市民集会と研修の集い
残土・産廃で
千葉の自然を埋めつくしてもよいのか?
〜「残土・産廃問題ネットワーク・ちば」が開催〜
産廃・残土問題にとりくんでいる「残土・産廃問題ネットワーク・ちば」は10月28日、「残土・産廃で千葉の自然を埋めつくしてもよいのか?」と題して、「市民集会と研修の集い」を県労働福祉センター(千葉市内)で開きました。これは、産業廃棄物や残土の不法投棄などで深刻な環境汚染が広がっていることから、実態や対策を出しあおうと開いたものです。集会の参加者は約70人でした。
三芳村生産グループの八代利之氏は、林業にかかわるなかで炭焼きを復活させ、子どもたちの郊外教育にも活用していることを紹介し、森林の重要さを強調しました。
「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」の御簾納照雄氏は、七里川渓谷の周辺の環境や渓谷の美しい風景をスライドで映写。「ダム建設は中止が妥当」とした県の評価監視委員会の判断を尊重し、県がすみやかにダム建設の中止を表明するよう訴えました。
産廃反対東総住民連絡会の高田豊氏は、県の不許可を厚生省が取り消した海上町、銚子市、東庄町にまたがる産廃処分場建設についての経過と現状を報告。「地元住民の圧倒的多数が反対しているにもかかわらず、業者側が設置を計画している」とし、1市2町の首長が計画地内にある県有地の払い下げを要求しているのに、それに応じない県の姿勢を厳しく批判しました。そして、「産廃処分場の建設を許さないため、住民の運動をさらに大きく広げる」と決意を表明しました。
このほか、富津市田倉地区の産廃処分場設置反対運動や市原市での残土・産廃不法投棄の実態などについての報告がつづきました。
集会後、厚生年金休暇センター(千葉市内)に会場を移し、懇談会を開催。翌日(29日)は、同センターで、田中由美子弁護士による「産廃問題の法的対応について」の講演と学習会を開きました。
集会の概要
●日 時:10月28日(土) 13:30〜17:30
●会 場:千葉県労働者福祉センター(千葉市内)
●内 容:
◎漁業はいま−銚子を例に考える−
銚子市民運動ネットワーク 戸石四郎
◎農業・林業と私 三芳村生産グループ 八代利之
◎七里川渓谷は守られた
小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会 御簾納照雄
◎炭焼きに思う 市原市古敷谷の自然を守る婦人の会 林 町子
◎お茶のみ会でまた明日
農業を考える女性の会(佐倉市) 林 初枝
◎農村を破壊するゴミ問題 旭農業高校 中山先生
◎もう産廃処分場はいらない
産廃反対東総住民連絡会(海上町) 高田 豊
◎田倉産廃処分場設置問題
天羽の水を考える会(富津市) 鈴木紀靖
◎埋められた産廃が我々を脅かす
いちはら市民ネットワーク市議 山本友子
《懇親会と学習・研修会》
懇親会 28日(土) 18:30〜20:30
会場:千葉県厚生年金休暇センター(宿泊)
学習・研修会 29日(日) 9:30〜12:00
会場:同上センターの「うちぼう」
講演:田中由美子弁護士「法的対応について」
●主 催:残土・産廃問題ネットワーク・ちば
●問い合わせ:TEL・FAX 047-454-7549 井村弘子
開会あいさつ |
環境にやさしい行政への転換を求めて
〜「市民集会と研修の集い」の開催にあたって〜
残土・産廃問題ネットワーク・ちば 代表 藤原 寿和
千葉県は、昭和30年代以降の急激な工業化と都市化の進展に伴って、身近な自然の改変と良好な自然景観や貴重な動植物の消失、大気汚染や水質汚濁、地盤沈下などの激化による生活環境の悪化などに見舞われてきました。
とくに、南房総地域は良質な山砂の産出地帯のため、東京湾の埋め立て開発や首都圏の宅地造成などに利用され、また、ゴルフ場開発やりゾート開発のラッシュに伴って山林がいくつも失われるなど、大規模な自然破壊が進行してきました。
そして、山砂を採取した跡地には、首都圏の公共事業や民間の宅地開発事業などから出る大量の残土や産廃の埋め立て処分が行われてきました。また、千葉県内のコンビナート群から吐き出された大量の産廃が県内の各地に埋められてきましたが、その後、そうした埋め立て地から有毒な硫化水素ガスの噴出や、環境ホルモン物質の河川への流出が起きてきています。
とくに、千葉県内の残土や産廃の違法な埋め立て処分による自然破壊と環境汚染の実情はすさまじく、過去、幾度となく社会間題となり、残土条例の制定や産廃規制指導の強化などにより対応がなされてきました。しかし、一向に改善される気配はなく、今日ではますます巧妙化、悪質化が進み、県内の各所に残土や産廃の山が築かれてきています。
とりわけ、市原市域内の山砂採取現場やゴルフ楊、残土・産廃処分場、いたる所での野焼きや不法投棄現場の惨状は、目を覆いたくなるほどの酷い実情です。
なぜ、千葉県内では、かくも無惨な自然破壊が進行してしまったのでしょうか。その原因は、ひとえに開発優先行政を進めてきた県をはじめとする県内各市町村行政の責任に帰すると言っても過言ではありません。国の法律の不備といった面もありますが、県行政の中で、農地法や森林法の運用や、県独自の自然環境保護条例をはじめ残土条例などが全く有効に機能していないことが最大の原因だと思います。
この開発優先の行政責任の一方で、千葉県内の農林漁業の衰退が、結果としてゴルフ場開発や残土や産廃の違法な埋め立て投棄を許してきた原因の一端であると思います。休耕田の増加や山林の維持ができなくなってきたところをめがけて、残土や産廃が投棄きれてきています。また、農林業の不振に加えて相続税問題もからんで、ゴルフ場造成や残土・産廃処分楊建設のために農地や山林を切り売りせざるをえないといった事情も介在しており、地権者を責めているだけでは問題の解決にはならないと思います。こうした事情を抜きにして、ただ自然を守れ、農地や山林を開発業者に売るなと叫んで運動しているだけでは、農業者や林業者の共感は得られないのではないかと思います。
私たちは、今後、残土や産廃の処分から県内の自然環境を守るためには、農林漁業の再生が絶対的に欠かせないと思います。そのためには、県行政にとどまらず、日本の食糧減策や林業政策にも目を向けていく必要があると思います。
日本の農業・農村をとりまく環境は、農業従事者の大幅な減少や、長期にわたる不況による農畜産物の価格低迷などにより激変しています。しかし、昨今の国の政策において、環境保全型農業の推進や、「農業基本法」に変わって「食料・農業・農村基本法」が制定されるなど、法改正などが順次行われてきています。
千葉県行政においても、農林業については、より一層の発展を図るため、農業行政の長期ビジョンである「千葉県21世紀農業展望構想」や「みどりの基本構想」などを基に、「ちば新時代5か年計画」のなかで各種施策を定めて進めてきています。果たして、これらの計画がほんとうに私たちが望むような解決策につながるのかどうか、県内の農林漁業関係者と交流しながら勉強していきたいと思います。
今回の交流合宿もそのための第一歩であると考えています。
集会には約70人が参加。産廃・残土の不法投棄から房総の自然や農林漁業を守ろうと、さまざまな分野の人が意見を持ち寄った。
「銚子市民運動ネットワーク」代表の戸石四郎さん。戸石さんは、漁業の街・銚子市で、漁業が衰退し、漁業従事者の数が減り続けていることなどを話し、循環型社会に位置づけられた環境保全・資源管理型漁業への転換が求められていることなどを強調した。
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