見通したたないまま2005年開業へ突進
  〜つくばエクスプレス(常磐新線)〜

開発問題研究会

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 (2003年)8月27日付けの『千葉日報』は1面トップで、つくばエクスプレス(常磐新線)が「鉄道用地全域を取得し、2005年秋開業へ前進」と報じています。
 この新線計画は、流山、柏市を経由し、東京・秋葉原と茨城県つくば市58.3キロを最速45分で結ぶものです。鉄道沿線の東京都、茨城、埼玉県を含め、千葉県内は用地取得が最も遅れていました。しかし、26日までに県内の鉄道予定地全域を取得したため、05年秋の開業に向けて大きく前進するというのものです。


常磐新線はお先真っ暗
  ─沿線開発が進まないため大赤字必至─

 しかし、この鉄道計画と沿線開発はお先真っ暗です。新線は大赤字、沿線開発は破綻が必至だからです。
 まず新線です。この新線は、筑波学園都市で科学万博が開催された1985年に計画されました。いわば、バブル景気が芽生えた時期です。鉄道整備と一体的に沿線の地域開発をおこない、大量の住宅・宅地を供給するという青写真が描かれていました。沿線の区画整理事業によって鉄道用地を確保し、沿線人口を増やしながら建設費を回収するという計画です。
 新線の運営会社となる第三セクター「首都圏新都市鉄道(MIR)」が1991年に設立され、事業計画が公表されました。この計画では、開業時の輸送需要見込みは1日あたり47万〜57万人です。沿線開発終了後には、1日当たり63万人を見込んでいました。
 しかし、この見込みは過大、つまりいい加減だったことがわかり、その5年後の1996年に事業計画が見直されました。輸送需要見込みは、開業時で1日当たり33万〜38万人、沿線開発終了後は1日当たり49万人に下方修正です。
 その後、今年(2003年)1月、「首都圏新都市鉄道」は2度目の事業計画見直しをおこないました。開業5年後の需要予測は1日当たり9万人減の29万人、総事業費は9400億円です。
 しかし、それでも過大です。採算もとれません。地価が大幅に下落し、マイホームの都心回帰が続いているからです。新線沿線で住宅開発をおこなっても、人口はあまり増えないことはいまや誰が見ても明らかです。「沿線の区画整理事業によって人口が増え、その沿線の人が新線を利用する」とか「沿線人口を増やしながら建設費を回収する」というのは机上の空論だったのです。
 マスコミも、「事業費回収に黄信号──沿線開発進まず」(『日本経済新聞』1999.2.24)、「首都圏の鉄道新線苦境に」(同、1999.10.23)、「三セク新線火の車」(『朝日新聞』2000.11.22)、「常磐新線に赤信号! 開業しても赤字垂れ流し」(『Yomiuri Weekly』2002.9.29)などと報じています。
 このうち、『Yomiuri Weekly』は常磐新線についてこう記しています。
 税金にしわ寄せがくるという点は、まったくそのとおりです。


沿線開発も破綻必至

 常磐新線の沿線開発も、たいへんな状況になっています。
 県内の流山市、柏市の常磐新線関連の開発面積は約1000ヘクタールにおよびます。開発は、単独買収地区と土地区画整理事業地区の二通りで用地取得が進められています。土地区画整理事業地区は、県(企業庁)や都市基盤整備公団、県住宅供給公社、流山市が事業主体となり、地権者の土地を平均40%ずつ削る形(4割減歩)で鉄道予定地を確保しました。同事業地区以外の単独買収地区では、県が個別に土地交渉を行ってきました。
 こうやって鉄道用地はなんとか確保したものの、区画整理事業は大赤字必至です。保留地の処分(売却)費をあてこんでいますが、保留地の実勢価格が見込んでいる処分単価よりも低くなっているからです。地価の下落は今後もつづくことが確実視されています。
 たとえば、流山市の木地区で区画整理事業を進めている住宅供給公社は、この事業だけで200億円近い借金をかかえ、その返済のメドがまったくたっていません。まさに瀕死の状態です(同公社の借金総額は911億円にのぼります)。保留地が計画どおり売れることは望めないので、公社の借金は今後ますます膨らむことが確実ですが、その尻ぬぐいは県がおこなうことになっています。


流山市が財政ピンチを広報紙号外で市民に訴え

 地元の自治体もたいへんです。たとえば流山市が沿線開発と関連事業に支出する金は840億円で、これは市の年間予算の2.4倍におよぶといわれています。
 8月30日)の『朝日新聞』は、「財政ピンチ 行政が訴え」という見出しをつけ、流山市の財政が大ピンチに陥っていることや、広報紙の号外で市民に財政ピンチを訴えることを大きく報道しています。
 しかし、こんなことは、最初からわかっていたことです。たとえば、「住みよい流山をつくる会」(林計男会長)は、常磐新線沿線開発事業を抜本的に見直さない限り、市の財政は確実に破綻すると指摘し、再三にわたって市に見直しを要請したそうです。
 そんなことを無視し、そして事業は継続しながら、市民にたいして“市財政はピンチなのでご協力を”と訴えるのです。開いた口がふさがりません。


堂本知事にレッドカード!

 堂本知事の姿勢もまったくいい加減です。堂本知事は、知事選の最中は、「常磐新線・巨大開発を考える千葉県連絡会」の公開質問に対し、「鉄道が通るから大規模開発するというバブル的発想は根本的に改めることが時代の要請」「鉄道と一体型の大規模開発は凍結し、環境、財政、農業、町のあり方などの観点から県民と情報を共有して広く議論を行い、勇気をもって、計画の根本的見直しをしていくべき」と回答しました。
 しかし、知事に就任するとすぐに常磐新線推進本部を設置し、開発を積極的に推進です。
 2001年7月に柏市の常磐新線工区を視察した際、沿線開発に反対している住民が「これまでのような(国や県の)やり方をしていれば断固反対する」と言ったの対し、知事はこう答えました。
 こうした堂本知事の姿勢について、ある県政通はこう述べています。

 たとえば、作家の瀬戸内寂聴(じゃくちょう)さんは、こうした現状を憂い、「日本の大掃除」を提起しています。
 堂本知事も退場してもらわなければならない政治家の一人です。

(2003年8月)







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