アクアライン工事後、

盤洲干潟はどのように変化したか

小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会 代表 小関公平



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 盤洲(ばんず)干潟は、千葉県木更津市の金田海岸に広がる日本最大級の砂質干潟である。その干潟が、東京湾アクアライン(横断道路)や大型温泉施設・ホテルの建設で大ピンチを迎えている。


■橋脚掘削ヘドロが盤洲干潟全面に拡散

 アクアライン海上部の工事が平成2年(1990年)に開始され、橋脚掘削のヘドロが、漁場である盤洲干潟全面に厖大(ぼうだい)な量で拡散した。その直後から養殖ノリやアサリの被害が目立つようになり、年ごとに拡大する事態になってしまった。
 それは、干潟の砂地全面にヘドロが覆いかぶさって、アサリやバカ貝の生育を阻害した結果である。もともと少なかったハマグリはほとんど死滅した。


■温泉・ホテルの営業で金田の海は死んでしまった

 平成12年には温泉施設「龍宮城スパ」、14年には「龍宮城ホテル三日月」が営業を開始した。その結果、海の漁業被害はさらに深刻となり、スパから沖合600mに設置してあるアサリ稚貝養殖はほぼ全滅するなどの減少が見られた。それまでノリ養殖漁業者は838名ほどいたが、100名に減少してしまったのも、その頃の出来事である。
 一方、盤洲干潟の後浜に存在していた塩性植物のハママツナ群落は、ホテル開業1年後くらいから立ち枯れや根腐れが見られた。5、6年後の現在は、9割方が無くなってしまった。また、シオクグも半減した。立ち枯れした根株が点々とする無惨な痕跡を、あちこちで見ることができる。
 この事実は、明らかに1日1000トンもの塩化物イオンを含む排水を放流し続けているホテル側の影響としか思えない。
 ホテル周辺の水温が日によって5℃も上昇しているという漁業者の話もある。かつては東京湾に誇る豊饒な金田の海は死んでしまったといっても過言ではないと思う。


■県外アサリがバラ撒かれ、アサリの天敵が増えた

 平成14年は、ホテル三日月から300m離れた干潟に隣接する8haの土地に子供向け「童謡の里」なる施設の建設を山形屋商事(株)(佐藤フジエ社長)が市に申請し、許可された。しかし、これはいまもって建設の兆しがない。たぶん、建設をあきらめたのではないかと思われる。
 金田漁協は潮干狩りをホテルと共同でやっている。が、県外アサリがバラ撒かれ、増えたのはアサリを喰う天敵「サキグロタマツメタガイ」という、タニシに似た貝だけである。


■急速な被害拡大に驚く

 過去十数年を振り返ると、予想はしていたものの、こうもスピードをもって公害被害が拡がっていることに驚いている。
 私たちは、地元金田地区で孤軍奮闘し続ける桐谷新三氏と共闘し、行政・ホテル建設業者・漁協・賛成地元漁民らと対峙し反対した。しかし、ホテル建設は阻止できなかった。その非力さをいまもって悔やんでいる次第である。

(2006年9月)



























後浜の三角洲(中洲)に植生していたハママツナの群落。東京湾沿岸では小櫃川河口域のみにしか植生しない貴重な植物であり、これまで、千葉県の指定記念物として大切に保護されてきた。




上の写真とおなじ場所。ハママツナの群落は、大規模温泉施設「スパ三日月龍宮城」がオープンして以降、わずか2年間で全滅状態になってしまった。「ハママツナ大切に」の写真だけがむなしく残っている。








北部クリークの洲。ここも、かつてはハママツナの群落が植生していたが、今は、高い所にわずかに残るだけ。写真の後ろは、2002年(平成14)7月にオープンした「龍宮城ホテル三日月」。ホテル右側の低い建物は「スパ三日月龍宮城」。





かつて、上記の場所(北部クリークの洲)に植生していたハママツナ群落の写真(紅葉期)。








三角洲(中洲)に数万本も植生していたシオクグ。これも貴重な植物である。




上記のシオクグの群落も、3割が枯れてしまった。








2000年(平成12)にオープンした複合温浴施設「スパ三日月龍宮城」(写真左)と、2002年7月にオープンした「龍宮城ホテル三日月」(写真右)。









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