ムダで有害な道路を中止させよう

〜第37回「全国道路住民運動交流集会」〜




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 第37回「全国道路住民運動交流集会」が(2011年)11月5、6日の2日にわたって開かれました。主催は道路住民運動全国連絡会(道路全国連)。会場は、東京外郭環状道路(外環道)建設反対運動が40年を迎えた市川市の千葉商科大学です。40団体103人が参加しました。

 最初に、外環道の建設現場や土地収用に抵抗している地権者の住宅などをバスで見学しました。
 5日の集会では、外環反対連絡会の高柳俊暢世話人代表が「外環反対運動の40年」と題した特別報告をしました。高柳さんは、「反対運動はたいへんきびしい状況だが、40年以上、開通を止めてきた。若い世代にも引き継いで市川の街を良くしたい」と述べました。
 つづいて、千葉県自然保護連合の中山敏則事務局長が「千葉県の自然保護と道路問題」と題して特別報告をしました。

 6日は、ムダで環境破壊の道路建設に反対している全国各地の団体がつぎつぎと報告しました。また、高尾山天狗裁判弁護団長の鈴木尭博弁護士が「ムダで有害な道路を作らせないために」と題して特別報告をしました。鈴木弁護士は、公共事業の現状を分析し、日本弁護士連合会が提案する「公共事業改革基本法(試案)」を説明しました。試案の内容をめぐり、議論が活発にかわされました。


■住民訴訟の意義

 鈴木弁護士はこんな話もしました。

 「高尾山裁判はこれまで6つの判決がでたが、いずれも住民側が敗訴した。いったい司法はなんのためにあるのか、ということをいつも痛感している。しかし考えてみると、すでに動き出している何千億円もの道路事業を、わずか3人の裁判官が止めることはかなり勇気のいることだ。裁判官を追及することも必要だが、それだけでは解決しない。裁判官がまともな判決を下せるようなしくみをつくりあげることが必要だ」

 「ムダで有害な道路をつくらせないためには、やはりなんといっても、一つひとつの現場のたたかいをねばり強くすすめることが重要だ。裁判で敗けても敗けても、そこで問題を浮き彫りにし、世論に訴える。そういう点で、高尾山裁判は敗けても意味があった。訴訟はやってもむだ、と思わないで、裁判所を徹底的に活用する。なぜこんなヒドい判決をだしたのか、ということをどんどんつきつけていく。──そういうたたかいを各地でおこしていくことが大切だ」


■公共事業のあり方が改めて問われている

 最後に、「福島第一原子力発電所事故という災禍を機に公共事業のあり方が改めて問われている。私たちはまちづくりや自然保護の運動、そして子どもたちの健康を守りたいと願う人々と連帯し、ムダで有害な道路建設を止めさせ、自然と調和した真に豊かな社会を構築するため、今後もねばり強く運動を続けていく」とする集会アピールを採択しました。



集会アピール



 第37回道路全国連・全国交流集会は40団体、103人が参加して、外環道路への建設反対運動が40年を迎えた千葉県市川市で11月5日、6日の2日にわたり開催された。

 ムダで有害な公共事業は一昨年の政権交代後も一向に止らず、多くの国民に失望を与えている。公共事業費の中でも道路建設のための事業費は突出しており、住民を無視して進められる環境破壊の道路建設をストップさせることは急務である。

 3月11日に起きた東日本大震災は東北地方を中心に東日本各地に甚大で深刻な被害をもたらした。国はそうした被害地域の住民を助け、一日も早い復旧、復興のためにこそ予算を振り向けるべきであったのに、今年度の当初予算における道路事業費は1兆4536億円で昨年度とほぼ同じ規模であった。特に圏央道や外環道など大都市圏環状道路の事業費は大きく、この2つの道路だけで約1200億円もの予算が計上されていた。これは津波で流された鉄道や地震で寸断されている生活道路の全てを復旧させるために必要な予算を上回る規模である。国土交通省は当初、公共事業予算の5%を震災復興費捻出に備えるためとして執行を保留にしてきたが、10月7日、それさえも解除してしまい、さらに災害対策を名目に高速道路建設を一層進めようとしている。国がこうした予算の立て方を改めずに、震災復興を名目に新たな税負担を国民に求めることは許されない。

 福島第一原子力発電所の原子炉事故は政・官・業・学・報(メディア)がつくり上げてきた「安全神話」を一挙に崩壊させた。私達は道路建設をはじめとする公共事業の中に原発と同じ政・官・業・学・報一体の「安全神話」の形成と住民への押しつけを見て来た。建設を前提とし、道路建設の影響を故意に低く評価する環境アセスメントや道路建設の効果を過大に評価する事業評価などである。また必要な情報を国民に隠す手法や公聴会や説明会で行政が音頭を取って情報操作をしてきたことも原発と同じ構図である。さらに言えばこうした行政のあり方をチェックし、その暴走を止める司法がその役割を果たして来なかったことも厳しく追及しなければならない。

 自動車排出ガスと学童の喘息発症との因果関係が大気汚染被害者の粘り強い運動の結果、環境省のSORAプロジェクト(自動車排出ガスと呼吸器疾患との関連についての研究調査)でも明確な形で証明された。これによって自動車排出ガスの影響で苦しむ全国の公害被害者の国による救済は急務となった。また道路建設によって自動車排出ガスが新たな健康被害者を生まないよう、安全側にシフトした環境アセスメント制度を確立し、新規はもとより建設中の道路についても建設を中断しアセスをやり直すことが必要である。

 今回の集会では公共事業の現状を分析し、その抜本的な改革に向けて日弁連が提案する「公共事業改革基本法(試案)」について高尾山天狗裁判弁護団長・鈴木堯博弁護士が特別報告し参加者で議論した。試案の目的は公共事業における徹底した情報公開と市民参加の保障そして客観的で科学的・合理的な評価システムの確立である。私達はこの提案に大いに勇気づけられた。

 福島第一原子力発電所事故という災禍を機に公共事業のあり方が改めて問われている。私達はまちづくりや自然保護の運動そして子ども達の健康を守りたいと願う人々と連帯しムダで有害な道路建設を止めさせ、自然と調和した真に豊かな社会を構築するため、今後も粘り強く運動を続けていく。

 2011年11月6日

第37回道路全国連・全国交流集会参加者一同









「公共事業改革基本法(試案)」をめぐり活発に議論




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