〜ゴミ弁連が木更津市でシンポ〜
4月27日、木更津市内で「生命の水源を守ろう!」と題したゴミ弁連主催のシンポジウムが開かれました。参加者は200人以上で大盛況でした。
「ゴミ弁連」の正式名称は「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」。全国の弁護士が集まり、住民とともに闘おうと結成されました。
●循環型社会の実現が21世紀の課題
第1部は、まず、中村敦夫参院議員が「21世紀の課題 循環型社会の実現に向けて」というテーマで基調講演。講演要旨は次のとおりです。
- 私は「公共事業チェック議員の会」の3代目の会長をしている。この会は自民党議員も含めた超党派で発足したが、私が会長になったら自民党議員は全員抜けてしまった。公共事業の見直しを本気でとりくもうとしたからだ。公共事業の見直しは、自民党にとってはとても許せないことだ。
- 地方経済は公共事業に頼りきっている。たとえば沖縄県石垣市に計画されている新石垣空港の建設は不要なものだが、住民の4分の1が公共事業に頼っているので、「賛成」という人が多い。全国をみても、船がほとんど来ない港がある。また、静岡県に計画されている静岡空港は、自衛隊の航空区域に挟まれていて、たいへん危険な空港だ。必要性もまったくない。
- 福井県のある所にゴミの山ができ、どんどん高くなってしまった。しかし、それを県議会が容認してしまった。どこでもみられることだが、産廃処分場をめぐって政治家、暴力団、業者の強力な三角関係ができている。
- 福井県は、ゴミと原発で成り立っている。そこでは、産業でなりたたせるという考え方がなくなってしまっている。多くの福井県民は今、危険とゴミで食っていて、非常になさけない状態になっている。地方自治も喪失してしまっている。
- ゴミ問題解決の基本はゴミの量を減らすことだ。しかし、そういうとりくみをしようとすると、経済産業省がつぶしにかかってくる。環境省もおかしくなっている。環境庁から環境省へ格上げになって予算が増えたら、天下り先を一生懸命つくるようになった。国会の環境委員会も、環境のことを深く考えない議員が非常に多く、あまり期待できない。
- こういうことから、政治を変えることが重要になっている。しかし、環境運動をやっている人は「政治はキライ」という人が多い。
- 人間社会に活気を与えたものは限りない欲望だ。しかし、20世紀後半から、無制限な欲望の追求は考え直したほうがよいのではないかという疑問もおきてきた。
- イラク戦争も、米国の石油資源確保の戦略にもとづいている。中東の石油を支配するという戦略だ。しかし、サウジアラビアは米国の言うことを聞くが、イランやイラクはどうにもならない。そこで、恥も外聞もなく戦争をしかけた。「大量破壊兵器を隠している」とか「民主化が必要」などというのは単なる口実でしかない。
- したがって、イラク戦争の根底には大量消費・大量浪費型の社会構造がある。これは地球の温暖化ももたらしている。地球温暖化によって海面上昇や砂漠化が進んでいる。このままでは、100年後には温度が5度もあがるといわれている。5度もあがると人間は生きていけず、人類は滅亡する。
- 石油に頼っている社会を、燃料電池や太陽電池などで支えることは不可能だ。そこで、浪費型から節約型へ転換することが必要になる。たとえば、自動ドアなどはまったく必要ない。ドアは手であければよい。“技術は非常に進歩したが、人間の脳は昔と同じ”と言われている。自然と共存できるゆったりした社会をつくるべきだ。
●カナダ・ハリファックス市の廃棄物資源管理(ゴミゼロ提案)
〜脱「焼却」、脱「埋立」に向けた社会実験〜
つづいて、環境総合研究所の青山貞一所長(武蔵工大教授)が「カナダ・ハリファックス市における社会実験──脱「焼却」を実現、脱「埋立」に向かう」と題して講演しました。同市における脱「ゴミ焼却」などの先進事例を話してくれたもので、要旨は次のとおりです。
- ハリファックス市はカナダの最東端、北大西洋に面するノバスコシア州にある。州の人口は94万人。ハリファックス市はノバスコシア州最大の町で、人口は36万人。主要産業としては、北大西洋面する最大規模の漁協を背景とした漁業がある。
- ノバスコシア州では、1990年代はじめ、ゴミ最終処分場の立地などをめぐって行政と住民の激しい対立があった。5年の歳月をかけ最終処分場の立地選定を市民参加で行なうなかで、スチュワードシップにもとづく(1)生ゴミの堆肥化、(2)容器のデポジット制、(3)紙、プラスチック、タイヤなどの再資源化を柱とした資源菅理を生み出した。
- ノバスコシア州全体で90カ所の環境デポ(収集所)、大型2カ所を含む18カ所の生ゴミ堆肥化施設がある。現在、焼却炉はシドニー地区に特殊用途のものが1炉あるだけ。過去には膨大な数の処分場があったが、現在は5年の歳月をかけ市民参加で立地選定したもの以外はすでに終了した小規模なものがある。
- ハリファックス市が中心になって1995年に行なった廃棄物資源管理(ゴミゼロ提案)は、何らむずかいことではない。それはゴミとされる資源の有効利用を最大化し、同時にゴミの量を削減することにほかならない。
- 最終処分場に行っているゴミを、排出段階で資源を分別、収集する。デボジット制度を導入し、徹底して容器の回収に努めるとともに、ほかの一般廃棄物についても、(1)有機性廃棄物(生ゴミ)、(2)資源化可能ゴミ、(3)有害廃棄物に収集段階、処理段階でも徹底分別することにある。この戦略の目標は、ゴミの減量化、家庭内有害廃棄物の適正処理、家庭での生ゴミの堆肥化とともに、教育や普及計画も含まれている。
- ハリファックス市を中核としたノバスコシア州のゴミゼロ戦略の中核は、生ゴミの「堆肥化」にある。これが戦略成功のカギを握っている。グリーンカートコンテナと呼ばれる特別容器に堆肥化できる生ゴミを分別して集める。排出段階で分別されたゴミは、リサイクル施設、堆肥化施設、家庭内有害ゴミの処理施設に運ばれる。すべての廃棄物は、(1)資源化できるもの、(2)堆肥化できるもの、(3)有機物が抽出されることになる。
- 容器のデポジット制度とあわせ、これらリユース、リサイクルによってゴミが資源の価値を生み、同時に各種の運営資金を生み出している。さらに、処理されることなく最終処分場に埋め立てられるゴミがなくなることによって、有毒浸出水や排ガス、悪臭、野鳥や昆虫などが集まってくるというさまざまな問題から解放される。
- 事業者(工場・事業所・商店・研究所など)も、自治体が出資するりサイクル施設、堆肥化施設、分別施設を利用することができるが、独自に類似の施設を運営してもよい。施設の利用料金はごみの分別を促進させる。
- このようにカナダのノバスコシア州では、ゴミ処理も環境も、そして雇用もうまくいっている。これに対し、日本は基本的な対策がまちがっているで、どれもうまくいかない。国がやらなくても地方がやることが必要だ。
◇ ◇
2人の講演のあと、第2部では県内や茨城県笠間市で産廃・残土処理場建設などに反対する住民団体などが活動報告。第3部では「住民を守る武器としての条例」と題して、環境行政に取り組む県や君津市の職員を交えてパネルディスカッションがおこなわれました。
(文責・『自然通信ちば』編集部)
集会には200人以上が参加。
講演しているのは中村敦夫参院議員
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