「千葉県自然保護連合」と「プロジェクトとけ」が

県立博物館の統廃合計画に反対し

博物館機能の一層の充実を求める要望書を提出

〜50の団体・個人が賛同〜




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 「千葉県自然保護連合」と「プロジェクトとけ」は7月29日、「県立博物館の統廃合計画に反対し、博物館機能の一層の充実を求める要望書」を千葉県知事に提出しました。この要望書には50の団体と個人から賛同をいただきました。

 6月12日付けの『毎日新聞』(千葉版)は、千葉県が「行財政改革」の一環として11カ所ある県立博物館の統廃合を検討中であると報じました。
 報道によれば、「11カ所は全国で最多」「入場者数が博物館によって大きくばらつきがある」「計208人の職員を抱え、管理費は年間約14億円」などが統廃合や民間委託を検討する理由とされています。
 しかし、生涯学習時代の中核拠点としての役割や地域文化の創造など、博物館に対する関心や期待は大きなものがあります。また、自然環境保全という面でも、地域の自然を持続的に調査し、その成果をさまざまな利用に供するという自然誌博物館の役割はますます期待されています。
 こうしたことから、要望書を提出しました。

 要望内容は次の3点です。
  1. 県立博物館の統廃合計画は、「博物館ネットワーク事業」構想や自然誌博物館の社会的役割、県政運営の基本的な方向を示した「変革と創造の県づくり」を無視するものであり、中止を求める。
  2. フィールド・ミュージアム構想の充実に向けて、「山の博物館」の実現とともに、「自然誌科学研究センター」構想策定にとりかかることを求める。
  3. 徹底した情報公開と県民参加のもとで、県民の主体的な政策提言型の県政運営を実現する立場から、
    • 博物館のあるべき姿について、現場の職員、県民や関係団体との開かれた対話が不可欠と思われるが、この点に関する見解を明らかにしていただきたい。
    • 統廃合を検討する根拠となった報告書、議事録など一切の文書を開示いただきたい。


◇           ◇


 要望書を知事室に提出した後、担当課の県教育委員会文化財課と交渉しました。
 交渉参加者は、牛野くみ子(県自然保護連合代表)、川本幸立(プロジェクトとけ事務局長)、片田勇(環境問題市原連絡会代表)、植田和雄(市原のオオタカと里山を守る会代表)、北澤真理子(追原を歩く会事務局長)、田久保晴孝(三番瀬を守る会会長)の各氏など8人です。
 文化財課は佐久間主幹などが出席しました。
 やりとりの一部を紹介します。


◇要望団体
「県が統廃合計画を進めているように報道されているが、事実か」

◇文化財課
「記事の内容は当課の意向どおりではない。取材で聞かれたことに対し、事実を答えただけだ。たとえば、博物館数11カ所(うち1カ所は中央博物館の分館)は全国最多とか、職員数が208人などというのは当課が答えたとおりだ。しかし、博物館によって入場者数がばらつきがあるということは言っていないし、当課では問題にしていない。博物館はそれぞれ特徴があるので、ばらつきがあるのは当然のことだ」
「博物館の統廃合計画は考えていない。しかし、県の行財政改革の一環として、県立博物館のあり方や見直しは検討を進めている。行財政改革と整合性をもたせるために、今後、行革の担当課と協議を進めていく」

◇要望団体
「行財政改革はメリハリが必要だ。削るところは削り、充実させるところは充実・発展させることが必要だ。博物館はおおいに充実・発展が期待されている」

◇文化財課
「要望書では、博物館ネットワーク事業構想や自然誌博物館の社会的役割を強調したり、博物館のあるべき姿について現場の職員、県民や関係団体との対話が不可欠と書かれているが、これらは基本的には当課の意向と同じだ。本県の博物館の役割や機能は、全国的にもすぐれていると認識している。また、削るところは削り、充実させるところは充実させるということについても、同感だ」

◇要望団体
「博物館のあり方などについて、県民や関係団体などとの対話を進めてもらいたい」

◇文化財課
「さまざまな団体との対話を企画したりするのは、業務量などからみて困難だ。しかし、意見や提案などがあれば、どんどん出してもらいたい」

◇要望団体
「この秋、博物館のあり方などにかんするうシンポジウムの開催を検討しているので、協力をお願いしたい」

◇文化財課
「検討したい」

◇要望団体
「博物館にかかわる行財政改革の検討資料はあるのか」

◇文化財課
「それはない。新聞報道については、どうしてあのような記事になったのかと不思議に思っている」
「たとえば、中央博物館は、他県はもちろんのこと、国立にもないような立派な機能や設備を備えている。こうした中央博物館は、今後も博物館ネットワークの中心にすえていかなければならないと思っている」



