千葉県の自然をこれ以上破壊してはならない
千葉県自然保護連合 元代表 岩 田 好 宏
千葉県の自然・環境は、私たちのまわりのいたるところでその破壊が進行している。その全貌は、残念ながらつかむことができない。見えるところだけでなく、見えないところでも進んでいる。むしろ気がついていないもののほうがより深刻であり、大きいのかも知れない。それぞれの地域の人たちが、自分たちの環境に疑問を感じ、問題を解決するために立ち上がって運動を展開しようとした時にはじめて、それが見えてくる。環境問題・自然破壊は、事実として人々の生活と生命を蝕(むしば)んでいるが、それを社会的な問題として公にするためには、人々の環境・自然にたいする鋭敏な感覚と人権意識をたよりにするほかない。
そうした鋭い感覚と人権意識によって、環境闘争にうちかってきた例をいくつもみることができる。小櫃川の水を守る会の人たちの、木更津市などの水道水源保護条例制定の実現はまだ耳新しいことであり、17年におよぶ川崎製鉄千葉工場を被告とする大気汚染公害裁判での勝利和解は、もっとも印象深い運動の成果であった。銚子市民による火力発電所計画の撤回も、私たちにとって大きな励ましとなった。谷津干潟の保存も、千葉の干潟を守る会を中心とした千葉県民の力によるものだった。それらも、枚挙にいとまもないくらい蓄積されている。
私たち千葉県自然保護連合は、1971年に房総丘陵の自然を大きく破壊するおそれのある房総スカイライン敷設計画の反対に立ち上がった時に結成された「房総の自然を守る会」を前身にして、1978年に誕生した。それ以来、一貫して、個人と各種自然保護団体が結合した連合体として、それぞれの地域における個人・団体の主体的な自然保護運動をさまざまな角度から支援するという基本姿勢のもとに運動を展開してきた。
房総スカイライン反対運動の中で、私たちは重要な教訓をえた。それは、自然保護運動は地域住民運動でなければならないということであった。私たちは、この運動の中で具体的な場面で地域の人たちと衝突した。それは見かけ上のものであったが、辛いものであった。そして、地域の人々とは敵対してはならないことを知った。それぞれの地域の自然は、ただあるのではなく、地域の人たちによって守られてきたということに気付いたからである。道路の敷設に賛成した人たちも、また反対した人たちもそれを忘れていた。自然を育(はぐく)み、それによって生活してきた人たちが、自分たちの自然破壊に賛成することはない。自然が地域の人たちによって守られてきたことを知った者が、地域の人たちの生活を無視することはないと思った。「自然保護運動は地域の人たちを軸に展開されねばならない」ということを、この時、私たちの運動の一つの基本原則にすることにした。
再び言うことになるが、環境破壊、自然破壊は、私たちのすぐそばで進行している。それは、多くの場合、見えないかたちで進行している。自分の生活と生命を大切にする感覚と地域の自然・環境の変化をとらえる感覚を研ぎすまして、問題を発見しよう。そして、それらを点にとどめることなく、網目のごとくつなげ、連帯によって解決しよう。千葉県の自然をこれ以上破壊してはならない。
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