〜千葉県自然保護連合がシンポジウムを開催〜
千葉県自然保護連合は2002年2月17日、「房総の自然と環境を守る」シンポジウムを千葉市内の自治体福祉センターで開きました。参加者は四十数人でした。
■“再生”という名の新たな埋め立てに警戒を
当連合の牛野くみ子代表が主催者あいさつをした後、「千葉の干潟を守る会」の大浜清代表が「三番瀬埋め立て計画中止と環境保護」というテーマで講演。大浜さんは、1970年代から本格的にはじまった県内の自然保護運動や、東京湾の埋め立てに反対する運動などについて話しました。東京湾の環境問題については、「埋め立てこそが東京湾の環境破壊の元凶である」と述べました。また、「埋め立ては、最初は工場用地の確保を目的だったが、その後、造成後の土地転売で儲けることを目的として埋め立てが進められた。こうした転売でいちばん儲けたのは三井不動産である。儲けが目的なので、埋め立て地の譲渡価格はどんどんつりあげられ、これが地価の急上昇につながった」などと、埋め立てがもたらしたさまざまな問題を明らかにしました。
三番瀬埋め立て問題については、「署名運動などが堂本知事の白紙撤回表明にむすびついた」「円卓会議は、完全公開や、傍聴者も発言可能という点でたいへん評価できる。しかし、埋め立て計画を撤回したはずなのに、埋め立て推進派の人たちが三番瀬円卓会議を通して“再生”という名の埋め立てを強く主張している」などと述べ、「“再生”という名の新たな埋め立ての動きを警戒したい」などと語りました。
■自然や野の花の魅力を写真で訴える
つづいて、写真家の田中雅康さんが、「都市部の貴重な自然〜スライドでみる房総の野の花」とテーマで講演。田中さんは、各地で撮ったさまざまな野の花の写真をスライドで見せ、都市部に残る野の花や自然のすばらしさを語ってくれました。そして、「都市化や開発が進むなかで、野の花のなかには、急激に数を減らし、絶滅が心配されているものも多い。盗掘も深刻な問題になっている。花たちがいつまでも咲くことができるように、写真を通じて、できるだけ多くの人に野の花の魅力を知ってもらい、緑地保全の大切さなどを訴えていきたい」と述べました。
■高速道路を借金で造れる時代は終わった
二人の講演のあとは、環境保護運動を進めている方々からの報告です。
最初は、外環反対連絡会の高柳俊暢代表が「県内の高速道路計画と外環道反対運動」を報告。高柳さんは、県内における高速道路計画の概要や、高速道路が次々とつくられる理由、高速道路がもたらした膨大な借金、高速道路をめぐる現状、堂本新知事の対応などについて話しました。
「高速道路を借金で造れる時代は終わった」「本当の豊かさをもたらすものは何かを考える時代」と熱っぽく語り、堂本知事の対応については、「“高速道路中心の交通政策は見直すべき”が立候補時の所信だったが、知事就任後は“高速道路の整備は必要”に変わった」「財政面から考えれば、第二東京湾岸道路や東京湾口道路の具体化は難しい。知事は現実を見すえた対応が求められる」などと述べました。
そして、私たちに求められている課題として、「自然保護、環境保全の声を高めるとともに、高速道路にかわる交通体系や既存の開発計画にかわる“まちづくり”“むらおこし”や地域振興策を示すこと」「千葉県をよく知ること」などをあげました。
■盤洲干潟は消滅の危機に瀕している
つづいて、「小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会」(略称・盤洲干潟を守る連絡会)の御簾納照雄事務局長が「乱開発から盤洲干潟を守るために」というテーマで報告。御簾納さんはまず、木更津市の沿岸に広がる盤洲干潟について、1400ヘクタールの広大な面積を持つ日本最大級の砂質干潟であることや、植物約350種、野鳥128種、魚類60種、底生動物約40種のほか、地球上でこのアシ原のある局地的な場所にしか棲息しない昆虫も発見され、学術的にも貴重な財産であることなどを紹介しました。
しかし、東京湾アクアライン開通後、干潟の隣接地に開発の目が向けられ、自然保護団体の反対を無視して強引に大型温泉施設が建設されたことや、大型遊戯施設などの建設計画が進められていることなどを話し、「干潟はまさに消滅の危機に瀕している」と訴えました。
