住環境を侵害する乱開発の阻止をめざして

〜まちづくりはそこで生活している人たちが主役である〜


住みよい明るい街づくりの会 世話人 山 本 俊 一   



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1.マンション建築紛争のたどる道

 近年、マンション建築による摩擦が各地でひんぱんに発生している。バブル崩壊後は、割高な用地代金回収のためか、採算上、法規制の限度近くまで高層化する。あるいは、最近はやりの、地下室の容積率不算入措置を逆手に利用した傾斜地に建てる地下室マンションなど、違法性の近いものが目立つ。このためか、住民はよりいっそう反発を強め、問題をますます複雑化させている。
 紛争の多くは次のような経緯で進む。ある日突然、近隣に告知される。住民は、周辺の住環境悪化を理由に建設反対運動を展開する。解決の端緒がつかめないと、住民は自治体に陳情書などで仲介を、あるいは紛争予防調整の条例があれば調停をお願いする。
 自治体はあっせん・調停はできるが、調整力がないため、多くが不本意な結果で終わる。そして、「手続きに問題はない」と建築確認申請は認められる。ここで法廷にもち込むか、泣き寝入りするかの選択に迫られる。そして、行政に強い不満を募らせ、地域の生活環境は自ら守る必要性を痛感して、街づくり運動に発展していく。
 私の住む幕張町五丁目も例外ではない。紛争の要因は住宅・都市整備公団の高層マンション建築にあるので、住民は生活環境保全のため、建物の階層減など形状変更を要求する。公団の回答は「法令に定められた基準内であり、採算上応じられない」である。「法の範囲内であっても、我々と無関係な採算問題で住環境の悪化は容認できない」と住民側は主張する。こうした状況のなかで建築確認が出され、マンション団地工事が進められる。現在は、3棟建築予定のうち、2棟はほぼ完成した。残り1棟も基礎工事を施工中である。



2.乱開発で受ける住民の被害

 工事が進むに連れ、粉塵・騒音のほか、団地建設に伴う排水管布設替え工事などの掘削で家の前の通行にも支障を来たしてくる。また、建物ができあがるにつれ、日照時間短縮、眺望遮断、街並み破壊……と、いろいろと実害が出てきた。
 この中から、私達近隣住民が現在直面し、最も深刻に受け止めている2つの問題について述べる。

(1)プライバシー(まるみえ)侵害

 昨年5月、公団監督事務所における話し合いの席上、住民から「マンションのベランダから北側の住居が、まるみえになる恐れがある。プライバシーの侵害にならぬよう改善をお願いします」と要望が出されたのがはじまりである。
 公団は一部改善したが、今年6月末、一部マンションが建ちあがった時点で、公団職員立ち会いのもと、住民により東南バルコニーなどからまるみえ状態であることが確認された。北側の住居はマンションからよく見える位置、すなわち住居の南側に庭、居間、寝室あるいは浴室など日常生活にもっとも重要かつ長時間利用する部屋が配置されている。また、高所からの「まるみえ」は全く予想もしたこともなく、完全な無防備状態である。
 これに対して公団は、「バルコニーに保護対策を施すとマンションとしての機能に致命傷を与える」、あるいは「第三者が認める受容範囲」と述べ、改善に応じない。もっとも、採算性最優先のマンションにプライバシーの侵害をしないよう求めることは無駄なことかも知れないが、今までこれを求めてきた。



(2)有害物質(アスベスト)有無の疑惑

 マンション建築中の土地は工場跡地で、前所有者は「三菱マテリアル」(旧名:三菱セメント建材)である。その前は「三好石綿」である。社名から推察できるとおり、アスベストを多量に取り扱っていた会社で、操業当時、健康を冒された従業員を多く出し、近隣とはトラブルの絶えない公害工場であった。
 今年5月頃から3棟目のマンションの基礎工事が始まった。その頃から、近隣では粉塵に悩まされ、7月半ば頃から喉の痛みなど異常を訴える人がでてきた。住民は公団に土壌検査のデータの開示を求めたが、「検査データは残土処理手続きに必要なもので、公団の都合により開示はできない」である。最近は工事現場の散水が頻繁に行われているが、不安と疑惑は深まるばかりである。



3.乱開発のない快適な街に向けて

 私は、周囲から「マンション建築紛争は建築確認が終了するまでが勝負」と、よく言われた。が、これは間違いだと思う。幕張町五丁目の場合、公団の説明会の席上で「団地建設は知事・市長に意見照会し、了解を得ている。地元には市の指導要綱や日照条例に基づいて説明を行なう」とよく聞かされた。これは公団法33条(地方公共団体の長の意見の聴取)によるもので、合法的な根回しである。
 地域住民が抱いているまちづくりの願いは、ここで断ち切られる。すなわち、この事前協議により公団トップと千葉市長が合意すれば、後は定められた手続きだけになる。このことは「協議は自治体と、地元民には伝達する」であり、「お上のお布令」に変わる。事実、会合は、住民側は話し合いとして臨むが、公団はあくまで説明会として取り扱った。この構図(根回し方式)は公団に限らず、他のデベロッパーでも同様であろう。
 乱開発の阻止は事前協議前でなければならないと思う。それには行政側の意識や制度の改革を求めることも必要であるが、住民側も今までのように「まちづくりは役所の仕事」の考えを改め、「まちづくりは住民と行政の共同作業」と位置づけ、積極的に参加・参画することによって乱開発を阻止できるし、住民の求める快適な生活環境が得られるのではないか。これが乱開発阻止活動を通して学んだ私の結論であり、どのように参加・参画するかが住民に与えられた宿題であると考えている。

(1999年8月)





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