 参加者からは、「たとえば、三番瀬の自然環境などについて博物館の職員から貴重なアドバイスや指導などをもらっている。人が大事なので、施設重視や観光施設化はやめてもらいたい」「千葉県の博物館は全国的にも高く評価されているので、統廃合や民間委託などはせずに充実させてほしい」などといった意見がだされました。
 担当課は、しきりに「新聞記事は県の意向どおりではない」と言っていましたが、「行財政改革」の一環として博物館の見直しを検討していることは事実のようです。
 交渉のあと、参加者は、統廃合に反対し、博物館機能の一層の充実を求める立場から、今後もさまざまなとりくみをつづけることを確認しました。この秋にはシンポジウムを開くことを検討しています。
 ご支援やご協力をよろしくお願いします。






担当課の教育委員会文化財課と交渉



要 望 書



2002年7月29日

 千葉県知事 堂本暁子  様


   県立博物館の統廃合計画に反対し
   博物館機能の一層の充実を求める要望書

 去る6月12日付けの『毎日新聞』(千葉版)で、県が「行財政改革」の一環として11カ所ある県立博物館の統廃合を検討中であることが報じられました。
 しかし、統廃合の理由としてあげられている内容は、いずれも「環境再生」「生涯学習」「地域文化創造」の時代の中核拠点施設として博物館に期待される社会的役割、および県政運営の基本方向を示した「千葉からの『変革と創造』」を無視するものであり、とうてい納得できるものではありません。
 そこで、首題の件について以下のことを要望いたします。

 2002年7月29日


千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子
プロジェクトとけ 事務局長 川本幸立
賛同団体・個人  別記



要望の理由
  1. 博物館統廃合の理由にあげられているものは、博物館ネットワーク構想や自然誌博物館の社会的役割、県政運営の基本方向を示した「千葉からの『変革と創造』」を無視したものです。

    • 平成9年度文部省委嘱事業報告書「県立博物館ネットワーク事業」(千葉県教育委員会)によれば、博物館は、生涯学習時代の中核拠点施設として、学習拠点や情報源としてのみならず、地域文化創造への貢献など、さまざまな今日的課題への取り組みに対する関心や期待が大きくなってきているとしています。
       そして、こうした現代社会の要請に対する新しい博物館活動のあり方として、多数の館種の異なる博物館のネットワークを活用した総合的な博物館機能が必要とされ、そのためには、各博物館が個別化による独自の特色と他の博物館を補完する能力を持つ必要があるとされています。
       すなわち、博物館のネットワークの考え方として、市町村立博物館等も含めて各博物館が相互に不足部分を補い合う「補完型のネットワーク」が求められています。

    • 昨年末に逝去された沼田眞千葉県立中央博物館名誉館長は、「公害や環境保全の問題は、日本だけでなく地球レベルの問題に拡大してきている。環境の保全や、開発の計画は人間の都合だけで進めることはできない。その地域の自然と調和した計画が求められる。それには、それぞれの地域の自然環境が、詳細に調べられ、そのデータが利用できる形に整えられていなければならない」としたうえで、自然誌博物館として中央博物館の果たすべき役割の第一として、「千葉県の自然を詳細にしかも持続的に調査し、その資料を整理保管し、成果を刊行して、さまざまな利用に応える」ことを強調されています(『自然保護という思想』岩波新書)。
       「循環型社会をめざすみどりの変革」に向けて「多様な生物・生態系の保全と再生」「すべての施策分野において環境の視点を組み入れ、開発と保全の対立の構図から自然との共生の実現」を県政運営の基本的な方向(6月3日発表の「千葉からの『変革と創造』」)とする千葉県にとって、自然誌博物館の役割はますます期待されています。

    • しかし、前記の報道によれば、「11カ所は全国で最多」「入場者数もばらつき」「計208人の職員を抱え、管理費は年間約14億円」などが統廃合や民間委託を検討する理由とされています。ここには、「@」「A」で述べた博物館ネットワーク構想や自然誌博物館の社会的役割、「変革と創造の県づくり」という視点がなく、統廃合は単なる支出削減計画に過ぎません。本来、「行財政改革」は少なくとも全面的な情報公開、現場の関係者及び市民参加で行うべきものです。


  2. 自然誌博物館機能の一層の充実が求められます。


    • 私たち、自然保護に取り組み、関心を持つものにとって博物館は、展示物を見学する場としてよりも、直接、職員の方から自然誌科学(生物多様性や生態系学など)に関する知見を得たり、相談にのっていただいたり、勉強会に講師として地域にお越しいただいたりなど、私たちの取り組みに不可欠な貴重な役割を果たしてきました。いま窮地に追い込まれている三番瀬や盤洲の干潟の自然についても、その保全のあり方についてはこの自然誌科学の知見が第一に尊重されるべきであり、その点でも自然誌博物館機能の一層の充実と県民の取り組みとの連携が求められます。