そして、干潟に砂を補給している小櫃川の最上流域に位置する自然豊かな「七里川渓谷」をダム(追原ダム)建設から守るために運動し、ついにダム計画を中止させたことを話し、盤洲干潟を守るためにさまざまな運動をすすめていく決意を述べました。
■産廃・残土投棄から房総の自然を守ろう
つぎの報告は、「残土・産廃問題ネットワーク・ちば」の井村弘子事務局長です。井村さんは、「産廃・残土投棄から房総の自然と県民生活を守るとりくみ」というテーマで、房総半島の各地で産廃・残土投棄がたいへんひどい状態になっており、自然が大規模に破壊されていることや県民の生命や健康が脅かされていることを話しました。
そして、海上町の住民投票で有権者の85%が「設置反対」と意思表示したにもかかわらず、建設が許可されたエコテック産廃処分場問題で、住民が工事着工の差し止め訴訟をおこしたことや、県内のあちこちで産廃・残土の搬入や投棄に反対する運動がおきていることなどを紹介し、産廃・残土投棄から房総の自然を守ることの大切さを訴えました。
■常磐新線沿線の巨大開発は破綻必至
つぎは、「常磐新線・巨大開発を考える千葉県連絡会」の林計男代表による「常磐新線沿線開発の根本的見直しを求めて」です。
林さんはまず、常磐新線沿線整備事業は、新線建設と併せて沿線を用地買収と一体型土地区画整理を組み合わせ、柏市、流山市を中心に、業務核都市をつくる巨大開発だが、「三セク新線火の車」「常磐新線はお先真っ赤」と報道されているように、財政的に展望がなく破綻が必至であることを指摘しました。
また、堂本知事が、昨年3月の県知事選挙中、「鉄道が通るから大規模開発をするというバブル的発想は根本的に改めることが時代の要請である。鉄道と一体型の大規模開発は凍結し、環境、財政、農業、町のあり方などの観点から県民と情報を共有して広く議論を行い、勇気をもって計画の根本見直しに踏み出す」と公約していたのに、知事就任後は事業の積極推進の姿勢になったことについて、「公約違反を平気でやっており、かつての青島東京都知事と同じように無責任知事と言わざるとえない」ときびしく批判しました。
また、オオタカが生息する流山市の「市野谷の森」について、「こんもりと木が茂り、オオタカが生息している森をつぶし、代わりに、残土・産廃が捨てられていてビルなどが建設しにくい場所を都市公園として整備するもので、自然破壊のなにものでもない」と指摘しました。 林さんは、この開発事業について猛反対している住民も多いことなどを紹介し、あきらめずにねばり強く運動していくと語りました。
■環境行政の抜本的改革を
〜環境破壊を許した構造を変えよう〜
最後の報告は、「千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会」の川本幸立事務局長による「環境行政の抜本的改革を求める」です。川本さんは、千葉市緑区の土気東地区で区画整理事業によって豊かな自然が大規模に破壊されつつあることや、市原市の県射撃場周辺で鉛汚染が深刻になっていること、1950年代からはじまった京葉臨海開発や、その後の千葉新産業三角構想、リゾート開発などによって、房総半島で自然破壊や環境汚染が大規模に進んだことをなどを話しました。
そして、堂本県政のもとで進められている「ちば環境再生計画」(仮称)について、「“再生”の意味をきちんと定義することが必要」「保存にまさる再生はないということを明確にすべき」「環境再生事業を進めるために数百億円の寄付を集めるというが、たとえば某製鉄会社が4億円を寄付したら、今までの環境汚染の責任は免除される恐れもある。これは、汚染者負担の原則をあいまいにするものである」などと、さまざまな問題点を指摘しました。
そして、「PFI、NPO、“環境再生”がクローズアップされているが、これらは、今までの公共事業の悪い面をひきつぎ、新たな環境破壊をもたらす“原動力”になるのではないかと危惧している」と語りました。また、「環境の破壊や汚染を許した構造を抜本的に変えることが強く求められている」と強調し、県官僚の天下り、事実を報道しないマスコミ、行政官僚の無責任と倫理の無さにメスを入れていくことなどの必要性を強調しました。
