★産業廃棄物・残土


房総は産廃・残土の嵐の中

〜行政が戸惑うほど不法投棄や野焼きも随所で急増〜

残土・産廃問題ネットワーク・ちば  井村弘子




1.県内の随所で残土・産廃の不法投棄

 残土・産廃の不法投棄が千葉県の随所で起きている。市原、銚子、海上はとくに多い。
 そして、野焼きもどんどん増えている。10月の県議会では、佐倉、茂原に野焼きが多いという話がだされた。しかし、トップは、やはり市原であろう。市原では30か所もの野焼きがあるという。どこのゴミを燃やしているのかと調べると、東京、神奈川の住所のついたものが出てくる。そのほとんどは、家を解体したものである。
 なぜ千葉県に運び込むのか、と思う。千葉県の豊富な樹林地帯の谷津田は、残土と産廃の投棄によって、10年前の10分の1に減ってしまっているという。林の木を切っているから「何をしているのか」と問うと、「森の整備」と言う。しかし、そのうちに森がなくなり、アッという間に穴が掘られ、産廃と残土がサンドイッチにつまれてしまう。積まれてしまったらもうおしまいだ。それを撤去することはできない。
 それを県や市町村で撤去するとなると、私どもの税金からということになる。税金は使ってもらいたいことが他にたくさんある。撤去を業者に求めても、なかなかできることではない。積まれる前に反対の声があげなければと思うが、残土については、県の残土条例によって住民の同意は要らないというから始末が悪い。住民が気がついたときにはもう遅い。
 野焼きや不法投棄が最近ますます増えてきたのは、ダイオキシン問題で産廃処分場が少なくなったからである。あわせて、埼玉県の所沢に入れられなくなったゴミが、千葉県に廻ってくるという。県の許可施設の処理能力の倍以上のゴミが入ってきているというから、不法投棄が増えるわけだ。
 県も、住民や市町村からヤイヤイ言われ、監視班をつくったり産廃機動班をつくり、20人が監視に廻っているそうだ。県警も一緒に入っているというが、それでも、深夜、朝駆けのダンプが3分間に1台という有り様ではとても追いつかない。
 県産業廃棄物課の職員が防弾チョッキを着て取り締まるという。その誠意はよくわかるが、やはりどこかおかしいことである。


2.残土・産廃を積まれてから反対しても遅い

 県の産業廃棄物課は後追いではあるが、一生懸命やっている。しかし、暴力団も混じっているこの組織には、とても追いつかない。産廃法を直しても、そんなことは枝葉末節でしかない。
 こうしたゴミはいったいどこから出てくるのか。「循環型ごみゼロ社会」をめざしても、リサイクルを大もとでやってくれなければ、この解決にはならない。今の状態では、残土は産廃のよい隠れ蓑になっている。残土についても「残土法」をつくり、産廃法と並んで独り立ちしなければ、制度を有効に使うということにはならないだろう。
 しかし、残土でも産廃でも、住民は積まれれば被害をうける。人権問題であるが、お金で解決してしまう人もたくさんいる。また、業者も3倍、4倍とお金をつりあげてゆく。
 でも、断固として反対する人もいる。飲み水のこともあるだろう。災害がないと、誰が保証してくれるのだろう。住民の反対がなければ、県は「書類がそろっている。言うことはない」と、許可を下ろしてしまう。反対の意見を出せば、行政は審査のし直しなどを始めるだろう。行政だって分からないから、反対しなければ、業者から提出した書類で、住民は納得しているものと思って「書類が出揃ってている」と業者に許可をおろしてしまう。付近の住民は、高い塀のそとで、その進捗状態も目でみることすらできない。残土にしても産廃にしても、積まれてから反対しても、もうどうにもならない。業者が土地を買い漁る。県では地主に売らないで欲しいと呼びかけている。
 産廃法にも、残土条例にも立地規制はない。水源のすぐそばに、残土の山があり、終末処理場があるところが多い。
 そして、公共事業に対してはノーコメントである。
 たとえば、千葉市幕張5丁目の住宅・都市整備公団のマンション建設では、公団=公共事業としてアスベストを含んだ土の移動で付近の住民に被害が出ている。しかし、「その土はどこに行ったのか」と聞くと、「千葉市の外に運んだことは確かだが、あなた方に言う必要はない」と答える。これはひどい。千葉市は政令都市だから、残土条例は独自のものをもっているが、内容は県とほとんと同じである。やはり、公共事業は別扱いで、情報公開を求めても答えない。


