県が自慢する「パルプラザ幕張」は
惨たんたる状態
開発問題研究会/1999年3月
幕張新都心や「かずさアカデミアパーク」など、千葉県が県政の最重要課題として莫大な県費を投入してきた大規模開発は、軒並み破綻しつつある。にもかかわらず、県は、「21世紀は千葉県の時代」などというバラ色のデマを盛んに流し、採算などの見通しがまったくない巨大開発をつぎつぎと推進しようとしている。たとえば、三番瀬の埋め立ては相変わらず強行の構えであり、常磐新線沿線開発や圏央道(首都圏中央連絡自動車道)はすでに強引に事業に着手している。
こうした中、千葉県が進めている大規模開発の実像がどのようなものであるかをみてみたい。
◆企業進出の呼び水にと「パルプラザ幕張」を建設
千葉県自然保護連合が1月17日に開催した「房総の自然と開発を考えるシンポジウム」の講演で、銚子市民運動ネットワークの戸石四郎代表は、「理念も教養もない人物が非常に強大な権限をもっていて、無責任にハンコを押しまくっている」と語った。まさにそのとおりで、千葉県の開発県政はその典型である。一例として、幕張新都心内の「パルプラザ幕張」をみてみよう。
パルプラザ幕張は、県企業庁が1997年4月、幕張新都心への企業進出の呼び水にする目的で6億円を投入して建設した施設である。企業庁発行の『幕張アーバニスト・URBANIST』は、このパルプラザをこう紹介している。
「『パル』は英語で『仲間』を意味する。この新しい施設は、幕張で働く人、住民、ビジターが気軽に集い、そして楽しめることを目的につくられたにぎわい空間だ。7軒のレストランに囲まれたベンチが設けられ、フリーマーケットや縁日には近隣の家族連れでにぎわう。板張りのオープンデッキ(中庭)を囲んでレストラン、カフェ、ファーストフード、ラーメン専門店、焼き肉やなどが立ち並ぶ……。」「『パルプラザ幕張』は、このふたつのキーテナントを軸に、いくつものにぎわいが交錯している。昼間は、新都心へのビジターやマーケットに買物に来る住民・ランチタイムのビジネスマンたち、アフターファイブには家族連れや仕事帰りの人々が集まってくる。」
◆実態は“ゴーストタウン”
〜ラーメン店主が“怒りの貼り紙”〜 ところが、実態はどうか。パルプラザについて、98年9月24日付けの読売新聞はこう記している。
「飲食店など8店舗が営業するが、場所の悪さなどから経営難に陥り、撤退の憂き目を見た店が早くも2つある。」「県の担当者が『この時間帯なら、なかなかのにぎわいですよ』と太鼓判を押した、夕方6時過ぎにのぞいてみた。だが、どの店も、従業員の方が客より明らかに多く、季節外れのリゾートに迷い込んだようなわびしさが漂う」
これは、けっしてオーバーな表現ではない。現地に行ってみれば一目瞭然で、毎日のように閑古鳥が鳴いている。同紙が書いているように、マクドナルドなど2店はすでに撤退した。
そして、ラーメン専門店も昨年(1998)年10月、「閉店のお知らせ」を店の入り口に貼り出した(現在も貼り出し中)。単なる「お知らせ」ではなく、“怒りの貼り紙”である。記載内容は次ページのとおりである。これをみれば、県(企業庁)の姿勢がいかにいい加減で無責任なものであるかがわかるだろう。県は、パルプラザを「幕張新都心のにぎわい広場にする」とか「企業進出の呼び水にする」などと大々的に宣伝していたが、実際は「ゴーストタウンと云った方がピッタリ」なのである。また、貼り紙には、「県企業庁は本気でにぎわい広場にする気など毛頭なく、ただ遊休地があったから、このような施設でもつくれば多少は人が来るだろうくらいな、出店者の採算など度外視してつくった施設で、我々はたたき台になった犠牲者である」と書かれているが、そのとおりである。