討論では、“再生”をうたい文句にした新たな環境破壊の動きに警戒することや、NPOが推進役になって環境ビジネスの動きが強まっていること、房総の貴重な自然を守るためにさまざまなとりくみをすすめることの必要性などについて、活発に意見が交わされました。
シンポジウムの概要 |
●日 時 2002年2月17日(日) 13:00〜17:00 ●会 場 自治体福祉センター 4階会議室 ●内 容 ・講 演 三番瀬埋め立て計画中止と自然保護運動 ……………………………千葉の干潟を守る会 代表 大浜 清 都市部の貴重な自然〜スライドでみる房総の野の花〜 ……………………………………………………写真家 田中雅康 ・報 告 県内の高速道路計画と外環道反対運動 …………………………………外環反対連絡会 代表 高柳俊暢 乱開発から盤洲干潟を守るために …………………盤洲干潟を守る連絡会 事務局長 御簾納照雄 産廃・残土投棄から房総の自然と県民生活を守るとりくみ ………残土・産廃問題ネットワーク・ちば 事務局長 井村弘子 常磐新線沿線開発の根本的見直しを求めて ………………………住みよい流山をつくる会 会長 林 計男 環境行政の抜本的改革を求める …………千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会 事務局長 川本幸立 ●主 催:千葉県自然保護連合
「千葉の干潟を守る会」の大浜清さんは三番瀬をめぐる動向についてふれ、「“再生”という名の新たな埋め立ての動きを警戒したい」などと語った。
写真家の田中雅康さんは、各地で撮ったさまざまな野の花の写真をスライドで見せ、都市部に残る野の花や自然のすばらしさを語ってくれた。
「外環反対連絡会」の高柳俊暢さんは、県内における高速道路計画の概要や、高速道路が次々とつくられる理由、高速道路がもたらした膨大な借金、高速道路をめぐる現状、堂本新知事の対応などについて話し、「高速道路を借金で造れる時代は終わった」「本当の豊かさをもたらすものは何かを考える時代」と熱っぽく語った。
「小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会」の御簾納照雄さんは、東京湾アクアライン開通後、盤洲干潟の隣接地に開発の目が向けられ、自然保護団体の反対を無視して強引に大型温泉施設が建設されたことや、大型遊戯施設などの建設計画が進められていることなどを話し、「干潟はまさに消滅の危機に瀕している」と訴えた。
「残土・産廃問題ネットワーク・ちば」の井村弘子さんは、房総半島の各地で産廃・残土投棄がたいへんひどい状態になっており、自然が大規模に破壊されていることや県民の生命や健康が脅かされていることを話すとともに、産廃・残土投棄から房総の自然を守ることの大切さを訴えた
「常磐新線・巨大開発を考える千葉県連絡会」の林計男さんは、常磐新線沿線整備事業は「三セク新線火の車」「常磐新線はお先真っ赤」と報道されているように、財政的に展望がなく破綻が必至であることを指摘した。そして、この開発事業について猛反対している住民も多いことなどを紹介し、あきらめずにねばり強く運動していくと語った。
「千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会」の川本幸立さんは、堂本県政のもとで進められている「ちば環境再生計画」(仮称)について、「“再生”の意味をきちんと定義することが必要」「保存にまさる再生はないということを明確にすべき」「環境再生事業を進めるために数百億円の寄付を集めるというが、たとえば某製鉄会社が4億円を寄付したら、今までの環境汚染の責任は免除される恐れもある。これは、汚染者負担の原則をあいまいにするものである」などと、さまざまな問題点を指摘した。
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