3.行政はもっとしっかり取り組んでほしい

 君津市怒田に管理型の産業処分場の申請が出されているが、ここは小櫃川の支流の御腹川の汚濁につながる。水の流量がない所に、高濃度の汚濁の水が流れ込めば、溢水の危険もある。付近の農業従事者は、その被害を恐れ、反対している。
 しかし、富津市田倉の産廃処分場のように、住民や地元議会が設置に反対し、事前協議も終了していないのに、業者が周りの木を切りはじめ、草刈りをはじめた。県が現地に行き、中止の通告をしたが、聞き入れない。県は業務停止命令を出すというが、業者は奢(おご)っているとしか思えない。
 長生村であったことだが、自分の土地だからよいのだと、建築廃材を高く積み上げ、それがどんどん野積みで増えてゆく。付近の住民が火災でも起きたらと心配し、交番や町役場に行ってもどうにもならない。
 それで、何とかしたいと私たちのところに相談にみえた。「保健所に行って事情を話したら」ということで、うまく撤去の話がついた。いま、7保健所に環境保全班というのが設置されているそうだから、個人でも相談に行ったらよいと思う。
 館山には、服部建設というのが、出野尾、佐野地区に大きな残土の山をつくっているが、今回、またすぐそばの樽沢に許可をとった。それも、名前を変えてテクノスという。住民が、土壌の入手先、搬入元とその土質検査の情報を得たいと情報公開の開示請求をした。その土質検査機関が驚いたことに、「神環保」の名前である。産廃業者の「神環保」は昨年、違法行為で摘発された会社である。その会社が、たとえ代替わりをしていても、なぜと私は思う。この服部建設は港運会社でもある。平成2年のころ、産廃を海洋投棄したとして送検されている。なぜ、そのような会社に、館山の水道水源のところにできる残土堆積の許可を下ろすのだと問い詰めたことがあった。
 「過去は過去として洗い流し、会社を信用している」というのがそのときの答えだった。県は、ゴルフ場の無農薬申請も、業者を信用している。土壌の土質検査も、すべてそんな姿勢である。許可を下ろすにしても、もう少し気構えをしてもらいたいものと思う。このように、第2、第3と同じことが繰り返されことになってしまう。最近は、県産業廃棄物課も一生懸命にやっていることはありがたいと思うし、たいへんなことだと思う。沼田知事も、10月はじめの、県議会第1日目のあいさつで、県下の野焼き、産廃の問題に厳しく勧告していくと発言している。千葉県の残土・産廃問題をしっかりやってもらいたい。
 そういう点では、千葉県が一番ダメだ。地方に行くと、よくそう言われる。首都圏のゴミが入ってくるのだから、どうしようもない。他県のゴミを海や陸から運び込まれ、それで右往左往しているのでは、余りにもみじめではないか。
 産廃、残土が県のなかを嵐のように吹きまくっている現実に、未来はない。

(1999年10月)  






えんじ色の炎が数メートルも立ち上がる野焼きの現場(市原市)。








野焼き現場で、煙と焼却灰に囲まれ、その物凄さに、驚いたり、立ちすくんだり、臭いに鼻を覆う住民(市原市)。










このページの頭に戻ります
「産廃・残土」に戻ります
トップページ | 三番瀬 | ニュース | 自然・環境問題 | 房総の自然 |
環境保護団体 | 開発と行財政 | 自然保護連合 | 書籍・書評 | リンク集 |