そして、ラーメン専門店も昨年(1998)年10月、「閉店のお知らせ」を店の入り口に貼り出した(現在も貼り出し中)。単なる「お知らせ」ではなく、“怒りの貼り紙”である。記載内容は次ページのとおりである。これをみれば、県(企業庁)の姿勢がいかにいい加減で無責任なものであるかがわかるだろう。県は、パルプラザを「幕張新都心のにぎわい広場にする」とか「企業進出の呼び水にする」などと大々的に宣伝していたが、実際は「ゴーストタウンと云った方がピッタリ」なのである。また、貼り紙には、「県企業庁は本気でにぎわい広場にする気など毛頭なく、ただ遊休地があったから、このような施設でもつくれば多少は人が来るだろうくらいな、出店者の採算など度外視してつくった施設で、我々はたたき台になった犠牲者である」と書かれているが、そのとおりである。
県批判の貼り紙を貼りだしているラーメン店
貼り紙の記載内容
平成11年5月10日を以って閉店致します。それまでは平常通り営業するつもりですので、御利用の程よろしくお願い申し上げます。 ここパルプラザは、県企業庁が「幕張新都心のにぎわい広場にする」と、天下の朝日新聞に堂々と広報し、出店者を募集した場所です。オープンして1年半経過しました。 この現状がにぎわい広場と云えるんでしょうか? ゴーストタウンと云った方がピッタリです。ホテルのプールで釣り糸たれてるような、JRの引込線で駅弁売ってるようなもんです。 県企業庁は本気でにぎわい広場にする気など毛頭なく、ただ遊休地があったから、このような施設でもつくれば多少は人が来るだろうくらいな、出店者の採算など度外視してつくった施設で、我々はたたき台になった犠牲者です。 すでに2店舗が撤退したように、商売になるような場所ではありません。云うなれば、ここは幕張のチベットです(チベットの方居たらゴメンナサイ)。県の誇大広告にすっかりハメられました。 1カ月約25万円の家賃の割には、入口のドアはもう4回も壊れるし、今どきめずらしいテレビも映らないお粗末な店舗です。 このような場所に二千数百万円もかけて出店し、毎月持出しの状態で、回収の見込みなどまったくなく途方にくれている状態です。 中庭に企業庁が大して役にも立たないポールとロープを設置してくれました。私に首でもつれよと云ってるような気がしてなりません。行政とは困ってる人々を助けてくれる機関だと思っていましたが…… 沼田知事は、このパルプラザの現状をどれ程御存知でしょうか? 県の諸事業の中ではパルプラザの失敗例などハナクソみたいなもんでしょうが、私にとっては生活と命がかかっています。 県はこの責任をどうとってくれるのか、明確なる回答を早急にしていただきたい。知事選挙では、家族4名、沼田氏に投票しました。しかし、これではあんまりではありませんか。店舗契約書の内容にしても、最初に違反をしているのは県企業庁です。我々みたいなちっぽけな店が声を大にして県とかけ合っても相手にされません。 故に、県のずさんな無責任なやり方をなるべく多くの県民・市民の方々に知っていただくために、つたない文章ではありますが、ここに掲示致しました。 云いたい事はまだまだ書き尽くせません。各マスコミの方々聞きたい事がありましたら、何でもお話し致します。 是非お力をおかし下さい。 平成10年10月 ニューラーメンショップ 店主 |
いつも閑散としているパルプラザ幕張。(写真は祭日に撮影)
◆出店者は無責任県政の犠牲者
パルプラザは、まわりに何もなくて、どうみても人がやって来そうにないところに造られている。「どうしてあんなところに造ったのか」と企業庁職員に聞くと、こんな答えがかえってきた。
「はじめは、人の流れが比較的見込めるJR海浜幕張駅前につくるという話もあった。しかし、『そういう便利なところは大企業誘致用としてとっておけ』という幹部の指示でダメになり、結局、大企業がやってきそうにもない、立地条件の悪いところに建設が決まった」と。