    • そのために、博物館機能について充実すべきこととして、以下のことがあげられます。
      • 各地域での環境教育や地域文化創造の拠点としてフィールド・ミュージアム機能を充実すること。 
      • 自然保護と開発が拮抗する現場に足を運び、環境影響評価などに関して自然誌科学に基づいた見解を県民に伝えること。
      • 研究、調査の成果を県民に還元するという立場から、日常的に、自然保護に取り組む団体や県民との連携、対話を進めること。



要望内容


 前項の理由により、貴職に対し以下の点を要望いたします。ご多用中とは存じますが、以下の要望に対する貴職のご見解を文書にてお示しくださるようお願い申し上げます。

  1. 県立博物館の統廃合計画は、「博物館ネットワーク事業」構想や自然誌博物館の社会的役割、県政運営の基本的な方向を示した「変革と創造の県づくり」を無視するものであり、中止を求めます。
  2. フィールド・ミュージアム構想の充実に向けて、「山の博物館」の実現とともに、「自然誌科学研究センター」構想策定にとりかかることを求めます。 
  3. 徹底した情報公開と県民参加のもとで、県民の主体的な政策提言型の県政運営という「21世紀型の千葉デモクラシー」(「千葉からの『変革と創造』」前文より)を実現する立場から、
    • 博物館のあるべき姿については、現場の職員、県民や関係団体との開かれた対話が不可欠と思われますが、この点に関する貴職のご見解を明らかにしていただきたい。
    • 統廃合を検討する根拠となった報告書、議事録など一切の文書を開示いただきたい。

以上








賛同団体・個人

(注) 順不同


●団体(29団体)

環境問題市原連絡会           代 表  片田  勇
市原のオオタカと里山を守る会      代 表  植田 和雄
市川緑の市民フォーラム         事務局長 佐野 郷美
市川三番瀬を守る会           会 長  秋山  胖
追原を歩く会              代 表  鵜沢喜久雄
小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会    代 表  小関 公平
小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会   代 表  佐野今朝雄
小櫃川の水を守る会           代 表  渡辺 みつ
科学教育研究協議会千葉支部          支部長  笠井  守
佐倉市自然同好会            代 表  柴田 大丈
三番瀬を守る署名ネットワーク      代 表  竹内 壮一
三番瀬を守る会             会 長  田久保晴孝
自由大好き!市民の会          代 表   萩原  卓
千葉県野鳥の会             会 長  富谷 健三
千葉の干潟を守る会           代 表  大浜  清
銚子市民運動ネットワーク        代 表  戸石 四郎
アムネスティ日本・155グループ      代 表  阿部千鶴子
北方遊水池連絡会            世話役  岩田 孝昭
自然と文化研究会            代 表  佐藤 聰子
真間川の桜並木を守る市民の会      会 長  小川  廣
特定非営利活動法人 千葉まちづくりサポートセンター
                      代 表   延藤  安弘
千葉・市原丘陵開発と環境を考える連絡会 代 表  植田 和雄
NPO法人 行徳野鳥観察舎友の会      理事長  東  良一
藤前干潟を守る会            代 表  辻  淳夫
NPO法人 アサザ基金           代表理事 飯島  博
大台ヶ原・大峰の自然を守る会      会 長  田村 義彦
群馬県自然保護団体連絡協議会      代 表  飯塚 忠志
九州・琉球湿地ネットワーク       代 表  脇  義重
霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議   事務局長 飯島  博


●個人(21人)
早稲田大学教育学部           教 授  櫻井 英博 千葉商科大学              教 授  竹内 壮一 千葉工業大学              教 授  近藤  弘 千葉中央法律事務所           弁護士  中丸 素明 磐梯山噴火記念館            館 長  深井 修二 水郷佐原ハイキング同好会             石橋 静夫 日本湿地ネットワーク               伊藤 昌尚     〃                    伊藤 恵子 (財)日本自然保護協会 常務理事          吉田 正人     〃      普及担当専門部長      中井 達郎     〃      研究担当専門部長      開発 法子     〃      広報担当専門部長      志村 智子     〃      保護研究部         廣瀬 光子     〃      保護研究部         朱宮 丈晴     〃      保護研究部         相馬 麗佳     〃      普及広報部         森本 言也     〃      普及広報部         大野 正人     〃      普及広報部         小林  愛     〃      管理部           芝小路晴子     〃      管理部           田村 尚久     〃      管理部           山下久美子




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