやっと実態調査

 そして今年(2009年)になり、県は、ほとんどの所属で不正経理がおこなわれていることをやっと認めました。それは、職員が次々と逮捕され、隠ぺいが不可能になったからです。
 そのいきさつはこうです。2008年10月、会計検査院の検査によって、いくつかの県で不正経理がおこなわれていることが発覚しました。そこで、堂本知事が内部調査を指示しました。しかし県は、「内部調査の結果、不正経理はなかった」と報告しました。
 ところが今年の2月26日、農林水産政策課の職員Hが逮捕され、県庁が家宅捜索されました。容疑は、職場で事務用品の架空発注を繰り返し、県の公金をだまし取ったというものです。
 Hは、「出入り業者に偽の伝票を作らせた。だまし取った現金は私的に使った」と容疑を認めました。県警は、チェック体制の不備や業者との立場を利用した可能性が高いとみて、不正の実態解明を進めることにしました。
 しかし、この時点でも県は、全庁的な不正経理を隠ぺいしたのです。
    《県農林水産部の加藤勝部長と古沢昭彦・農林水産政策課長は同日夕、県庁内で記者会見し、物品購入のチェック体制の甘さを認め、謝罪した。(中略)もっとも、こうした不正経理が組織的に行われていたかどうかについて、古沢課長は「課員に聞き取り調査したところ、このようなことが行われていたことを知る職員はいなかった」と否定した。》(『読売新聞』千葉版、2009年2月27日)
 そうしたら5月15日、県土整備政策課の職員Wも逮捕されました。容疑は、虚偽の請求書を使って県費をだまし取ったというものです。6月4日には、水政課職員も逮捕されました。この時点で、県職員の逮捕者は3人目となりました。
 2月に逮捕されたH被告は、千葉地裁の公判で「預け」と呼ばれる不正経理の手口を明らかにしました。事務用消耗品を実際に購入していないのに、購入したことにして架空の請求書を作り、販売業者の口座に県費を振り込ませていたのです。
 こうなると、さすがの県も全庁的な不正経理を隠ぺいしつづけることができなくなります。やっと、実態調査を行うことになったのです。
    《この「預け」について、森田健作知事は全庁的に実態調査し、今夏をめどに調査結果を公表する考えを明らかにしている。》(『毎日新聞』千葉版、同5月16日)

    《県費を詐取したとして県農林水産部の職員が逮捕、起訴された事件などを受けて県が進めている経理処理の内部調査について、県は第三者を集めた「県経理問題特別調査外部審査委員会」を28日に設置し、調査結果の検証を依頼する。森田健作知事が23日の定例会見で発表した。》(『毎日新聞』千葉版、同7月24日)
 そして9月7日、県は「不正経理5年で30億円、使途不明金は1億超」の調査結果を発表しました。
    《架空に物品を発注し公金をだまし取る「預け」など県職員が関与した不正経理の総額が、過去5年間で推計約30億円に上ることが7日、県の内部調査で分かった。このうち使途不明金は推計約1億1千万円に上っており、不正経理は知事部局や県教委、県企業庁などほぼすべての部署で見つかった。県総務課行政改革推進室では「不正は組織的に行われたと言われても否定できない」としている。》(『千葉日報』同9月8日)
 企業庁職員が職を辞して内部告発してから34年目の出来事です。
 しかし、先のメールでお知らせしたように、県の幹部たちの言動や表情には反省の色がみられません。ケロッとしているのです。
 県は12月18日に調査結果の詳細を報告します。職員も1000人以上を処分するとのことです。しかし、こんな予想もされています。
    《結局は、“トカゲのしっぽ切り”で終わる。県は、私的に流用した経理担当者数人を免職したり告訴することで幕を閉じる腹だろう。また、「ウラ金をつくらされた職員」(経理担当者)を処分する一方で、「ウラ金づくりを指示したり、それを使った幹部」の責任は追及しないのではないか》
 “トカゲのしっぽ切り”で終わらせず、不正経理や腐敗の実態を徹底的に追及していくことが必要だと思います。
(2009年12月)







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