市川の空気を調べる会 俵 正章
■大気汚染の現状
道を歩いていて息苦しいと感じたことはありませんか? トラックが轟音をたてて横を走り抜けていきます。そんな生活の中で、私たちが呼吸している空気はどうなってしまっているのでしょうか?
以前は、大気汚染の元凶といえば、四日市ぜんそくに代表されるように、工場の煙突から出る煤煙でした。この当時は、硫黄酸化物による汚染が深刻でしたが、1969年に環境基準が設定され、現在では、硫黄酸化物の汚染は相当改善しています。今では、大気汚染の主役は、工場のような固定発生源から、移動発生源I車による汚染に変わってきています。
汚染源の変化とともに、大気汚染物質も硫黄酸化物から窒素酸化物へと変化してきました。二酸化窒素(NO2)は、物が高温で燃えるときに、大気中の窒素が酸素と結びついて発生します。この二酸化窒素は、喘息などの呼吸器系の疾患を引き起こすといわれています。また、他の物質との複合汚染の汚染も問題になっています。さらに、汚染源が移動するため、その責任の所在が分かりづらく、汚染者が責任をとるという簡単な構図では問題が解決しなくなってきています。
■市川の大気汚染
汚染をみるうえで、一つの目安として環境基準が設定されています。国の環境基準は、「一時間値の日平均値が0.04ppm〜0.06ppmまでのゾーン内、又は、それ以下であること」です。場所にあわせて環境基準を決めてくださいよ、ということで幅を持たせ、こんな変な基準になっています。千葉県では0.04ppmが基準になっています。
ところで、この環境基準は守られているのでしょうか。97年度では、0.06ppmをクリアしている測定局は8局中5局で、0.04ppmをクリアしているところはありません。市が測定している窒素酸化物の経年変化をみると、ほぼ横ばい、あるいは漸増です。
「市川の空気を調べる会」では、1992年から、年に2回、6月と12月に二酸化窒素の測定を行っています。その中で分かってきたことは、道路沿いなどではほとんど環境基準が守られておらず、それどころか、非常にひどい汚染の状況になっているということです。
汚染が特にひどい個所は、道路では市川松戸街道(県道)、国道14号線と湾岸道路(高速・国道)です。地域的にみると、市川市の行徳地区が最も汚染が進行しているように思います。また、道路沿いに汚染濃度の高い地域が分布しており、汚染源が道路にあることは明白です。
■外環道路は大気汚染をより深刻に
東京外郭環状道路(外環道路)計画のことも忘れてはいけません。計画案によれば、市川市内の中央を南北に走り、住宅街や商業地の真ん中を通ることになります。
外環のアセスメントもいいかげんなもので、交通量予測は1日最高8万9000台となっていますが、現在の埼玉外環では、1日13万台近い交通量があります。また、二酸化窒素の予測は、現在の削減計画がうまくいった場合を想定して行われています。しかし現在、二酸化窒素の削減計画は、はっきり言って失敗している状況です。このように、低く見積もった濃度でさえ、0.06ppmの環境基準をぎりぎりクリアできる程度なのです。
そして、二酸化窒素よりも影響の大きいといわれる浮遊粒子状物質については、影響評価をしていないというありさまです。さらに、外環だけの交通量でアセスを行っているので、国道や県道などの既存の道路の交通量が増える分に対しては、何ら配慮されていません。
外環の構造は、大半が掘割スリットです。ですから、排出されたガスは、上空にただ撒き散らされるだけです。一般国道部にいたっては、地上を走るのですから、交差点付近などでは汚染がひどくなるのが目にみえています。
外環計画は三番瀬の埋め立て計画とも関連が深く、京葉港2期埋め立て計画では、外環を港湾まで延長して第二湾岸道路に接続する計画になっています。つまり、京葉港の物流を、第二湾岸道路と外環道路でさばこうという考えが目にみえています。三番瀬の埋め立て計画も、二つの道路計画も、巨額な費用を必要とし、そのうえ、大きな弊害があるものです。
道路公害を出さないためにも(もう出ているかもしれませんが)、東京外郭環状道路については慎重に議論すべきです。今の汚染を改善するためには、汚染源の幹線道路に対して何らかの措置が不可欠であり、これからの道路整備は一考が必要だと考えます。
(1998年10月)
★関連ページ
- 外環反対連絡会が交通量抑制策などを市川市に申し入れ(2002/11/1)
- 外環道・第二湾岸道を考えるシンポジウムを開催(2002/9/8)
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