そして、企業庁の職員は誰もがこう言う。「あんな条件の悪いところに造れば、閑古鳥が鳴くのは当然だ」。
「はじめは、人の流れが比較的見込めるJR海浜幕張駅前につくるという話もあった。しかし、『そういう便利なところは大企業誘致用としてとっておけ』という幹部の指示でダメになり、結局、大企業がやってきそうにもない、立地条件の悪いところに建設が決まった」と。
そして、企業庁の職員は誰もがこう言う。「あんな条件の悪いところに造れば、閑古鳥が鳴くのは当然だ」。
ご覧のように、パルプラザの出店者は、県企業庁にだまされたのであり、無責任行政の犠牲者となったのである。
JR海浜幕張駅前に広がる空地。ここにパルプラザ幕張を
造るという案もあったが、「便利なところは大企業誘致用
としてとっておけ」という幹部の指示でダメになった。
◆中小零細業者には冷淡、大企業にはいたれりつくせり
二千数百万円もかけて出店し、さらに月25万円もの高額家賃を払っているラーメン店主は、県に責任をとってくれるよう訴えている。しかし、「我々みたいなちっぽけな店が声を大にして県とかけ合っても相手にされません」とも書いている。まさにそのとおりで、県は、力のない中小零細業者には冷淡である。
一方で、有名大企業へはいたれりつくせりで出血サービスをしている。その一例は幕張プリンスホテルである。
一方で、有名大企業へはいたれりつくせりで出血サービスをしている。その一例は幕張プリンスホテルである。
幕張プリンスホテルは、海浜幕張駅の海側にそびえ立つホテルである。県企業庁は1987年、この用地(元県有地)を格安で西武に払い下げた。値段は、1平方メートルあたり約18万円である。売却当時はバブル期で、周辺の土地は1平方メートル当たり75万円(坪250万円)の値がつけられていた。したがって、西武は時価の4分の1ぐらいの価格で条件の良い土地を手にしたことになる。おまけに、西武は土地代金を5年間払わなくてもよいという優遇措置を受けた。
また、プリンスホテル用地として県が西武に土地を格安で売却した際、「メッセと同時にホテルの開業をめざす」が条件となっていた。ところが実際には、メッセが開業してもホテルはできなかった。“メッセのオープンにあわせてホテルを開業しても、客はあまり入らない”とみた西武が、自社の採算を第一とし、県との約束を破ってホテルの開業を4年も延期したからだった。そのため、幕張メッセは「ホテルなどの宿泊施設を持たない世界的にも例のない“欠陥コンベンション施設”としてのデビュー」(毎日新聞、88年5月13日)となった。本来は、県との約束を破った西武に対して何らかの制裁措置がとられるはずであった。実際に、県企業庁内部では制裁措置を検討したという。しかし、堤義明氏と沼田知事のボス交によって、何の制裁措置もとらないことになった。
みられるように、県は、有名大企業に対してはいたれりつくせりで、逆に、中小零細業者や県民に対しては冷淡な姿勢をとりつづけているのである。
ちなみに、県は、「県民だより」やパンフレットなどさまざまな刊行物で、“ゴーストタウン”と化している幕張新都心を「躍進しつづける幕張新都心」などと宣伝している。パルプラザ幕張についても同じで、「にぎわいを生む幕張の新名所」などという宣伝を続けている。パルプラザのラーメン店主も訴えているように、大規模開発を押し進めている県(幹部)の無責任ぶりやデタラメさは相当ひどいのである。
千葉県は、ゴーストタウンと化しているパルプラザを「多くの人でにぎわい、
人々の出会いの場となっています」などと宣伝し、県民をだまし続けている。
(写真は、『ちば県民だより』1999年3月号〈県央版〉の一部)
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